『スクラップ・ヘブン』

復讐代行業に手を染めた青年ふたりと、密かに爆薬を作る若い女が繰り広げる騒動劇をシニカルに描く青春映画。「青~chong~」「69 sixty nine」で高い評価を得た李相日監督が、加瀬亮、オダギリ ジョー、栗山千明を迎えて製作。ロックバンド、フジファブリックが主題歌『蜃気楼』を書き下ろした。
今にして斬新、今だからこそ斬新に映るのか。
「そういえば、当時はこういう映画を撮っていたんだよな」などと思いつつ、今では「国宝」を撮った李相日監督ということを忘れてのオダギリジョー観たさで。
公開は2005年。当時の空気感としてはこうしたちょっと不穏めいてスタイリッシュ、スピード感を伴うような作品が勃興し出していた。なので本作もそうした波の一つという感覚だった。
ただし、メインとして出ている3人、加瀬亮、オダギリジョー、栗山千明というのは当時からしても人気なわけで、この三者三様の存在感や、画力だけでも相当に場面がもつなという印象は強い。
今であればシームレスなカッティングや、もう少し安定感、落ち着いた繋というのが多いのでしょうが、当時はこうしたエッヂの効いたというか、斬新なところが全面に出た、尖った映像こそが時代性なのかもしれない。
内容というか、主軸にあるような”鬱屈した日々からの脱出”ということは今でも全然変わらず、今の若者にしても抱いているようなことでありながら、どう考えても毛色は異なる。
流されず、適度に、自分らしく、といった事柄ではなく、あくまでも自分を主軸に、何かを、カウンターとして、そうした主体性を感じさせるような気概を見て取れる。
どっちが良いというわけでは無いが、確実に勢いとノリというものがあったなというのは間違いないわけで、だからこそ個性が滲み出る。
端的に表すのがファッションであり発言であり。
オダギリジョーのスタイリングは毎度奇抜でこれが似合ってしまうというのは本人の存在合ってこそなのわわかるのですが、今観てもやはりというか格好良い。
シャツonシャツ、しかも中はド派手な花柄という斬新さ。外に着ているシャツも背面に大きな刺繍のようなものが入ってるのでインパクトは十分。
ヘアスタイルのシャープさも相まって人柄、というか役柄の雰囲気が存分に醸し出される。

これもそう、柄on柄、Tシャツの上にタンクトップを重ねるという、当時の流行りを思い出させる。
それにしてもこの柄合わせとサイズ感というのは誰がやっても出来るものでは無い。

つなぎの着こなしにしてもそう。スリッポンにラフに巻いたつなぎ。同色のタンクトップを着て、ピンクが映えるような着こなし。
髪型の尖り方とファッション。見事に一致し、似合ってしまう。
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上記の画像を見ても一目瞭然ですが、3人共まさにこのスタイリング通りの存在感と人物像。
他人と同質になることなど微塵も良しとしないからこそ出来たであろうそれぞれのスタイリングが秀逸。
作中で「想像しろ、想像力が不足している」というセリフが何度も出てくるのですが、これがラストに向けて加速していくのも面白いところであり、想像力の欠如というのが原動力にもなり、行動力にもなり。
ただし、その想像力を持ってしても、結局のところ、想像はあくまでも想像であり、現実というのはそれを凌駕することは出来ない。
あくまでも偶然の結果として事が決まるというような展開の滑稽さ、無慈悲さ。あったら良いものではあるが、あくまでもスパイス的な要素でしかあり得ないというのもまた帰結としてシュールさに富んでいる。
ミステリータッチであるし、画のグルーヴによりスピーディーに展開していく物語。ある種の当時の空気感を観るには今観ても面白いかもしれない。
それと対比させる意味合いでも今の「国宝」と尖り方の違いを観るのもまた一興。
では。
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