『四十九日のお終いに』
大事なものはいつも傍にあった。
厳格な父に縛られ生きてきた青年・石川。
父の死後、どこか様子がおかしくなってーー。
男性ふたりの特別な友情を描く表題作「四十九日のお終いに」ほか、
漫画誌ハルタに掲載されたすべての読切&商業未発表作品を収録。
描き下ろし漫画「四十九日のお終いに -その後-」全10ページは必見!
デビュー連載『いやはや熱海くん』第1巻と同時刊行。
『いやはや熱海くん』が気になっていたところ、こちらを発見。
短編というのは作家による共通項が分かり易く、作家性を知る入口として、わりと好きなんですよね。
ということで読みだしたのですが、日常の他愛無さを誇張することなく丁寧に描写した作品が多い。
あくまでも誇張せずというところを下敷きにしつつ、ほんの少しのスパイス、言葉遣いであったり、表現や視点であったり、ということを盛り込んだ日常劇。
圧倒的にフィクションを堪能させてくれるような漫画も好きなわけですが、こうした自分の生活と地続きの中、新しい視点と気付きを与えてくれる作品というのもまた貴重な存在。
画のタッチによる馴染みの良さ、ニュートラルな作画、表現というのもあり、肩肘張らずに読めるのもしっくりくるところ。
気になった各話からのポイントを少々。
「海は行かない」
日々の何気ない無限ループにも、視点を変えたところに他愛無い幸せがあるのかもしれない。本当に些細な変化だけでも大きな変化になることも。「思い出度数」良いワードセンスしてる。
「49日のお終いに」
人生というピースの組み合わせ、コマとコマが余白を繋ぐように人生もまた些細なことの積み重ねで出来ている。「人生最大の…」というくだりのページで、空が開けたようにハッとさせられ、生きる意義はもう手元にあるのかもと心底思わされる。ラストでの「先行きを自らの手中にある」と言って笑う様はそれこそが解放のサインなのかもしれないとすら。
「旅は道連れ」
何気ない学生の何気なく無い日常。些細なことの積み重ねが本当に些細だったなと思いつつ、もう訪れないささやかさにハッとする。
「虫よさらば」
カットの積み上げに視線が踊り、会話のそれに気持ちが弾む。何も無いようでそれが意思表示だとは今もあの頃も思ったことなど無かった。
「桃と道行き」
昼と夜のシームレスな描きわけ、咄嗟に動き出すコマの連動感、肉感を伴った中にふと立ち上がる人という個の不確実性。人は人、と言うことに言わずもがな触れた気がしてハッとする。
「桃色の夢」
夢なのか現実なのか、モノクロの世界で色が表出し滲み出るような浮世の絵面。居場所があるようでないという居心地の不確かさはまるで夢のようなわけでもあって、だからこそ隣の芝は青く見える。と言いたいところだけど、目に浮かぶのは錯覚が作り出したピンクという色そのものの幻影のようにも見えてくるわけで。
ちょっとしたヒントが転がる、漫画ならではの日常探検を堪能できる短編集。
それでは。

