『本陣殺人事件』
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横溝正史の同名推理小説の映画化で、地方の由緒正しい旧家で行った“密室殺人”を描いた推理映画。脚本・監督は「餓鬼草紙」の高林陽一、撮影は「子連れ狼 冥府魔道」の森田富士郎がそれぞれ担当。
横溝正史原作といえば市川崑監督のイメージが強いところがありますが、最近のミステリー熱から、こちらも観てみることに。
監督は高林陽一、そう聞いてもピンとこないというのが正直なところなのですが、予想以上に市川崑的というか、要所要所で似ているところがあるなという印象。
まず、OPのカラフルなルックが印象的で、最初はあれが何を表しているのか、美しい火花のような、閃光のような。
それが終盤で何によるものなのかがわかるわけですが、わかってもなお美しい。
画作りに関して、鮮烈な赤をアクセントに、構図の一枚画のような抜かり無き配置、この辺が市川崑的な部分だとは思いつつ、その辺の見せ方は非常にサスペンスを予感させ、魅力的に映る。
ではそれ以外はという話なのですが、基本的に楽曲を使わずに展開するシリアスさというか不気味さ、事物的なものにより発生する効果音や人の会話による音のみが存在し、それ以外が無音による演出というのは高林監督ならではのものであって、何とも禍々しさや生々しさが宿り、不気味さを際立たせる。
実験的で静的、詩的な表現というのは1975年制作にあって、かなりアヴァンギャルドな作りだったのは間違いないでしょう。
このスタイリッシュさと不気味さのバランスが見事な作り。
音が無いゆえに、ある時の、画だけで、ぞっとさせるような怖さがある。
先導役としてまさかの中尾彬演じる金田一耕助も印象的で、まず、中尾彬が普通に喋っており、いで立ちもデニムという意外性。
石坂浩二演じる金田一の印象が強過ぎるが故に、異質には感じましたが、慣れるとそこまで気にならず。
コミカルさが先行する石坂浩二と対照的な語り部としての中尾彬。これもまた詩的な映像表現ゆえの静かな進行が表出している表れでしょうか。
話の本筋におけるトリッキーさは横溝正史だけに予想を裏切る斬新なもの。
現代において、というか実際に可能なのかという部分含め意外過ぎるというのはありますが、それでもある種の理には適った、憎悪と狂気、残忍さ、当時だからこその世相を感じさせるような文脈というのは今見ても斬新に映る。
まずもって当時と世相が違いますからね。人々の思考、生活など。
「鈴ちゃんはやっぱり亡くなったか」
という始まりからして、におわせのムードをぷんぷんに纏い、あの光景自体が今は無き風習の名残として新鮮に映る。
婚礼の場における琴の見事さと、美しさ、これが伏線となる予兆も込みで、時代性に宿る当時のお家独特な感覚が共存している。
鈴ちゃんもそうですが、なぜ昔の殺人事件ものには謎めいた人物、明らかに奇妙な人物が存在するのでしょう。
これ自体が時代、世相的なものからくるのか。
当時と今では恐怖とする感覚も違うために生じる設定なのかと思うと、時代の変遷は興味深く、面白いもの。
原作を重視しつつ、詩的な映像としてのコミットの施し方。田園風景や雪景色など、あくまでも詩的な部分にフォーカスしたミステリーという点で鑑みれば、本筋以上に世界観の構築は差別化されていたのではないでしょうか。
興行的にはいまいちだったようですが、文学性を残したような映像表現、画作りへのこだわりというのが垣間見え、カルト的な一部には人気があるというのも頷けるところではあります。
では。
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