単純なことは気付かなかったりするものだ。
名匠フランク・キャプラ監督がジェームズ・スチュワート主演で贈る、アメリカの良心を描いたメルヘンチックなヒューマンドラマの傑作。
子どもの頃からずっとツキに見放されてきた主人公ジョージは、それでも希望を捨てず、家族や町の人々に囲まれながら幸せな日々を送っていた。
ところがクリスマスの日、彼は人生最大のピンチに追い込まれる。絶望した彼はついに自殺を図ろうとするが、そこに見習い天使と名乗る男が現れ……。
こういう古い作品って名作だと知っていても何かきっかけが無いと観れないのも事実なわけでして、今回はクリスマス前かつ町山智浩さん等が行っていた同時視聴イベントもあったので。これは後日、アーカイブが残るようなので気になる方はこういったものも利用して観ると観やすいんじゃないでしょうか。知らない情報をタイムリーに解説してくれますし、何より楽しく観られる。友達なんかと映画を観ながら話している感覚も味わえるので一石二鳥の映画体験。
今週木曜日、クリスマス映画の史上最高傑作『素晴らしき哉、人生!』ウォッチパーティ、よろしくお願いします! https://t.co/7f6f73OQdj
— 町山智浩 (@TomoMachi) 2021年12月19日
モノクロ映画ってカラーが当たり前になった今だと若干抵抗があって腰が重くなりがち。でも観るとそんなことは全く無くて、すんなりストーリーが頭に入ってくるし、全然観疲れしないんですよね。
そして本題。
作品自体のプロットが非常に分かり易いですし、伏線の回収もお見事。誰にでもツイてないなと思うことはあると思うんですが、それが人生で連鎖して起き、途方に暮れた末にどうするのか、というもの。
一見すると綺麗な奥さん、可愛い子供、父親から引き継いだ仕事があってと順風満帆に見える。そんな表面上とは裏腹に、トラブルが起き、自我とも葛藤していく。
人生は自分自身でどうにかなることとならないこと、自分がしたいこととしたくないこと。そういった願望と妥協の折り合いの中で過ごしていくのが普通のこと。
言ってしまえば当たり前だなと思うし、そんなことは頭でわかっているとも思う。ただ、それを理解し、日々を過ごしていくなんてどんな聖人君子だったら出来るんだと思ってしまうのも事実なわけでして。
そういった場面で一度は思うであろう人生の意味や自分の存在意義、その辺をかなり分かり易く提示し、説得力を持ったストーリーに仕立てる。
公開当時全くヒットせず、制作会社まで倒産したというのが理解できないくらい。
少々長く感じる前半部も、ラストへの怒涛の回収を観れば納得してしまうはず。
人間、在るものを過小評価してしまうというか、無いものへの欲求が強いといいますか、そんな快楽志向的な本能をホント反省させられます。
まぁだからといってそれらが無くなるのかといえばそれは嘘になりますが戒め程度にはなる。スマホやテレビ、ゲームやSNS。短絡的に受動しギャンブルにも似た快楽に溺れる中で真に大切なモノはなんなのか。
そんな中に身を置いているから見失っている自分自身や周囲のことに目を向けるきっかけにもなるんじゃ無いでしょうか。
タイトルにもある通り、人生は素晴らしいのかもしれない。何のために生きるのか、自分なんかいなくても変わらない。そんなことを感じた時に観てみることで新しい気づきに出会えるかもしれません。
アメリカではクリスマス映画として毎年放映されているそうで、良き大人のプレゼントとしても最適な聖夜体験かと。
では。