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奇妙で重層的な恐怖『バーバリアン』レビュー:なぜこの映画は観客を迷わせ続けるのか

『バーバリアン』

バーバリアン - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画


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民泊を利用した女性が恐ろしい事態に巻き込まれていく姿を予測不可能な展開で描いたホラー。

仕事の面接を受けるためデトロイトにやって来た女性テスは、ネット予約した宿泊先の民家に到着するが、そこには既にキースという男性が滞在しており、手違いでダブルブッキングされていたことが判明する。嵐の中、他に行く当ても見つからないテスは、キースとともにそこに宿泊することを決める。翌日、トイレットペーパーを探しに地下室へ下りた彼女は、そこで謎の扉を発見する。

テレビドラマ「クリプトン」のジョージナ・キャンベルが主人公テスを演じ、「IT イット」シリーズのビル・スカルスガルド、「Mr.タスク」のジャスティン・ロングが共演。俳優・監督として活動するザック・クレッガーがメガホンをとった。

バーバリアン・・・野蛮人という意味合いがあり、タイトルが意味するところのそれは一体誰を指しているのか。

長編初作品にして奇作であり怪作。

ホラーと聞けばゴア、スプラッター、心霊、怪物、なんでもありなわけですが、ここまでストーリー的に何でもありに見える本作というのはまさに奇作。

冒頭のありがちでチープなホラー映画的始まりから、安定した構図が逆に興味をそそる。

なぜこの街の不穏さというのは画面越しでも空気感を伴って侵食してくるのか。

舞台となるデトロイトはかつて栄枯盛衰を極めていたが今はその影もなく、人口も全盛期の1/3にも減っているような都市。

これを知らせるのが時間の経過による突然の場面転換なのですが、この見せ方、というか全体を通して演出や撮影の仕掛けが面白いところであり、終始見ていて飽きないというのも特徴となる。

そこから予想外の方向へ常に常に連れて行かれるわけですが、思っている展開と違うというのは脚本上の巧みな演出があればこそ。

なんでこんなことが思いつくのかということもありつつ、構造の多層性に驚かされる。

多層というのはなにも脚本に関してだけでなく、物語自体にある多層性、実際の、時代の、内包する、とにかく重層的な構造であるにもかかわらず、思いの外装いは軽い。

その軽さが良く機能しており、これで重かったとしたら逆に物語が希薄に映ってしまったかもしれないという絶妙なバランス。

骨子にあるであろう、”抑圧”の吐露が映像を通して成され、男性が女性に抱く感情やそもそも人が人に抱く疑念、現実に横たわる禍々しい塊のようなものが擬似的な生物(つまりあの怪物ね)として表出するのも面白い。

人の利己性や思考、考えていることがわからないからこそ怖いという部分も緻密に練り込まれ、それが個から出るものなのか、社会や世界といった外堀から自然発生的に生み出されてしまうのかということも感慨深い点ではある。

典型的なホラーの素地を抑えつつ、ここまでジェットコースターのようにどこかに連れて行かれるホラー作品というのも不思議なもの。

特に前半部での怒涛の展開からまるでこれで映画が終わりと言わんばかりの場面転換、そこから別作品でも始まったのかと思わされるような軽快なドライブシーン。

その後物語の繋がりを知ることで、地続きで様々な世界が交錯していることを回想し、当たり前の、当たり前でないそれぞれの世界が忽然と現れる。

世界は一瞬で変わってしまうかもしれないが、変わらずに積算されていく部分があることを身を以て痛感するというのもまた世の理。

とりあえず地下がある家、そこに仕掛けが思わぬ何かがある家というのは確実に疑ってかかった方が身のためだということに尽きる。

人の悪意が悪を増幅し、善意が善を増幅させる。

入れ替わり立ち替わりバーバリアン然とした人物が登場する中、自体の変化も予測不能、結果として誰がバーバリアンだったのか。

世界の見えなさをそのままホラー映画としてパッケージ化したような本作はまさに戒めでもあるのだろうか。

中盤で時代が突如切り替わり、まるで模型やミニチュアのような奇妙な作り物らしい世界を見せられるのも禍々しい現実の戯画化にさえ見える。

あの世界の認知こそ、紛い物のような世界の真実で、その中に生きているうちはそれにすら気付くことは無い。

ビジュアルも相まっての奇妙さ。色合いと美術、交わされる会話や行動全てが気持ち悪く感じ、そうした世界の住人である自分というのもまた、身をつまされる思いがして。

サウンド面での味付けも印象的で、先に書いた中盤での切り替えなどは映画そのものを転換させる良き分岐役として。

ラストでのエンディング曲もそう。コミカルさを軽妙に彩る。

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奇妙で不可思議な異世界空間。

地続きでありつつこんな世界が観れるのもまた映画の愉しみとして。

では。

バーバリアン

バーバリアン

  • ジョージナ・キャンベル
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