這い上がるのは難しいが、這い上がる必要すらあるのかという疑問も。
『パラサイト 半地下の家族』
貧しい一家の“計画”とは…!?『パラサイト 半地下の家族』90秒予告
ポンジュノと言えば格差とブラックジョーク。
これを抜きにして語れないと思っていますが、本作はその両者を最高まで研ぎ澄ました傑作でした。
韓国における格差は日本のそれ以上に酷いもので、そのリアルをまざまざと見せつけられた気がしました。
文字通り見せつけられたという感じのカメラワークやカットも秀逸で、説明がなくても色々な状況がわかってしまう。会話を聴いていれば関係性や素性もわかってしまう。極め付けはにおいでわかってしまう。
争い用もない現実と共にテンポ良く進むストーリーは本当に見事でした。
展開の浮き沈みも妙な心地よさがあって、緊張感と弛緩のバランスが見事。エッジの効いたその切り替えにジェットコースターに乗っているようなドキドキ感が最後まで途切れませんでした。
脚本的にも展開が全く読めないものだったので、そういった効果が存分に発揮されていた気がします。
最後まで観て不思議だったこと。誰が幸せで、誰が不幸だったのかがいまいちわからない作りになっていて、観る人のその時の気持ちに左右される気がして、考えさせられました。
ただただ固執しないこと、偏見を持たないこと。こうした考えを持つことが幸せを減らす概念なんじゃないかとは思わされた作品でした。
何にせよ、細かいこと抜きに楽しめる、リズムの部分に乗っかる形で楽しんで欲しい作品かと思います。
気の利きすぎたブラックジョークで笑いつつ、怖さを感じつつ、ただ愉しむ。
無計画に人生を生きるのもある種の正解なのかもしれないですね。