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探幽訪真:深く、自由に、偏りなく潜る

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決勝で“問題0文字”の正解は可能なのか?『君のクイズ』が描く究極の推理

『君のクイズ』 君のクイズ (朝日文庫) 作者:小川 哲 朝日新聞出版 Amazon クイズ番組の決勝で、僕の対戦相手は1文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たす。彼はなぜ正答できたのか? 推理作家協会賞受賞&本屋大賞6位、圧巻のエンターテイン…

『飢餓同盟』レビュー:滑稽で冷酷な“権力の寓話”は今なお私たちを映す

『飢餓同盟』 飢餓同盟(新潮文庫) 作者:安部公房 新潮社 Amazon 権力への羨望が、人を町を狂わせる。地方都市を舞台に、人間の滑稽なまでの生態に迫った傑作。 眠った魚のように山あいに沈む町花園。この雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たち…

『砂の女』──「反復」と「希望」が同居する、安部公房の不条理の底で

『砂の女』 砂の女(新潮文庫) 作者:安部公房 新潮社 Amazon 昆虫採集で砂丘を訪れた教師の「男」が、集落に伝わる風習によって砂穴の底にある家に閉じ込められる。その家には一人の「女」が住んでおり、男は女とともに、絶えず流れ込む砂を掻き出し続ける…

“個の消滅”を実験した男――安部公房『箱男』と現代社会の奇妙な一致

『箱男』 全国各地には、かなりの数の箱男が身をひそめている。どうやら世間は箱男について、口をつぐんだままにしておくつもりらしい――。 ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。一切の帰属を捨て…

友だち以上、孤独未満―『友だち幻想』で考える本当のつながり

『友だち幻想』 全国1000人以上の先生が選んだ、中高生にいま一番読んでほしい本「キミに贈る本(キミ本)大賞」(読売中高生新聞主催)第1位! 「みんな仲良く」という重圧に苦しんでいる人へ。人付き合いのルールを知り少しの作法を身に付けるだけで、複雑な…

『ハックルベリィ・フィンの冒険』から『ジェイムズ』へ続く文学の系譜

『ハックルベリィ・フィンの冒険』 かつてヘミングウェイは言った。「アメリカ近代文学の散文のスタイルは、ハックルベリイ・フィンという一冊の書に源を発した」子供だけでなく、大人にも愛読され続ける、アメリカ文学の傑作。 トムとの冒険で大金持になっ…

『ウムヴェルト』に宿る五十嵐大介の“環世界”──精緻な短編集の神秘を読む

『ウムヴェルト』 『ディザインズ』『リトル・フォレスト』『海獣の子供』などで絶対的な支持を獲得している五十嵐大介の作品集、待望の登場! 2004年から2014年にかけて描かれた短編は、「この世界のどこかにいる、かもしれない」──そんな「未確認生物」を…

『悪いものが、来ませんように』に潜む日常の恐怖と家族の歪み

『悪いものが、来ませんように』 緊迫感あふれる二人の関係から目を逸らせない。――作家 小野不由美 助産院の事務に勤めながら、紗英は自身の不妊と夫の浮気に悩んでいた。誰にも相談できない彼女の唯一の心の拠り所は、子供の頃から最も近しい存在の奈津子だ…

『儚い羊たちの祝宴』暗黒童話のような優美で残酷な五つの事件

『儚い羊たちの祝宴』 夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。 翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つ…

『13階段』で試されるのは犯人探しじゃない――あなたの“信じる力”だ

『13階段』 宮部みゆき氏絶賛!!!手強い商売仇を送り出してしまったものです。――(本書解説より) 犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「…

『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』が仕掛けたマジシャン作家の罠とは?

『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 』 驚愕! こんなことが出来るとは。マジシャンでもある著者が企んだ、「紙の本ならでは」の仕掛け。 未読の人には、絶対に本書のトリックを明かさないで下さい。 二代目教祖の継承問題で揺れる巨大な宗教団体〝惟…

『屍人荘の殺人』は綾辻×ロメロのハイブリッドだ!

『屍人荘の殺人』 神紅大学ミステリ愛好会会長であり『名探偵』の明智恭介とその助手、葉村譲は、同じ大学に通うもう一人の名探偵、剣崎比留子と共に曰くつきの映研の夏合宿に参加するため、ペンション紫湛荘を訪れる。初日の夜、彼らは想像だになかった事態…

記憶は曖昧でこそ美しい|『話の終わり』の文体の魔法が心に残る理由

『話の終わり』 書くことをめぐる無二の長編 「翻訳の仕事をしていると、たまに「自分が今までに訳したものの中で一冊だけ自分が書いたことにできるなら何か」と質問されることがある。そんなとき、私はいつだって「『話の終わり』!」と即答してきた。それ…

“夜の狩人”ナイトストーカーに震えた──『機動戦士ガンダム FAR EAST JAPAN』が描くもうひとつの一年戦争

『機動戦士ガンダム FAR EAST JAPAN』 宇宙世紀0079年、一年戦争後期。オデッサの戦いが間近に迫る中、ジオン軍のベテランパイロット、ランディー・メネンデス准尉に同僚のリンゼイと共に名家の子息であるゴードン・レノックス少尉の指揮下へ入るよう軍命が…

『しんせかい』が描く、”生”の輪郭の曖昧さ

『しんせかい』 十代の終わり、遠く見知らぬ土地での、痛切でかけがえのない経験――。19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗って北を目指す。辿り着いたその先は【谷】と呼ばれ、俳優や脚本家を目指す若者たちが自給自足の共同生活を営んでいた。苛酷な…

『鏡子の家』は生き上手の哲学が詰まった三島の箱庭

『鏡子の家』 名門の令嬢である鏡子の家に集まってくる四人の青年たちが描く生の軌跡を、朝鮮戦争直後の頹廃した時代相のなかに浮彫りにする。 鏡子の家という場所、鏡子という女性を媒介とした群像劇。 言ってしまえばそれだけのことではあるのだが、それだ…

『書きあぐねている人のための小説入門』で、小説を書くという営みに向き合う

『書きあぐねている人のための小説入門』 数多くの小説家を生み出した、最も本質的かつ親身な「小説の書き方」 小説を書くときにもっとも大切なこととは? 実践的なテーマを満載しながら、既成の創作教室では教えてくれない、新しい小説を書くために必要なこ…

編集とは「遊び」である──『知の編集術』が教える発想の型

『知の編集術 (講談社現代新書 1485)』 考える力をみるみる引き出す実践レッスンとは?いいかえ要約法、箇条書き構成、らしさのショーアップなど情報の達人が明かす知の実用決定版。 私の好きな読書法──私はしばしば「目次読書法」という読み方をする。本をペ…

『SARU(上下巻)』は“観る漫画”だ――映画的スケールと神話的ビジョンの衝撃

『SARU (上下巻) IKKI COMIXコミック』 ●主な登場人物/奈々(フランス留学中の日本人学生。自分でも気付かぬうちに黒魔術にかけられていた)、ナワン・ナムギャル(プータン出身の僧侶で、伝統ダンスの名人。奈々が黒魔術にかけられていることを一目で見抜く)、…

SF×短編の極致!『Present for me』が魅せる唯一無二の物語

『Present for me 石黒正数短編集 (ヤングキングコミックス)』 以前にも↓を読んで以来、面白いプロットを表現する漫画家さんだなと思っていたのですが、恒例のDiggにて手にしたのがまた別の短編だったので。 ちなみに以前読んだのがこちら。 blcrackreverse.…

SF的寓話『虫と歌』の余韻──静謐な世界に迷い込む感覚

『虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンコミックス)』 生命の繋がりを軽やかに描く新しい才能!自分の指から生まれた妹への感情を綴る『星の恋人』。肩を壊した高校球児と成長を 続ける""ヒナ""との交流が胸を打つ『日下兄妹』。飛行機事故で遭難した二人の交…

パンキッシュな語りと落語的余韻!『くっすん大黒』の妙

『くっすん大黒』 奇想天外にして日常。 まさにそうとしか言いようの無い物語性が詰まっている。 語り手のパンキッシュな部分と独特な感性が成せる技があり、描かれる物語の日常に異質さが垣間見える。 時代性というか、落語的な面白さもあり、だらだら進む…

『決壊』が暴き出す“わからなさ”という不安の正体

『決壊』 上下巻合わせて1,000ページ近くもある作品ながら、さくさくと読めてしまう。 ドストエフスキーからの影響を受けていたころ、書かれたと述べられている通り、その内容には根源的な”罪と罰”めいたテーマが横たわる。 となると読みづらそうに感じてし…

妖怪が映す現実の歪み──『ようきなやつら』の魅力

『ようきなやつら』 【むかし、どこかに半分置き忘れてきたお化けの魂。ここにあったのか。 京極夏彦】 WEB上で話題騒然の岡田索雲妖怪読切シリーズ、待望の単行本化!! 描き下ろしの表題作『ようきなやつら』40P収録!!怪異なのは、この物語か。それとも…

『くしゃみ 浦沢直樹短編集』の洒落た装丁とシュールな短編の魅力

『くしゃみ 浦沢直樹短編集 (ビッグコミックススペシャル)』 装丁がどうなのかということも本には重要な要素ですよね。 本作のマットな質感とエンボス加工が施された表紙に、女の子のくしゃみ寸前の画。 浦沢直樹というとどうしても子供の存在は欠かせないわ…

『夢印』で描かれるルーヴル美術館と浦沢直樹の異色の世界

『夢印 (ビッグコミックススペシャル) 』 浦沢直樹×ルーヴル美術館プロジェクト!! ある一つの家族。 ある一枚の絵。 ある一人の謎の男。 多大な借金を負った父と娘が、藁をもつかむ気持ちで訪れた古い館。看板には“仏研”と書かれている……館内の暗がりを親子…

谷崎潤一郎の『文章読本』が教える、簡素で美しい文の哲学

『文章読本 (中公文庫 た 30-28)』 正しく文学作品を鑑賞し、美しい文章を書こうと願うすべての人の必読書。文章入門としてだけでなく文豪の豊かな経験談でもある。〈解説〉吉行淳之介 文章読本 (中公文庫 た 30-28) 作者:谷崎 潤一郎 中央公論新社 Amazon …

「書物に毒された状態」とは?筒井康隆の『短篇小説講義』を読み解く

『短篇小説講義(岩波新書)』 「短篇小説を書こうとする者は、自分の中に浸みこんでいる古臭い、常識的な作法をむしろ意識して捨てなければならない」。 その言葉どおりに数かずの話題作を生み出してきた作家が、ディケンズら先駆者の名作を読み解き、黎明…

コミカルでシュール、そして爽やかに──『夢中さ君に』の妙味

『夢中さ君に』 夢中さ、きみに。 (ビームコミックス) 作者:和山 やま KADOKAWA Amazon 夢中さ、きみに。 (ビームコミックス) [ 和山 やま ]価格:770円(税込、送料無料) (2024/11/28時点) 楽天で購入 異性とか同性とかそういうことを抜きにしたような清…

『美しい星』――三島由紀夫が描くSFと純文学の絶妙な融合

『美しい星』 純文学とは荒唐無稽とすら思われる題材を扱い、そこにすら三島だからこその文学性を付与する力量が素晴らしい。 そもそも硬質で純然たる文学作品を書こうと思う人物がある種の対局的な存在にあるようなファンタジーやSF作品を描くというのはど…