『スペースバンパイア』

宇宙で発見された生物が、地球人の精気を吸い取っていくというSF恐怖映画。製作はキャノン・グループのメナヘム・ゴーランとヨーラム・グローブス。
監督は「ポルターガイスト」(82)のトビー・フーバー。コリン・ウィルソン著『宇宙ヴァンパイア』(新潮文庫。映画に合わせて『スペース・バンパイア』と改題)に基づいて、ダン・オバノンとドン・ジャコビーが脚色。
撮影はアラン・ヒューム、音楽はヘンリー・マンシーニ、特殊ヴィジュアル効果はジョン・ダイクストラが担当。出演はスティーヴ・レイノルズバック、マチルダ・メイほか。
まずメインテーマ曲からしてカッコ良き。
クレジットの出し方、ブルーグリーンのフォントカラーがSW味を帯び、それでいて独自の宇宙感も保持したような最高のOP。
手掛けたのはヘンリー・マンシーニ。
『ピンク・パンサー』や『ティファニーで朝食を』など名作も多数。まあ巨匠が手掛けたということもありますが、金管楽器が吠えるような重厚なオーケストレーションが早大に鳴り響く。
SWとの大きな違いとしてはスペースオペラ的な外連味が無く、荘厳な旋律が一番の魅力ではないでしょうか。
ホラーテイストの作品と相性も良く、宇宙という深淵な深みから這い出して来るかのような旋律の厚み。
こうしたサウンドが作品に厚みをもたらしている一因でもあり、最大の要因と言っても過言では無いほど。
演奏を担当したのはロンドン交響楽団。奏でる音圧は、未知の巨大宇宙船が画面を圧迫する視覚的インパクトに完璧な説得力を与えているのも視覚的、聴覚的に相当なインパクトを残していますね。
それから今となっては豪華なスタッフ陣ですよ。
まず、『悪魔のいけにえ』、『ポルターガイスト』のトビー・フーパ―監督ということで禍々しさと混沌としたディープな演出は間違いないなと。
トビー・フーパー
『悪魔のいけにえ』(74)でホラー史を引っくり返し、『ポルターガイスト』(82)でメジャーを極めたモダンホラーの巨匠。キャノン・フィルムズが放った巨額の予算と「自由」を武器に、自身の持ち味である狂気とカオスをハリウッドスケールで大炸裂させた、この狂宴の絶対的指揮者です。
トビー・フーパー監督がメジャーの頂点を極め、本作へと繋がる見事な映像魔術と演出力を証明したホラー映画の金字塔。
フーパー監督がホラー史を引っくり返した原点であり、本作の混沌としたディープな演出のルーツを知るための必聴・必見作。
旧来の作品にある視覚効果や特殊効果、技術的に現代ほどの優位性が無かったことがアイデアと創造性を付与するというのは面白いところでもあり、オタク気質がテクノロジーを凌駕する快感も内包する。
結局時代が経っても本物のリアリティというのは廃れにくいものであって、チープだとしてもその本気は削がれない。
そうした美術面の特殊メイクなどは素晴らしい力の入れようで、見入ってしまうほどクオリティが高く、CGに無いリアルなグロテスクさが宿る。
この魅力が作品の随所に見られるというのもスタッフ陣の奮闘っぷりを物語っているところでして、そんな主要な面々を軽く紹介。
狂宴を支えた一流の職人たち本作を「豪華な怪作」たらしめているのは、当時の最高峰が集結したスタッフ陣の存在だ。
脚本:ダン・オバノン 『エイリアン』の生みの親。原作の哲学を、彼らしい「未知の侵食」という恐怖へ昇華させ、物語の骨格を冷徹に貫いている。
視覚効果:ジョン・ダイクストラ 『スター・ウォーズ』の重鎮。有機的な宇宙船のデザインや、街を彷徨う青い魂の光など、アナログ特撮の限界に挑んだ映像美を構築した。
特殊メイク:ニック・ダドマン 後に『ハリー・ポッター』等を手掛ける名手。美女の美しさと対比される、あまりに生々しい「ミイラ」の造形で、死の恐怖を視覚に刻みつけた。
製作:キャノン・フィルムズ 伝説のコンビ、ゴーランとグローバス。彼らの無謀なまでの野心が、フーパーに巨大な予算と自由を与え、この「歪な傑作」を世に放つ引き金となった。
演者で言うと特に目を引くのがバンパイアを演じたマチルダ・メイでしょう。
当時20歳にしてあの存在感。風貌による説得力の大きさが凄まじく、語らずして冷酷さと無慈悲さを体現する。同時に、人間的でない異質さの表現というのも彼女のビジュアルであればこその説得力を持つ。
物語の骨子も意表を突くところで、SF、エイリアン、ホラー、スリラー、ゾンビ、なんでもありな雑多さ。
この好きなもの詰め込みましたなおもちゃ箱感が抜群に相性良く、読めそうで読めない展開を絶妙なバランスで作り出している。
正直これはやり過ぎでしょと思うような演出や展開も間々ありますし、設定として力技のところも散見される。でも、これで良いんですよ。映画において整合性が全てで無く、ノリとテンションで楽しければ良いという側面もあると思うわけで。
それにしてもパトリック・スチュワートが出ていたのは驚きでした。
完全にスタートレックの艦長イメージが定着しており、あのような役柄(ドクター・ファラー役)で登場するとは。
『新スタートレック(TNG)』が始まるのが1987年ですから、本作はその2年前。容姿は若いがパッと見でもわかる存在感。
終盤からの怒涛の展開、なんでもありのドタバタ喜劇感も何故だか自然と楽しめる本作の汎用さ。
まあ百聞は一見に如かずです。
では。
国内初収録の特典映像や豪華ブックレットを同梱した、まさに「職人たちの狂宴」を隅々まで堪能するための決定版。
ロンドン交響楽団が奏でる圧倒的な音圧と、作品を「豪華な怪作」たらしめた荘厳なメインテーマを極上音質で聴くために。
フーパーやオバノンらがB級・SF・ホラー・ゾンビ映画としておもちゃ箱のように開花させる前の、知的な原作哲学に触れる一冊。
![ポルターガイスト [Blu-ray] ポルターガイスト [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51gnNHA3NSL._SL500_.jpg)
![悪魔のいけにえ 公開40周年記念版(価格改定) [Blu-ray] 悪魔のいけにえ 公開40周年記念版(価格改定) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51eIlfnYN+L._SL500_.jpg)
![スペースバンパイア [Blu-ray] スペースバンパイア [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51HNmjKgJZL._SL500_.jpg)

