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探幽訪真:深く、自由に、偏りなく潜る

『真夏の光線〜伊勢原編Ⅰ〜』|「ホテルすかいらぶ」、夏の木漏れ日と荒廃のあいだ

『真夏の光線〜伊勢原編Ⅰ〜』

当初の目的地とは逸れたものの、赴くままに向かうが吉日。

今回は台風の余波が残る渦中、荒天の間に訪れる運試しの天候サバイバル。

そうした賭博的な天候から、徒労を覚悟した冒険は憚られるため、近郊の中での気になる箇所を拾い上げる。

そんな前哨戦としての「ホテルすかいらぶ」。

散策の道中、そこまで惹かれるわけでもないが、気にはなる。

何より、放置された車が迎えるその景観と日差しの瞬き。遮光する木々の纏わりが誘いを拒めずに手招きする。

興味の大小は少なからず。それでも思いの外見どころが多く、何よりも木漏れ日が空間の波長と見事に同期する。

ホテルに関する概要から。

ホテルすかいらぶは神奈川県伊勢原市にあったラブホテル。新善波墜道脇の善波ホテル街に位置する。「ホテルSらぶ」等として紹介されていることもある。

1965~1975年に開業。

10棟あまりのコテージから構成されるホテルで、「すかいらぶ」の名称は1973年から1979年まで地球を周回したアメリカ合衆国の宇宙ステーション「Skylab」に因むらしい。「lab」と「love」、宇宙ステーションのドッキングと男女の結び付きをかけたものと考えられる。

閉業時期は2004年2月とも2007年頃とも言われるが、1993年~2002年まで電話帳に記載が見られるため、2002~2003年頃に閉業した可能性が高い。

外壁はほぼ損壊し、建物としての体は成していない。

晒された内装と朽ちた剥き出しの構造。場所が違えば遺跡と言われても遜色がないような景観の退廃。

かつて放火があったのか、その痕跡も散見されるが、今となってはその損壊も自然と同化し始めている。

外壁にはグラフィックが散見され、木々の生い茂る隙間から漏れる日差しが陰影を際立たせる。

アンニュイな外壁の色彩もその不均衡さを際立たせ、夏の木漏れ日がとにかく印象深い。

色彩の荒廃と建築の退廃。そこに自然の色彩が介在し、光の揺らぎと調和する。

かと思えば光を遮ることで、不気味な陰影を際立たせ、滑らかに沈み込んだ質感の階調の変化が、暗がりに浮かぶ。

暗がりと紅という対比の溶け込みは、私の好む色調であり、不穏な世界への繋がりを予感させる。

これほどまでに強い日差しを遮る木々の隙間から漏れ出る光線が眩く、色彩の淡い揺らぎを鮮明に導く。

夏でなければ決して得られない、光と色彩の調和。

余白を滲ませ、浮かび上がるような快活とした光が美しい。

カーテンの残像が風を想起させ、闇の傍らで潜む気配を醸し出す。恐怖というよりも神秘に近い気配。

スプラッター的な残滓の残り香と、タイルの反射により、作為的で人工的な闇のネオンが表出する。

つづく。

目的地へ向かう途中で、予定にはなかった場所に足を止める。廃墟を巡ることには、そうした寄り道の連続のようなところがあるのかもしれない。『新・廃墟の歩き方 探訪編』には、その先で出会う風景が静かに蓄積されている。

廃墟の歩き方2 潜入編

廃墟の歩き方2 潜入編

  • イースト・プレス
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廃墟を訪れるたび、そこには建築や歴史だけでは説明しきれない時間が残っているように思う。その時間を別の場所でも辿ってみたくなったとき、この本は静かな地図のような存在になる。