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日本の風景とSFの融合が妙に心地良い『ザ・クリエイター 創造者』

「日本の風景とSFの融合が妙に心地良い『ザ・クリエイター 創造者』」

ポスター画像


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「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」のギャレス・エドワーズが監督・脚本を手がけた近未来SFアクション。

2075年、人間を守るために開発されたはずのAIが、ロサンゼルスで核爆発を引き起こした。人類とAIの存亡をかけた戦争が激化する中、元特殊部隊のジョシュアは、人類を滅亡させる兵器を創り出した「クリエイター」の潜伏先を突き止め、暗殺に向かう。しかしそこにいたのは、超進化型AIの幼い少女アルフィーだった。ジョシュアはある理由から、暗殺対象であるはずのアルフィーを守り抜くことを決意するが……。

「TENET テネット」のジョン・デビッド・ワシントンが主人公ジョシュアを演じ、「インセプション」の渡辺謙、「エターナルズ」のジェンマ・チャン、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のアリソン・ジャネイが共演。

予告を見て気になっていたんですが、予想通り、予想を裏切る展開でした。

本作は予告であったり、ポスターから受ける印象がド定番SFなだけに、それを想定して観に来ていた方も多かったんじゃないでしょうか。

鑑賞後に後ろにいたカップルが「思ってたのと違ったね」と言っていたのも印象的で、まあそう思ってしまうのも無理は無いかなと。

ギャレス・エドワーズ監督ということもあり、何となく手放しで爽快という感じではないと思っていたんですが、そこまで重過ぎる印象も無く、どちらかというと問い的な難しさがあったのかなと。

ローグ・ワンが良かっただけに、SFに対しての期待感っていう部分も大きかったでしょうからね。それから7年も経っているのにまず驚きですが。

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スタッフも粒揃いで、DUNEやバットマンを撮っているグレイグ・フレイザーをはじめ、音楽はハンス・ジマー

これは結構好きな布陣だなと思っていたんです。

そんな見立てで行ってきたんですが、ある意味では予想通り、ある意味では期待を裏切ってくれました。

まず8000万ドルで作られたとは到底思えないクオリティ。

ディティールにまでこだわりを感じましたし、効果、サウンド、ビジュアル、あらゆる部分においてのSF味がしっかりしており、これがこの予算とは思えないほど。

やっぱりSFの肝はこういったディティールにこそ宿るなと思ってしまうんですが、観ていて気持ち良い設定、心地良い世界観、この辺は見事でした。

ノマドのビジュアルと演出もなんか妙に異質で世界観とのアンバランスさが逆に注目に値するというか。

あの世界における脅威が伝わってくる質感と言いますか。

序盤でRadiohead「Everything In Its Right Place」が流れた時はあまりの自然さと壮大な映像に度肝を抜かれましたね。

久々レディヘを聴いたなというのもあったのかもしれませんが、やはりSFと相性が良い。


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その他も、建物であったり、街であったりといった部分は特に好みで、ブレードランナーなどにも通ずるアジアンテイストmeetsスペーシーといった趣。

監督自身が親日家ということもあってか、それ以外にも日本オマージュの部分が多分に見られ、その取り入れ方も実にクールでした。

看板だったり、文字のグラフィックだったりといったところが特にカッコ良かった。

アジアンテイストの取り入れ方も現代的だなと思うところがあって、必要以上に退廃したり荒廃したテイストを出さないのも良かったのかもしれませんね。

何故か知らないけどアジアをSFっぽくしようとすると荒廃感との相性の良さから結構そっちに振られがちな気がしていたので。

本作ではそれが良い意味で消化されており、一瞬、新宿?と思ってしまうような部分もありましたが、良く見ると全然違うし、構造物の細部が非常に近未来的で練られているなと。

この辺のアナログとデジタルに近いような使い分けも秀逸で、メカニック系のそれも良く考えられていた気がします。

車のダッシュボード表示など、極めて近未来的で、シフトなどの操作音もそう。それでいてボディであったりといった側の部分は現代的なままというアンバランスさも良いんですよね。

設定に関してはもうちょっと説明があればなと思う部分はあったものの、そこまで支障をきたすほどでは無かったので、多くを語らず、想像させるということだったのかもしれません。

実際、133分という尺の中、あそこまでの情報量、展開を考えると至極無理な話でもあるとは思いますしね。

脚本上の部分も同様で、展開の飛躍さを感じたり、ちょっと急過ぎやしないかと思ってしまうような部分も実際にありました。

具体的にいくつか挙げるとすると、ノマドの制作にかかる時間や費用であったり、今までのAiとの共存関係であったり、そもそものクリエイターの存在だったり。

中でも個人的に一番飛躍を感じたのはシーンの切り替わりにおけるタイム感。この人がこの短時間でここまで行ける?といったような時間的に無理さを感じる場面がそれなりにあったかと。

「あれっ、今上陸したはずなのにもう建物の最深部にいる」とか。

でも、あれくらいカットしていかないとこれだけの物語は収まらないのかなという気もしてはいるんですけどね。

逆にチャプターの切替やシーンごとの展開や見せ方に関してはタイム感がバチっと決まっている感じでした。

チャプターごとのタイトルバック的なものは間の取り方等、日本の美的センスに近しいものを感じましたし、エヴァ市川崑作品のような文字使い味がありましたね。

テンポと空間における”間”の取り方が上手いなと。

これは作品全体にいえるところでもあって、カットとカットの繋ぎであったり、静と動の見せ方であったり、緩急の付け方だったりといった部分における”間”の使い方がなんか良いんですよ。

ストーリー的な部分でいうとAiと人間との関係性が新鮮だなと。

どちらが良いとか悪いとか、そうした枠組みとは違う関係性を探ってる感じがするというか、この辺って難しい問題ですよね。

結局どっちが上とか下とかって人間同士でも起きるわけで、それがAiを交えても当然起きるだろうし機械なのか生き物なのかっていうところも含めて。

結局のところ大きな違いは”心の有無”なのかなと思っていて、感情であるとか意志であるとかは二の次で、それを感知する心が有るか無いのかなのかなって。

Aiにしても人間にしても完全な善や悪というものはあり得ないと思うんですよね。

Aiであればプログラムで制御できると思いますが、その制御の範疇を越えるような事態は絶対に起きてくるだろうし、そうなった時にどっちがという問題じゃなくなると思ってしまう。

視点を変えればどれもが善にも悪にもなり得るわけで、だからこそフラットで柔軟な考えを持てる素地が必要なんだと。それは個人でも集団でも。

その意味で言うとラストが妙に引っ掛かっていて、この物語は果たしてハッピーエンドだったのかということ。

一見するとAi勝利ないし、正しい儀が勝つ。といったようにも見えるんですが、個人的に見るラストは平和そうに暮らせそうな人々やAiを見て微笑んでいたように思えるんですよね。

だからこそ、ハッピーエンドでもバッドエンドでも無く、ただその時のアルフィーが見ていた光景それのみに対しての笑顔だったんじゃないかと。

物事の本当の正解ってどこにあるんでしょうね。そんなことを考えつつ帰路に着いた良作でした。

では。