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『Todd Hido写真展へ行くの巻』――郊外の闇に灯る“記憶の残光”

『Todd Hido写真展へ行くの巻~Light and Shadow in the Suburbs: selections from 25 Years~』

写真が好きになった初期から好きなフォトグラファーの展示があるということで行ってまいりました。

まず彼のざっくり情報を。

Todd Hido(トッド・ヒド、1968年生まれ)は、アメリカの現代写真家で、静謐でありながら不穏な空気を漂わせる風景や人物写真で知られています。

 

🔹作風

  • 主に夜の郊外の家、モーテル、曇天の道路など、どこにでもありそうな風景を撮影。

  • 被写体はほとんど「人の気配」はあるが「人そのもの」はいない。

  • 光(特に窓から漏れる人工光霧の反射光)の使い方が独特で、寂寞感・記憶・ノスタルジーを喚起する。

  • 作品全体が映画的で、ナラティブ(物語性)を感じさせる。


🔹代表作・シリーズ

  • 《House Hunting》(2001)
    → 郊外の家々を夜に撮影した代表作。
    光る窓だけが人の存在を示唆し、孤独や不在を強調。

  • 《Outskirts》, 《A Road Divided》, **《Between the Two》**など
    → どれも「アメリカの郊外」「移動」「記憶の断片」がテーマ。


🔹人物写真

  • モーテルで撮影した匿名の女性ポートレートも多く、性愛・孤独・トラウマといったテーマを匂わせる。

  • 被写体はしばしば背を向けていたり、顔がぼかされていたりして、観る者に想像を委ねる。


🔹影響・スタイル

  • アメリカ写真の伝統(エッグルストンやクルードソン)を引き継ぎつつ、より内省的で感情的

  • **カラー写真による心理的風景(psychological landscape)**の代表的作家。

  • シネマのような構図・照明感から映画監督にも影響を与えている(例:デヴィッド・リンチ的とも評される)。


🔹ざっくり一言で言うと

「郊外の闇に漂う“記憶の残光”を撮る写真家」

とにかく初見での印象が、映画的であり、リンチ的であり。

静謐な空間の静けさと寒々しさを纏ったような硬質の局地。

写真一枚から物語性を想起させるような構図の取り方であったり、間の使い方。対象となるものはどこにでもあり触れたものであるのにもかかわらずそのように感じさせる画というのは彼の視点による特異性なのでしょう。

そして郊外に光を当てるというのも非常に好きなところ。

郊外の何気ない風景に潜む物語の片鱗、都会とは違う瞬きがそこにはあり、どこにでもあるからこそそこに異質を見たくなるというか。

こういう物語を背景に感じさせる写真って見るタイミングや時間なんかによっても印象が異なったりして、その時々で頭に想起するイメージの違いを愉しむというか、余韻に浸るといいますか。

この写真などは陰翳の濃淡が非常に美しく、柔らかさと硬さが同居し溶け合うようなトーンの豊かさ。濃密にしてクリーミーな乳白の余韻が堪らん。

この人物などはなんてことない写真のはずなのに何かしらの物語を想起させる。それは不穏なのか幸福なのか。

どちらとも取れるそのアンバランスさにも表現の余白が存在し、独特な空白が間を支配する。

この絶妙なハレーション、フレアの混在というのもまた写真自体に混沌とした色合いを付加し、ただの風景に彩を添える。

悦に浸るのに十分な色彩、溢れんばかりのそうした煌めきが垣間見える。

とまあAkio Nagasawa Gallery Ginzaにて11月29日(土)まで開催されているので気になる方は是非。

併せて写真集の販売もされており、大判のそれらもサンプルが置かれており、中々必見でした。

サイズが大きいので持ち帰りは至難の業かと思われますが、それでもあの大判であの価格というのは魅力的なのではないでしょうか。

では。