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谷崎潤一郎の『文章読本』が教える、簡素で美しい文の哲学

文章読本 (中公文庫 た 30-28)』

正しく文学作品を鑑賞し、美しい文章を書こうと願うすべての人の必読書。文章入門としてだけでなく文豪の豊かな経験談でもある。〈解説〉吉行淳之介

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文章の書き方と言えば小手先の方法論が先行していたり、技術的な部分に特化しているようなものが多いと感じるのですが、本著のような構成になっているものは初めて読んだかもしれない。

しかも書き手が谷崎潤一郎という大御所ということで、なおのこと興味深い。

非常に平易な文章で書かれていますし、各章での説明においても簡潔でシンプル。

引用している文章が漢文であったり古文であったりということもあり、その箇所は難しい、というかある程度の知識が無いと読めない部分かとは思うのですが、それを読み飛ばしても後に作者が解説してくれることから、内容としては十分に理解できる。

一貫して書かれている”文章の簡略化”であったり”実用的こそが芸術的”、それらを総括しての”含蓄のある文章”という哲学が語られており、明快で分かり易い。

特に終盤で書かれる一般の婦人誌に寄稿されている文章の添削は今見ても興味深く、非常に丁寧で分かり易く解説されている。「なるほど、こういうことか」と納得してしまう添削に、文章への並々ならぬこだわりを感じることができる。

『陰翳礼讃』という著書はまだ未読ですが、私が尊敬するメキシコの建築家、ルイス・バラガンも建築の参考にしていたようで、こちらもまた読んでみたいところ。

そこに書かれている”陰にこそ美学が潜んでいる”という哲学は『文章読本』の中でも潜んでいるテーマであって、華やかさや奇をてらったような文章でなくとも真に研ぎ澄まされたものこそが銘文たり得るということ。よってそれは実用的でもあり、難しく書こうとせずとも自然とそうなる。

意外でしたね。

物書きの巨匠ともなればそれ相応の技術やこだわりがあるのかと思っていたのですが、こだわりとも言えぬような至ってシンプルな心掛け。

デザインもそうですが、突き詰めるとシンプルさに行きつくというのは全てにおいて言えることなのかもしれません。

装飾に関しても必要最低限、言葉は常に必要、不必要を考慮して選ぶ。どれだけ言葉に気を配れるのかということが良き文章へのまずもっての心掛けになるのかということ。

長々とした話に終始せず、本の体裁すらも簡素に纏められているのも読みやすいところです。

巻末にあった解説での見解も興味深く、確かに谷崎の考え方でいくと一理あるなと思わされる部分はあります。

そのようなところも含め、文章というものに興味がある方は是非一読の価値があるかと思います。

では。

26最も実用的に書くと云うことが
37音読の習慣がすたれかけた
40字面の美と音調の美とは
49われわれの国語の構造は
79即ち感覚と云うものは
103文章道において
106原文のなだらかな調子を失わないようにして
147宛て字や仮名使い
159内輪な性格に真の勇気
160 良賈は深く蔵する
181現代の若い人たち
183全体比喩と云うのは