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年齢を重ねると沁みる“人生の分岐点”――『天使のくれた時間』が語る愛の確かさとは

『天使のくれた時間』

ポスター画像


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多忙なビジネスマンが別の人生を生きることで愛の大切さを知るラヴ・メルヘン。

監督は「ラッシュアワー」のブレット・ラトナー。脚本はデイヴィッド・ダイアモンドとデイヴィッド・ワイスマン。撮影は「ワンダー・ボーイズ」のダンテ・スピノッティ。音楽は「プルーフ・オブ・ライフ」のダニー・エルフマン。衣裳は「あの頃ペニー・レインと」のベッツィ・ハイマン。

出演は「60セカンズ」のニコラス・ケイジ、「ディープ・インパクト」のティア・レオーニ、「ミッション・トゥ・マーズ」のドン・チードル、「ベリー・バッド・ウェディング」のジェレミー・ピヴェンほか。

サムネから何故か急に気になりだし、観たかった映画。

金ローなどで観たことはあったことだろう、それにしてもベタなストーリーでありながら、こうも親身に染み渡るというのは過ごしてきた人生への憧憬なのだろうか。

監督はブレット・ラトナーと何だか聞き覚えがあると思いきや『ラッシュアワー』シリーズの人である。

冒頭から90年代にありそうなコメディ的、ホームドラマ的な様相を帯び、コミカルさとスタイリッシュさの間の子をいくようなトレンディ要素を感じさせる。

印象的なカラーグレーディングもあり、靄のかかったような、柔らかくも深い陰影。エッジの立った画が存在せず、あるのは霞掛かる、町並みと人のドラマだけである。

こういう意味のわからないOP、あくまでも全体のストーリを物語るような付箋を貼りつつも、唐突で外連味のある始まりというのは何やら心躍らされる。

そこから「まさかぁ」なifの世界を旅することになるわけですが、雪のシーンが刹那的で年の瀬と相乗効果もあり、じんわり沁みる。

転換のサインとして、また心象の残像としての雪が効果的に作用し、寓話性を帯びたような魔法じみた世界に埋没していく。

音楽も物語に彩りを添える。

手掛けたのはダニー・エルフマン。ティム・バートン作品を手掛けていたりする方で、他にも絶妙に音楽が良い仕事をする作品をいくつも手掛けている。

景色やシーンとの突合が滑らかにして融和的。

THE、な感じのわかりやすさもあって、とにかく観ればわかるやつ。

ファッションも懐の深いところ。

ジャックの序盤でのスーツをビシッと着るシーンは男なら一度は憧れる、カッコ良き出来るビジネスマンスタイル。

ショッピングモールでの一幕として、ゼニアでのスーツ試着シーンと対比して浮かぶ序盤の出で立ち。

良きパパとしての服装はそれはそれで生活を知らせる記号としての役割は十分ですが、前半部でのスーツスタイルが憧れるところではあり。

10月6日OA『天使のくれた時間』|映画天国|日本テレビ

ケイトの方も同様なのですが、彼女は敏腕弁護士、家庭の母、どちらのスタイルも捨てたものじゃない。

鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.17】クリスマスに“幸せ”について考える『天使のくれた時間』 メンズノンノウェブ | MEN'S NON-NO WEB

出来る女のビジネススタイルはメイクの力も加わり、控えめに言って美しく知的。

映画『天使のくれた時間』のあらすじ・キャスト・ネタバレ・見どころと感想までご紹介! - みるむび

一方での家庭的なスタイルもラフさの中に芯の強さを感じさせる佇まいというのは悪くない。

129 「天使のくれた時間」(2000) : 映画の名言! 恋も仕事もあきらめない! がんばるアナタを照らす「映画の中の深イイ言葉!」

主演のニコラス・ケイジの役者としての振り幅をいつでも感じつつ、本作でもエリート金融マンから家庭的なパパ役まで無理のない演じ分けとシームレスな人柄がそれだけでも楽しめる。

人は誰しも「あの時にこうしていたら」というのは確実に思うところであり、その結果の距離があればあるほど、その思いというのもまた一層に感慨深いものとなる。

本作のようないわゆるの知的、成り上がりエリートとある種の敗北者であり、のうのうと生きる男性像というのは全くもって対象的であると同時に、内的、外的にも一見相容れないように思える。

それなのに、なぜでしょう、ニコケイの存在もありというのは前提に置いたうえで、渾然一体となり、一人の人間が同様のものを内包しているということを”思い出させて”くれる。

それこそが本作の本質的なカタルシスだと思うところであり、誰しもにその両方の可能性というのは存在していると感じさせられるところ。

DNAがどうとか、生まれがどうとか、環境がどうとか、色々な状況を並べ立てたところで、可能を不可能にする想像を働かせたところで、この事実には変わりがなく、確実に個の中に両面の存在があるというのは紛れもない真実なのだろうなと。

思い返せば私自身も感情表現が薄い、論理的、現実主義などと言われもするが、以前にはその全てから解放されるような時期もあり、何なら今でも状況や相対する人によりそれらが表出することだってあり得る。

つまり変化し、自己改革しながら、ちょっとずつ自分のブレを減らし、疑似的な自分の思う自分像へ収束していく。

あくまでも自分が思う自分像であって、その過程で思わぬ自分や考えられる自分というものも存在したはず。

そうしたものは内に秘めたまま人生のレールと見合わせ、今にフィックスするように自己修正しているというのは面白いところでもあり、選択は選ばないものを切り捨てる作業でもあるとも言える。

媒介として人物を介し、愛を軸に据える。

理屈で語るのが最も難しいものの一つで、かつ、条件の定めも多岐にわたる。

物凄く分かりやすい形でのケイトとジャックを対比させ、紐づける。終盤での違えた道が一つに交わり、同様の思考として並走し始めた時、ケイトに対する鑑賞者の視点というのがジャックに重なり、並々ならぬ無為な気持に襲われる。

終盤への畳み掛けというのは無理やりな部分もありながら、ラストのあの空港でのショットを見せられた時に自分の気持に根ざした感情が融解する。

天使のくれた時間』 ニコラス・ケイジ | bar Almost Famous

ラストに至るまでにも何度も出る、二人を横顔で収めたショットというのが非常に好きなアングルであって、親密さ、幸福さ、無邪気さ、愛しさ。相手へのネガティブさを抜きにしたポジティブな表現に包まれる。

ファジーで丸みのある画作りだからこその優しさがそこにあり、ただそれだけで幸せだと思わせてくれる画作り。

ジャックの描き方として、子供の存在、職場の人間関係、近隣の関係性なども含めた、ありふれた日常における些細な関係性というものを通し、内面からそのオリジナリティを誘発する。それにより彼自身の全体を醸し出すというのも興味深い。

子供からしたエイリアンという発想もまたその言語化として自然発生し、非常に的を得たような雰囲気を感じるという皮肉もGood。

それぞれの視線や視点が交錯する映像の流れを堪能しつつ、人間関係の交わりというものの、不確実性を晒しながら進んでいく。

小難しいことを抜きにした時、真っ先に浮かぶのがジャックがケイトに愛情について問うた場面が浮かんでくる。

「この人生には確かなものがあるの。あなたがいて、子どもたちがいて、私たちの家がある。私はそれを選びたいの。」

というもの。

これは深く突き刺さる言葉であり未だに抜けきらない。

様々な人生の不確かさがある中で、その”確かさ”だけは担保したいと願い、確実なものとしてあるのであれば自分はどんな選択でも出来るという確固たる自信につながる。

この満ち足りた、気取らない、多くを簡単に切り捨てる覚悟というのは愛そのものの輪郭を捉えて離さない。

愛を気持ちや感情の一種としてみた場合、浮き沈みのするもので、不安定なものと捉えがちですが、ケイトはそここそが確かなものとしてキャッチアップした。

互いの認識が揃ってのことというのは当然のものですが、それでも相手を愛しているという一点において、相手からの愛情の受動を通し、そうまで言い切れる潔さは本当に感嘆の意に付す。

クリスマスまではもう少しありますが、雪景色のこうした物語というのは相変わらず良いものです。

では。

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