Blcrackreverse

探幽訪真:深く、自由に、偏りなく潜る

善悪を超えた生存戦略。スパイ小説より凄絶な『モサドファイル』が暴く国家の「嘘」と「真実」

『モサドファイル』

世界最強と謳われるイスラエルの対外情報機関「モサド」。謎に包まれたその実態をスパイ小説の巨匠が明かす。
ホロコーストの首謀者アイヒマンの拉致、テロ組織「黒い九月」への報復、シリアと北朝鮮が密かに設置した核施設の破壊、さらにイランの核開発を阻止するための秘密戦争……。
命賭けのミッションに挑むエージェントたちの姿を通して国家存亡を左右する暗闘の真実を描くベストセラー・ノンフィクション。

このタイミングにして読了しました。

イラン戦争以降、イスラエル、ユダヤ、中東、さらにはアメリカ、福音派といった記事や動画を見ている中、理解しづらい部分、入ってくる情報を噛み砕くのが非常に難しいなと。

日本人には疎い宗教的な概念も入るわけですからなおさら混沌としてきて理解に難い。

そんな中で見つけたのが本著。

モサドという名にしても知ってはいるが詳細は理解できておらず、CIA、007よろしくな国際諜報機関という程度の理解があるのみ。

モサドという組織がどのように作られ、どういった活動をしているのか。あくまでも当事者視点での意向が反映され、書かれているのは承知の上ですが、それでも非常に参考になる読み物ではありました。

特に中東情勢における各国の関係性や立場などがイスラエルを中心に書かれていることもあり、その国民でないからこその客観的な視点での観測ができ、幾分フラットにやり取りを傍観できるというのも良かったのかもしれない。

誤解を恐れず言えばスリリングなスパイ小説としての体を成したノンフィクションであり、こんなことが現実に行われているのかという驚き、アナログな方法での活動が一層のリアリティを拡張する。

イスラエルという国の建国を考えれば戦争の歴史というのはわりとすぐに理解できるところであり、結局地続きの国家でない日本人にはわからない側面。宗教、人種、迫害的な側面からも真に内部を理解知るのは難しいのかもしれない。

それでも理解する一助としては中立的に読み物として、読んでみる意義はあるなと。

まずイスラエル建国に関して

イスラエル建国は、19世紀末に始まったユダヤ人国家建設運動と、第二次世界大戦後の国際情勢が交差して実現した。

19世紀後半、ヨーロッパでの反ユダヤ主義の高まりを背景に、テオドール・ヘルツルらがシオニズム(ユダヤ人国家建設運動)を提唱。パレスチナへの移住が徐々に進んだ。

第一次世界大戦中、バルフォア宣言でイギリスがユダヤ人国家建設を支持し、戦後はパレスチナを委任統治下に置いたが、現地のアラブ人との対立が激化した。

第二次世界大戦とホロコーストを経て、ユダヤ人国家の必要性が国際的に認識され、1947年に国際連合がパレスチナ分割案を採択。

そして1948年、ダヴィド・ベン=グリオンがイスラエル建国を宣言し、直後に第一次中東戦争が勃発した。

必要手段としての諜報機関が発展していくというのも国家のあり方、紐解けば集団や個人のあり方に繋がるところでもあって、必ず当事者は必要に応じた何某かの対応が生じる。

人とコミュニケーションを円滑に進めるのが必要スキルだとすれば、生き残るために欺くコミュニケーションもまた必要と言えるのかもしれない。

良かれ悪しかれ、当事者の思惑でしか動かないというところに人のコミュニケーションの難しさがあり、本著に出てくる人々の本心や本望というところがどこにあったのかということは非常に感慨深いところではある。

表面上のスパイ活動を読み物として楽しむのも良いとは思うが、現代におけるそうした背景の人間たる本質について思慮を巡らせる一助として国の存亡、個の意識というところに目を向けてみるのもまた良いのかもしれない。

では。