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なぜ堅牢な壁は自ら窒息したのか。『イングランドvsアルゼンチン〜W杯 準決勝〜』の代償

『イングランドvsアルゼンチン〜W杯 準決勝〜』

イングランド1―2アルゼンチン アルゼンチン、終盤に逆転:東京新聞デジタル

14 アルゼンチンのカウンター、この精度は凄まじい
57 スペンスのカバー。これ、エグすぎ

イングランドの堅牢な壁と、アルゼンチンという名の巨大な熱狂が激突する、あまりにも濃密な90分だった。

まずはスタメン。

イングランドはリース・ジェームスが帰還したのがとにかく大きい。右にはロジャースを配し、狙いを明確にしてきた。

対するアルゼンチンはシメオネを起用。その狙いは、運動量と執拗な裏への抜け出しにあることは一目瞭然なわけですよ。

試合の入りは、両チームともにアグレッシブなハイプレスが機能していた。 ケインもライスもピッチ全体が実によく見えている。連動性が高く、中盤のノイズを叩き潰すような強度が保たれていた。

特にシメオネ。体の入れ方、使い方が実に上手い。14分に見せたアルゼンチンのカウンターの精度は、イングランド守備陣にとっても肝を冷やすものだったはず。

イングランドも耐えていた。 57分のスペンスによるカバー、これはもうエグすぎ。

ピックフォードも再三のナイスセーブを見せていたけれど、ハイドレーションブレイクのたびに喉を鳴らしてドリンクをねだるジェスチャーに、つい意識を引っ張られてしまう。まぁそういう余裕も含めて、ピックフォードという個性の面白さなわけですが。

だが、景色は後半に一変する。 アタックモーメントを見れば、アルゼンチンの猛攻はもはや暴力的なまでの圧力だったことがわかる。

イングランドは60分を過ぎたあたりから5-4-1へと可変し、引いて守る姿勢を鮮明にした。けれど、このブロックが重すぎた。 カウンターへの出口が見出せないまま、アルゼンチンに飲み込まれていく。

交代策の差も顕著でしたね。オタメンディが経験で守備を締め、ニコ・ゴンサレスが左の流動性を生む。そしてラウタロ。ボックス内への飛び出しという、イングランドが最も嫌がる刃を突き立ててきた。

スタッツを見れば、その差は残酷なほどに明白なわけ。 アルゼンチンは15本のシュートを浴びせ、ポスト直撃も2回。対するイングランドはわずか5本。

ディフェンス面でもロメロの数字が抜きん出ている。ディフェンシブアクション17、クリア10。この壁をこじ開けるだけの「色」が、後半のイングランドには欠けていたと言わざるを得ない。

そして、最後はこの男。 リオネル・メッシ。MOM。

2点ともアシストで絡み、キーパス4本、クロス9本。 驚くべきは地上戦のデュエル。19回中12回勝利。守備にも戻り、身体を張ってボールを奪い取るその姿。

決勝点がメッシからのラウタロ。これこそが、役者が試合を決めるという内的真実であり、アルゼンチンが勝つべくして勝った証なわけですよ。

一度歯車が狂えば、状況は悪化の一途をたどる。 イングランドが引いて守るという選択をしたあの日、あの大気の淀みの中に、逆転の予兆はすでに漂っていたのかもしれない。

それにしてもエンソのミドルは凄まじかった。

終盤での逆転、しかも複数得点。アルゼンチンのメンタルの強さは、もはや異常。

次は、いよいよ決勝。 不確かな日常を上書きしてくれるような、圧倒的な結末を期待したい。

スキルのスペイン、熱量のアルゼンチン。

では。

あの夜、ピッチの重力を一人で歪めていた男の、あまりに冷徹で、あまりに美しい「数字」の痕跡。インフォグラフィックという冷たい意匠を通して浮かび上がるのは、私たちが目撃したあの異様な熱量の、精緻極まる設計図なのかもしれない。

イングランドが5-4-1の殻に閉じこもり、自ら息の根を止めていったあの後半の閉塞感。その背景にあるフットボールの構造と、冷徹なスカウティングの眼差しは、あの重すぎるブロックの向こう側で起きている変化を静かに教えてくれる。