『君のクイズ』
クイズ番組の決勝で、僕の対戦相手は1文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たす。彼はなぜ正答できたのか?
推理作家協会賞受賞&本屋大賞6位、圧巻のエンターテインメント。文庫化に際し短編小説「僕のクイズ」を収録! 解説は田村正資氏。
クイズを題材にした切り口、作品自体の構造がクイズになっているとも言える多重メタ視点も相まり、本への没入度合いを高める。
今まで読んだどの小説とも異なる読後感。
クイズという世界の知っているようで知らない世界を覗かせてもらったような、体感させてもらったような、クイズなるものの世界。
展開自体の斬新性ということ以上にとにかく”没入感”という感覚が非常に強い。
物語としてはあらすじにもある通り、クイズ番組における対戦相手との勝負、その場面で相手が一文字も読まれるうちに回答し・・・というその謎を追うような形になっているわけですが、それがいわゆるミステリーを思わせる展開に発展する。
面白いのがその語り口で、ほぼ1人称で主人公を通した視点での謎解きが展開され、当事者である彼が、彼だから知り得る手がかりを元に話を考察していく。
問いと、疑問が交錯し、それがクイズへと掛かる。
渦中の心理を通じ、読んでいるこちら側も一緒に謎解きに加わるような当事者性が付与され、ミステリーとクイズという狭間で揺れ動く。
そこまでの過程、推理、事実をいう手がかりを元に、徐々に解きほぐされてくる真実。
『君のクイズ』というタイトルの意味を意識しながら読むことで、その謎すらも解き明かされていき、最後にはそうした諸々も実を結ぶ。
作品内で展開されるクイズ番組自体の表現クオリティも高く、実際のクイズや番組に対しての研究や問題形式などについても筆者自身が丁寧に調べたとのこと。
実際に識者等も関わっており、以下のようにも語られている。
伊沢拓司の関与の具体的内容
インタビューや出版記念対談(小川哲 × 伊沢拓司)によると:
クイズ問題の出題形式・難易度バランスの確認
クイズ番組の**本番での心理的リアル(押し負け、早押しタイミング)**のアドバイス
テレビ収録現場の空気感・ルール運用の描写指導
などを行っており、実際の「競技クイズ」のディテールを反映させる役割を担いました。
小川哲 × 伊沢拓司 対談でも語られたこと
小川哲は「クイズという競技を戦場のように描きたい」と考えていた。
伊沢は「知識量の勝負ではなく、思考と反射の駆け引きをどう描くかが肝」と助言した。
その結果、作中のクイズ描写は「単なる知識披露」ではなく、哲学的・心理戦的なリアルさを帯びている。
クイズと聞くとその問い自体に焦点が当たりがちなところですが、本作ではその”問い方”に焦点が当たり、そこを解きほぐすことで真相に迫るという。
哲学的な問いであったり、本質的な問いも散りばめられており、なぜクイズをするのか、何のために答えるのか、といった深い部分にまで入り込んでくる面白さも内包している。
とにかく構造の面白さ、今までに無いようなミステリー展開。
実際にクイズ回答者の世界に入り込んだような錯覚を得られる稀有な面白さを堪能しつつ、深き問いをも併せ持った独特なクイズワールドへ。いざ。
それでは。
