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『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は資本主義の祝祭か地獄か

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

ポスター画像


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レオナルド・ディカプリオとマーティン・スコセッシ監督が5度目のタッグを組み、実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートのセンセーショナルな半生を描いた。

22歳でウォール街の投資銀行へ飛び込んだジョーダンは、学歴もコネも経験もなかったが、誰も思いつかない斬新な発想と巧みな話術で瞬く間になりあがっていく。

26歳で証券会社を設立し、年収4900万ドルを稼ぐようになったジョーダンは、常識外れな金遣いの粗さで世間を驚かせる。全てを手に入れ「ウォール街のウルフ」と呼ばれるようになったジョーダンだったが、その行く末には想像を絶する破滅が待ち受けていた。

ジョーダン自身による回顧録「ウォール街狂乱日記 『狼』と呼ばれた私のヤバすぎる人生」(早川書房刊)を映画化。共演にジョナ・ヒル、マシュー・マコノヒー、マーゴット・ロビーら。

これほど終始陽気で狂ったディカプーを見たことがない。

全編を通し、役者としての振り切った大盤振る舞いが炸裂。スコセッシ作品といえば長尺が多く、本作も179分と3時間あまりの大作。

なのですが、馬鹿騒ぎとカッティングの冥利、楽曲のドライブ感がそんな時間感覚を見事に吹き飛ばしてくれる。

それくらいにファニーでぶっ飛ぶ。

実話ベースということもあり、当時のウォール街、というか株の世界、投資の世界というのがどれだけ狂っているのか。人の情報、欲に漬け込んだ商売というのがこれほどまでに人々を侵食するものなのかと驚かされる。

まず物語の冒頭からしてプロパガンダめいたCMに始まり、皮肉の応酬。切れ味はスコセッシならではの毒っ気たっぷり、お腹いっぱい演出。

サウンドや映像的にもそうで、とにかく常に食い気味に流れる音楽。そのアッパーチューンさが映像を軽快に牽引していく。

ジャンルもお構い無し、とにかくアゲる。

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金融業界の混沌さを表現したかのような音の洪水とテキスタイル。交わる映像も食い気味かつ、外連味ある動き。

語りかけるディカプリオの宣伝広告にも似た振る舞いがあり、喜劇的で刺激的な世界を覗き見ているかのよう。

カオスさの極みというところもそうで、全編狂騒のオンパレード。

画的にもドラッギーな演出が多用され、そのどれもが本当にぶっ飛んでいる。そしてその演技をする演者たちも全員がハイテンション過ぎる。

ブラックを越えたユーモア?と呼んでよいのかどうか。そんなことも憚られるようなところがあるほどで、劇中の「Fワード」使用回数は500回以上。映画史上トップクラスだとか。

観れば一目瞭然のヤバさ。

なかでも中盤の麻痺して這いつくばり、運転して・・・というシーンは爆笑に次ぐ爆笑。そこからのドニーとの擦った揉んだも含め、クレイジーにもほどがある。

実際に起きていた事象はあれよりもヤバかったとのコメントも見られ、だとするとどれだけ狂った描写だったのかと想像するのもおぞましい。

情報、スピード、演出、全てが加速度的に観客を置き去りにし、観て理解するという感覚を強制的に超越するドライブ感。

ちなみにジョーダンの奥さん役で登場するマーゴット・ロビーは当時ハリウッドでは無名に近かったとのこと。ただ、登場した瞬間、人としてのレベルが違うということを思ったのは全米をおいて間違いないでしょう。それほどに美しく、端正なルックス&ボディ。

ファッション的な観点からも興味深く、コテコテなのに仕立ては良い。

ぱっと見で上質な仕立てだと気付くような素材感とシルエット。徐々に煌びやかさが増していき、スタイルとステータスが交錯する。

あくまでも成金スタイルなのにストリートの文脈を感じるスタイリング。

クラシカルな要素というよりも着崩すような生き様が映える。単に表層を取り繕う着衣にして、スーツの基本は押さえている。

スコセッシ&ディカプリオのコンビ最高傑作『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

The Wolf of Wall Street' Teaches These 7 Lessons for Success

ネクタイの派手さや柄の多様、派手なのにそれをカバーする仕立ての良さ。

この辺の文脈がストリート要素というか素地の雰囲気を際立たせ、単なるエリートで無い、むしろ地べたを這ってきた雰囲気を醸し出させる。

The Wolf of Wall Street Review | SBS What's On

私服に関してはTHE成金なブランドやロゴを前面に主張したダサさで、これは全く参考にならず。

まあそれこそが本作の演者のキャラクターであり、本当の姿とも言えるわけですが。

レザボアよろしくな会話シーンもテンポ良く、どうでもいい話をとうとうと述べるのも癖になる。

くだらない会話や馬鹿げた話は話者により決まるという勝手な偏見があるのですが、それを彼らは体現している。

行動も馬鹿げているなら話も同様、起きる全てがハチャメチャでカオス狂乱の映画体験。

変幻自在のディカプリオが何よりも見ものですし、その他の演者も曲者揃いではまり役多し。

ちょい役のマシュー・マコノヒー演じるハンナは10分弱にもかかわらず映画の思想を全て網羅しているという達者ぶり。

あくまでも株の価値などどうでもよく、客の金を自分のポケットに移すだけ。感情は捨て、理性を捨てろ。

後にそれを体現するのがジョーダンとなるわけですが、あの伏線は見事な語り口で。

ちなみにハンナの胸を叩きながらの謎のハミングはアドリブだったようですね。それもまた終盤に効いてくるという。

ジョーダンと対照的な出来る男スタイルというのも彼がもう完成後の姿だったからと考えれば説明も付くわけで。

映画 ウルフ・オブ・ウォールストリート マーク・ハンナ マシュー・マコノヒー 高画質の壁紙

こういう細やかな部分、脚本のスパイスみたいなものもスコセッシらしく、外連味ある感じがグッド。

序盤でのレストランにおけるペンのくだり、「このペンを売ってみろ」という答えに対し、終盤でも同様の事柄が生じるところもにくい演出として効いてくる。

ようするに人生において小難しいことは何も無く、ただシンプルに”欲望を喚起しろ”ということ。

逆に言えば欲望を喚起されていることを認知し、行動や判断をしなければ、搾取されるだけ。FBIとジョーダンの関係性ようなことにも成り得るよ、という反面教師的な教訓も。

いずれにせよ映画としては文句なく楽しく、ディカプーの狂人っぷりを観るだけでも十分な作品。

間違いなく新しいディカプリオ像の起点となった作品でもあり見逃し厳禁なのは間違いないことでしょう。

では。