『ヒューマンネイチュア』
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ビョークの「ヒューマン・ビヘイビア」などのクリップで知られるゴンドリー監督は、スパイク・ジョーンズとNYのチボマットのライブで出会い、カウフマンを紹介され、彼に見せられた脚本が気に入って本作が誕生。
ちなみに、撮影のティム・モーリス=ジョーンズはゴンドリーとはクリップで組んできた仲だが、ガイ・リッチー監督の「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」と「スナッチ」のカメラマンでもある。
風刺的であり、現代に通じる部分もありというのは奇想天外な物語を考える彼ならでは。
カウフマンのような脚本家というのは大好物で、奇人、変人というような類の独創性を持った人物は本当に惹かれるところがある。
そんなカウフマンですが。
■基本情報
出身:ニューヨーク州出身(育ちはコネチカット)
活動:脚本家としてキャリアを始め、その後監督業や小説執筆にも進出
作風:独創的で実験的、自己言及的。人間のアイデンティティ、記憶、孤独、時間の流れをテーマにすることが多い。
■主な代表作
脚本『マルコヴィッチの穴』(1999, スパイク・ジョーンズ監督)
ジョン・マルコヴィッチの頭の中に入れるという奇抜な設定。カウフマンの名を一気に知らしめた。『アダプテーション』(2002, スパイク・ジョーンズ監督)
実在の蘭を題材にした本を脚色する苦悩を描く。主人公は「チャーリー・カウフマン」本人。自己言及性の極致。『エターナル・サンシャイン』(2004, ミシェル・ゴンドリー監督)
恋人との記憶を消す装置をめぐるラブストーリー。アカデミー脚本賞を受賞。切ないSFロマンスの傑作。■作風の特徴
メタ構造(物語が物語自身を語る)
記憶や時間の改変
「自分とは誰か」というアイデンティティの探求
不安・孤独・老いといった普遍的テーマを、シュールで風変わりな設定で描く
ハリウッドの中では商業性よりも芸術性・実験性を追求
カウフマンは「人間の脳内で起きている混沌や不安を、映画という形で外在化する天才」とも言われています。わかりやすさよりも、人間存在の不安定さや複雑さをそのまま表現することに重きを置いているのが大きな魅力ですね。
そしてミシェル・ゴンドリーとの初コラボ作品でもあるという。
とにかく変なストーリーですよ。
体毛に異常な悩みを抱える女性・ライラ、文明的な生活に執着する科学者・ネイサン、そして野生の中で育った“毛むくじゃらの男”パフ。この3人を中心に、”自然と文明”、”本能と理性”というテーマを描いているという。
まず冒頭、ネズミをクローズしたショットに始まり、その生態を何故かトレースするカメラワーク。
これがなぜだったのかはその後わかるわけですが、既にその時点から本作の核心めいた皮肉は始まっている。
ブラックジョークとシニカルさに満ちたドラマが展開され、最後はどんな結末を迎えるのか。
議会証言、そこまでの流れ、研究施設とそれぞれの自宅。
メインとなる舞台と構成を使い分け、それほど場面転換しない設定の中、非常に纏まりよく、飽きさせずに見せる。
展開が展開なだけに終始、画力が強いんですよ。
体毛が以上に濃い女性、自称猿人類の男性、マナー命の科学者、これがどのシーンにも出てくるわけで。
こんな突拍子も無い設定にもかかわらず、普通に見れ、メチャクチャ面白い。
カウフマンってとんでもない設定に、核心めいたテーマを盛り込みブラックジョークたっぷりにカオスな世界へ誘うのが抜群に上手いと思っている監督、脚本家の一人。
そこにミシェル・ゴンドリーというこれまた彩度豊かな画面作り、手作り感のある特殊効果や光を効果的に駆使するのが抜群に優れている監督がコンビを組んでいるわけでして。
演者の顔芸とシュールさも良いんですよ。
ティム・ロビンス、パトリシア・アークエット、リス・エバンス、ミランダ・オットー。
リス・エバンスはあの猿人から聡明な人間までを巧みに演じており、笑いあり、知性ありでそもそも振り幅がエグい。
パトリシア・アークエットも同様ですよね。
ティム・ロビンスも神経質かと思いきや本能むき出しというギャップ。
ミランダ・オットーも清楚かと思いきやセクシーさもあり。
狂ったプロットに狂った演技、あくまでも良い意味で全てが狂っている。
でも、それがありつつも見事にテーマと一体化しているから、まことに不思議。
ではその本質は。
個人的に”甘やかされた生物はもう逆境に向かえない”というところだと思っているんですよね。
文明を知り、楽な生活、欲が解消されてしまう生活において、負の側面があるとしても麻痺した感覚や怠惰さは既に沁みついてしまっている。
沈殿していると言っても過言では無い、本能的怠惰。
一度蔓延ったら少々のことでは取り除けない。粘着質が半端じゃないことを痛感させられる。
ちなみに甘やかしというのは文明であると同様に理性であるとも考えられるわけで、その衒いはどの登場人物たちにもみられる。
性欲、食欲、物欲、金欲、あらゆる欲と名の付くものから逃げることは出来ず、どんな絵空事を並べても回避不能。
お世辞抜きにして、その描き方が滑稽で見事なんですよね。
どうあるべきかと語る前に、どれが自然なのか。
到底定義されているものでも無いですし、誰かが決めるものでもないからこそ、見出すのが非常に困難。
議会で法をもって裁けるのはあくまでも法という枠内であって、その枠を規定しているのもまた人間という皮肉。
そうした滑稽さ、抗えなさを受け入れた上でどう生きるのか。
ラストの展開、同じくして作品内のネズミの生態にも目を向けた時、恐ろしさと、問われている難しさを感じさせられます。
こうして書くと辛辣な、小難しいところもあるのかと思われるかもしれませんが、あくまでも気楽に、コメディとしてその本質を愉しむというもまた一興。
なんせこの世はカオスですから。
それでは。
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