『狂い咲きサンダーロード』

鬼才・石井岳龍(石井聰亙)監督が1980年、日本大学藝術学部映画学科在籍時に卒業制作として発表したインディペンデント映画で、同年に東映セントラルフィルムの配給で劇場公開もされた作品。幻の街「サンダーロード」を舞台に、暴走族や政治結社に反抗する若者の戦いをバイクやロック音楽、バイオレンスを満載に描いた。
暴走族「魔墓呂死」の特攻隊長・仁は、警察の取り締まりに対して平和的な路線を歩もうとしたリーダーの健に反発し、実力行使で反抗を試みる。やがて抗争の中で右腕と右足を切断され、バイクに乗れない体になってしまった仁だったが、それでもなお抗うことをあきらめず、バトルスーツに身を包んで最後の決戦に挑む。
2016年には、クラウドファンディングにより、オリジナル16ミリネガフィルムからのリマスターおよびブルーレイ化が実現。「オリジナルネガ・リマスター版」として東京・シネマート新宿ほかで上映された。
噂以上のスペクタクルショー。
本作は是非映画館で観たいと思っていた作品の一つであり、DVD等では観てこなかった作品の一つだったんですよね。
それが45周年記念特別復活上映ということで、観てきました。
端的に言って「半端じゃない」。
まずオープニングからして不穏な映像とサウンド。禍々しさと雑多さが入り混じる、男印の真骨頂。
ネオンの電飾、色味が良い意味でどぎつく、心を掻き乱すような映像に胸躍る。
タイトルまでの流れも抜群に効いていて、とにかくカッコイイとしか言いようが無いほど、高まる鼓動。
まず、オープニングの楽曲が痺れましたね。
泉谷しげると言えば役者のイメージしかなかったわけで、こんな痺れるサウンドを鳴らしていたとは。
歌詞もノイズに紛れ、明確に聞こえなかったこともあり、普通に洋楽のパンクバンドなんだろうなくらいに思っていたほど。
それが泉谷しげるのバンドだったとは。
冒頭、暴走族幹部陣が集まっての声が揃わないような問答はどうやら低予算により同じ人物が声を変えて等、工夫を凝らしたとのことのようですね。
永野さんが熱狂するのも無理もない。
もうこの時点で思ってましたけど、印象的なフレーズが多かったですよね。
序盤シーンでの「~わかる?」とか、仁が言う「~ねぇよ!」とか。
あんなちんけなセリフなのに妙に印象的で、しかも滑稽、けれども抜群にキャラクター性を言い表しているようなセリフの数々。
癖になるのも相まって、忘れられないのなんのって。
画としてのキマり具合もバチバチで、止め画を意識したような構図やポーズの連打。
和製にしてここまでキマった映像というのは見たことが無い。
昨年観た「バイクライダース」なども同じくのバイクカルチャーものですが、全く引けをとらない、この国独自のカッコ良さ。
日本も捨てたもんじゃないというのはカルチャー的な観点からしても十分過ぎる魅力に満ちている。あくまでも映画としてのという意味でですが。
ポスタービジュアル然り、まず頭に浮かぶのが「マッドマックス」。これが79年公開、そして本作が80年公開ということ。「マッドマックス2」が81年公開ということを考えると僅差でどっちが先だったのか。いずれにせよあの世界観を構築したのは手放しで歓喜すべきところでしょう。
テロップで出る場所の名前(デスマッチ工場跡とかバックブリーカー砦など)や呼称もグッドネーミング。
いちいち気の利いたというか、世界観に即したネーミングも癖になる。
もうね、カメラワークにしろ、繋ぎ方にしろ、テロップにしろ、先のアテレコの件にしろ、とにかく要所が雑でラフなんですよ。
展開にしても唐突な要素が多く、本筋としては”ただ仁が我が道を行く”だけ。
これってマッドマックスなんかのプロットとも似ているところがあり、”ただ~するだけ映画”ってなんでこう魅力的なんですかね。
潔の良さ、勢い、わからないけど世界観が決まっていれば、それだけ映画自体の核心に迫れるからなのか。
山田辰夫演じる仁にしろ、登場シーン、声が甲高くて、これでこのストーリー持つのかよと思っていたのに、徐々に病みつきになるという。むしろこの声じゃないとダメなくらいですよ。
仁のセリフにパンチラインが多いというのも印象深く、「孤狼の血」並みのセリフ真似たい中毒性。
ファッションも最高。
バイク系カルチャーあるあるの薄めのストレートデニムにジャストサイズの白T、それに合わせる革ジャンという最強のコーディネート。
特に集団でいる時の佇まい、カッコ良さと言ったら。

権力や大人、政治といった全てに抗う気持ちというのはあの頃の世代には反骨精神としてあらゆるジャンルに見られるわけですが、ここまでの抗いはそう見れたものじゃない。
薬物、煙草、酒、女、暴力、暴走、なんでもあれ。
その先に待ち受けているのもは。
ただ、観ているとそんなことよりも映像そのものに意味があるとすら思わされる爆裂暴走劇。
健さんと彼女のシーンでの謎の靄がかったファンタジー描写。これとの対比もカオス過ぎ、映像の高低差に振り回される。
理屈じゃない映画もあるんですよね。その凄味に圧倒される作品というのも。
それは堪能する以外方法は無い。
では。