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探幽訪真:深く、自由に、偏りなく潜る

『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』――悪に魅了され、暴力に酔いしれる「劇薬」としての映画体験

『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』

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ヘビー・ロック界の重鎮ロブ・ゾンビが初メガホンをとり話題となったホラー映画「マーダー・ライド・ショー」の続編。恐ろしい殺人鬼一家の逃避行を、全編ヘビー・ロックに乗せて描き出す。残虐な殺人を繰り返す一家を逮捕するべく、100人を超える警官隊が彼らを急襲。激しい銃撃戦の末、母親が逮捕されるが、兄と妹は逃亡する。自分の兄を一家に殺された保安官は、殺人を楽しみながら逃げ続ける一家を執拗に追跡するが……。

最近小難しい映画、人間ドラマなどを中心としたものが多かったのですが、ふと映画を好きになった時の非日常、劇薬としての映画を観たくなりまして。

このシリーズはロブ・ゾンビが監督をしたシリーズものなのですが、個人的にはこの2作目がベスト。

まずそのシリーズについて少々。

マーダー・ライド・ショーシリーズとは何か

このシリーズの本質は、単なるスプラッター映画ではない。

  • アメリカ南部の退廃文化
  • 70年代エクスプロイテーション映画への愛情
  • 殺人鬼一家を“怪物”ではなく“家族”として描く倒錯性
  • 観客が悪人側に魅了されてしまう危険なユーモア

こうした要素が混ざり合った、ホラーとロードムービーとカルト映画の融合体です。

それではなぜこの2作目がマイベストかと言うと、ロードムービー要素が強く、意外に人間ドラマもあり、何より単純に面白い。

相変わらず音楽のセンスは抜群で、タイトルクレジットの入るシーンでの曲の挿入、タイトルの出し方、人物の紹介という流れは最高にカッコ良い。

そもそも冒頭からの警察による包囲からの流れからどぎまを抜く展開ですし、容赦の無さというのはそこで誰もが認識するはず。

序盤の警察同士で交わされる「あの一家を舐めてると死ぬぞ」的な会話はホント全編を物語っておりますし、それを体現してしまうファイアフライ一家のさすがの存在感。

B級映画の画作りでありながら、それが映画そのものの世界観として見事にマッチし、楽曲、登場人物もそれでしかない。

ハードロック、カントリー、西部劇といった要素の交わりも相性が良く、「荒廃した風景にはこういうことが起きるよね」といった趣が強い。家やモーテルの佇まいもいちいちグッと来るんですよね。

起きていること、起こしている人はとんでもないことの連続だし、それを制裁しようとしている警察が正義なのはわかっている。

それなのに惹かれるのはファイアフライ一家であり、これが信仰なのか、カリスマ性なのかと怖くなってくるほど、愛しさがこみ上げる。

先に書いたサウンド面での効果は単なる印象的なものとしてでなく、機能性としてしっかりとした役割を果たしているというのも興味深い。

舞台装置としてのサウンドメイク。ドアの軋み、車のエンジン音、物音、銃声、怒鳴り声、全てがアメリカ南部の乾いた空気と渾然一体となり、物語の暴力性を呼び起こす。

かと思えば風景を一変させるような弛緩の要素も果たすから不可思議なもの。

残虐な行為の後での気の抜けるような緩くもあり軽やかなサウンドのチョイスはロブ・ゾンビならではのセンスであり、この軽妙さが軽快にして爽快。

特に終盤でのLynyrd Skynyrd 「Free Bird」はその最たるもので、変なカタルシスを喚起させるような痛快さが宿り、哀愁すら漂いますからね。


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家族構成やバックボーンに関して、ほとんど語られないというのも良き点で、それぞれの人間性は「観ているもので判断し、想像を過去へと紐づけてくれ」とでも言わんばかりの粗雑さとも相性が良い。

では、と調べれば意外に設定の骨格はしっかりしており、だからこそ物語に深みが出るというのは表現せずとも雰囲気で語る背景を見ても明らかなことなのかもしれない。

ファッションなどもそうですよね、語らずとも着ているものやそれ以上にその人の風貌こそが物語る。

そうしたファッション面でも惹かれる部分があり、個人的にある二人の着こなしがツボでした。

まずワイデル保安官。ヘンリーネックに黒ベストを重ね、ボトムスはラフな黒パンツ。これにオールバックをバチッと決めてるスタイルは痺れるカッコ良さですし、ワンシーンしか無いながら、この抜け感のある保安官日常スタイルmeets通常運転なバランス感覚に痺れる。

それからモーテルでのバンジョー一家のアシスタント的な男性。

いなたいスタイルなのですがベージュのバケハにブルーのチェックシャツ、黒のチープトリックのロックTを着てダークネイビーかダークグレーのボトムス(若干緑がかっている)。このダサいんだけどなんかスタイルあるような映画の登場人物って好きなんですよね。

この彼らの日常着だけどそれが映画として、それ以上に馴染みの良さとして人物像と紐づき、スタイルに昇華されている感じ。

画像が無いのが惜しいところ。

ホラー映画としての体裁も非常にバランスが取れていると思っていて、驚かせるための仕掛けではなく、人間の粗暴さと倫理の崩壊を、乾いた現実の中で見せつけることに重きを置いていることに好感が持てる。

暴力描写そのものも派手さより“生々しさ”に寄っている。殴打、拷問、脅迫、 屈辱。超自然的な恐怖や映像的な恐怖演出でなく、人間が人間に与えられる残酷さが中心にあり、それを必要以上には見せないという絶妙なバランス。さらにそこに笑いの要素も加えることで独特のホラー味というか、ただ驚かせるだけのホラーから一線を画している。

実際、笑いと強さは表裏一体のところがありますし、そうしたホラーって名作が多いですからね。

とはいえロブ・ゾンビのそれは特殊ですし、キャラクターの存在があればこそというのも大きいところかと。

となるとファイアフライ一家の存在は外せない。

ファイアフライ一家は、血縁関係が明確な部分と曖昧な部分が混在しています。
そこが逆に気味悪い。戸籍上の家族というより、暴力によって結ばれた共同体として見るとわかりやすいです。

  • 母を中心にした家庭的な形
  • オーティスが暴力の支配者
  • ベイビーが狂気の華
  • スポールディングが世間との接点
  • 他メンバーが周辺を固める

つまり、役割分担された犯罪一家です。

実存としての関係性もありますが、それ以上の繋がりを中心とした疑似的家族集団。

これって実際には怖さがありそうなものの、映画としてみると、ファイアフライ一家への興味と高ぶりしか無い。

死に様は結構なものですし、顛末も含め散々たる物語。

ですが、絶妙な笑いと恐怖の間で揺れ動く映像的魔力。そして一家の魅力により、これ以上にないホラー已然のの名作となっている気がする。

「ただライドしろ」まさにそう言われているような非日常性を堪能できる映画体験というのもやはり面白い。

では。