『Loops by Anders Edström』

本書は表紙から裏表紙までを使って時系列に沿った物語を展開。
散歩やドライブ、旅の途中で撮影をし、常に周りを見ては何かに目を留め、光の加減と情景が結びつくところで足を止める。華々しい光景や奇抜なものでなく、むしろ不思議な力で導かれたかのように目の前の光景と光が一つになる瞬間を探し求める。
このため彼のイメージは平凡に見えるかもしれないが、その一つ一つに光、時間、そしてエナジーの結びつきが示されている。
本書では、こうしたイメージの間に光を反射する顔料の水たまりが顔を出す。光の反射を作品に活かそうと自宅で作った水たまりは、美術史家のエルンスト・ゴンブリッチ(E.H. Gombrich)が15世紀の南北アルプスの絵画について書いたエッセイの言葉を借りるならば、それぞれが『光、形そしてテクスチャー』の研究となっている。エドストロームが最初に頭角を現したのはファッション界だったが、彼を見出したのは、ブーツやジーンズ、バックパックといったなんでもないものをシンプルに白いペンキで塗りつくし、ファッション界の既成概念に反旗を翻してきたマルタン・マルジェラだった。エドストロームもまたマルジェラのように並外れたもの、あっと言わせるようなもの、決まった型にはまったものを避け、ありのままの自然主義に傾倒しつつ、自らの共感覚を活かした写真を通じてオルタナティブな世界の見方を表現してきたのである。
知ったのはそれこそマルジェラの作品だったでしょうか。
ファッション系のフォトグラファーなのかと思っていたのが当時の印象で、それからもことあるごとに好きな写真が目立ち、何かと目に付く機会が多かった。
この写真集は表紙から裏表紙まで、物語を時系列にピックアップしたとのことですが、そこから湧き出る、旅情感、哀愁のようなものが透けて見える。
バチバチに決まった構図でなく、意識を向けたいと思う自らの感情を優先し、その瞬間にその時の思いを閉じ込める。
誰しもが見ている風景を自分だけの視点として切り出す。
それこそが写真の本分だと思っているところでもあり、記録としての媒体よりも記憶としての媒体として存在するものに魅力を感じる。
その場の空気、印象、質感、色感、居合わせなければ感じることが出来ないものを、1枚に込める。これが成された写真というのは自分にとっては堪らない。
なかでも写真のトーンは何よりも重視するところで、その意味でもエドストロームの写真はどストライク。
柔和で風景と馴染む。コントラストが高いものであっても、決して対立するようなバランスでなく、まるでなだらかに繋がるグラデーションのよう。
写真集のコンセプトとも相性が良く、旅の断片を文字通り断片的に切り取る。
この景色が綺麗だといったことでなく、目を引かれた、印象に残ったシーンを拾いつつ、カラーパレットのような液体が挿入される。
液体という流動的な物質に色が乗り、光の反射による物体と化す。
写真が光を捉え、画として描くように。”光”というもののテクスチャーとの混然となった様が妙に印象に残る。
個別に気になったものを何枚か。




流れとして見る、個別に見る、写真集の楽しみ方と旅の楽しみ方は近似しており、それをそのままパッキングするというのもやってみたいことではある。
では。

