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『総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景』|記録ではなく記憶を撮るということ

『総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景』

写真を撮る際に影響を受けているというか、価値観、構図、写真への姿勢、そうした印象と共に、何よりもまず写真そのものに惹かれるという感覚。

彼の写真にはそれがあって、何も知らずとも惹かれてしまう何かがあったのが印象的なフォトグラファーの一人。

そんな彼の展示があると聞けばまあ行くわけで、結果的には大満足。というか予想以上。

まずルイジ・ギッリって誰よ。というところについてですが

■ ルイジ・ギッリ(Luigi Ghirri)略歴
生年:1943年1月5日

出身地:イタリア・エミリア=ロマーニャ州 レッジョ・エミリア近郊のスカンディアーノ

没年:1992年2月14日(49歳没)

■ 経歴と活動
1970年ごろから本格的に写真を始め、最初は趣味としてカラー写真を撮影。

本職は測量技師で、空間や地図、境界に対する関心が写真にも強く反映されている。

初期は広告や観光、ポスターなどのイメージを写し取る「再現されたイメージ」に注目。

1973年、「コダクローム(Kodachrome)」シリーズで注目を集める。

1970年代後半から1980年代にかけて、イタリア各地の風景、郊外の建築、観光地、日常的なオブジェクトを主題としたカラー写真を撮影。

独自の写真理論も多数執筆し、哲学的・詩的な視点で写真というメディアの意味を探求。

■ 代表作・代表シリーズ
『Kodachrome(1978)』

『Atlante(アトラス)』

『Italia ailati(裏側のイタリア)』

『Il profilo delle nuvole(雲の輪郭)』など

フィルムのカラーを生かした写真が多く、特にコダクロームでの写真は発色が豊かで惚れ惚れするような色彩が印象的。

それ以外の写真に関しても色味や構図にとてつもないこだわりを感じさせ、”これが意図して撮る”ということだよなということをまざまざと感じさせられる。

それだけであればそこまで惹かれなかったであろうところ、これを日常的な風景、誰しもが目にする光景に落とし込み、あくまでも日常を的確に切り取る。

この的確さというのは客観的な的確さというよりもギッリ自身の感性による、思い出などによる的確さというのが正確なもので、ゆえにその感性、感覚に心酔してしまう。

とにかく見てもらえばわかるのですが、バチバチに構図が決まっているのに自然体、それでいて抜群に美しい。

人により受ける感覚というのは違うと思うので、一概に言えるところではないかとも思いますが、私自身はトップクラスに美しいと感じてしまう。

モノクロ写真が主流であった時代において、カラー写真を広めた写真家というのは数多くいたと思いますが、日常風景を詩的に捉えたという視点は彼の功績としても大きいところではないでしょうか。

イタリアに生まれ、周辺の小さな町や郊外など身近な風景を対象にし続け、「旅をしない写真家」とも言われていたようですが、それでもあれだけの写真が撮れるということに心惹かれる。

同時に、ギッリの写真は、単に景色を記録するのではなく、「見ること」「再現されるイメージとは何か」といった哲学的な問いかけを内包しているというのもそうで、内と外の認識、記録でなく記憶やイメージを主眼において写真と向き合っていたというのも自分が憧れるスタイルと一致している。

49歳で亡くなったのが悔やまれますが、このような形で、残るところには残り、影響を与えるというのは彼の写真が持っている力があればこそなのではないでしょうか。

展示されている写真の数もかなりありましたし、何よりこれが1000円足らずで見れるというのは素晴らしい企画だなと思ってしまいます。

当然のことながら図録も購入したのですが、これまたボリューミーで解説、写真共に満足のいくクオリティになっているかと思います。

展示が気に入るのであればマストかと。

写真は何の為に撮るのか、意志の表象として、感覚の創造として、思うままに思う写真を撮れればというのは改めて感じたところではありました。

恵比寿の東京都美術館にて、9月末まで展示は行われているので興味がある方は是非。

では。

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