いつだって起きる問題は同じ。
「動物農場」
- 作者: ジョージ・オーウェル,George Orwell,高畠文夫
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1995/05/01
- メディア: 文庫
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たとえ時代が違っても、場所が違っても、起きている問題の根源は同じなんだと思わされた。
この小説自体は第一次世界大戦終結直後に出版されたもので、旧ソ連を皮肉る形で書かれている。それでいて確実に現代でも本質的に同じ問題が起きている点が面白くもあり、怖くもあった。
自分と他人、権力者と非権力者、相反するようでいて、いつでも対極にいく可能性を秘めているという事実。いじめなんかを例にしても、いじめる側といじめられる側の境界線なんて紙一重で、その場の状況や空気感によって、いとも簡単に変わってしまう。その中で必要なのは物事の本質を見極め、流されない意志を持つということ。
本作の面白いところとして、その変化が徐々に、そして自然な形で進行していくというところがある。
実社会でも急激に物事が変わることの方が稀で、徐々に浸食されていくことがほとんど。それに流されずに正しい判断をし、さらに自己主張をしていくことって並大抵のことじゃないと思うんです。批判や阻害、不安などが入り混じる状態で、それでも自問自答していく。それでも、そういったことをしていかないと、この話の結末のようになってしまう。
本作はタイトルに副題として「おとぎばなし」と入っているが、それもダークファンタジーの先駆け的な感じがして、ある種の先進性を感じたし、妙な違和感も覚えた。
ラストシーンがかなり秀逸に出来ていて、引かれていたボーダーが曖昧になり、善悪が分からなくなってしまう。
考えてみれば今まさにトランプ大統領が行おうとしているメキシコ国境の壁建設。これは直接的な垣根であるボーダーを引こうとしているということ。そう考えるとそれもいずれは・・・。
怖い話であり、普遍的な話だなと思いながら、自分はそうありたくないと思えた作品でした。動物をモチーフに極めて分かりやすい文章で書かれているのでサラっと読めてズシっときます。