『A KITE~INTERNATIONALバージョン~』
普通の女子高生と、殺人請負人。表と裏、2つの顔を持つ美少女・砂羽。光と闇の世界を行き来し、硝煙と血にまみれる運命を歩む彼女の前に、ある日自分と同じ殺人請負人の青年・音分利が現れる。少しずつ惹かれあう2人だが、ある日砂羽に残酷な命令が下され…。
セル画ゆえの深みと重み。画によるアニメーションはアナログの良さが光る。
50分足らずのアニメーションながら、映画並みのクオリティ。
1998年に制作されたアダルトアニメが元とあって、このクオリティというのが凄いところで、こだわりと技術の結晶が見られる。
どうやら、そうした背景の作品からアダルトシーンを削除し、アクション要素を強め、R指定のインターナショナルバージョンが発売されたというのが本作の経緯らしい。
ちなみに制作にあたってはこのように書かれている。
おたぽるのインタビューによれば、梅津は少女による復讐を題材としたオリジナルアニメの企画を考えていたが、一般向けの作品としては通りにくいため、性的なシーンを入れることで購買層を確保できると考え、18禁向けの企画として『A KITE』の企画を提出したそうである[1]。
また、「『A KITE』は自分が子供だった1970年代の時代劇や刑事ドラマを核としているが、自分の映画の嗜好や当時のアニメ業界の決まり事や演出に対するアンチテーゼも入れて制作した」と述べている。
なにが良いって、まず、音楽と映像のミックスが素晴らしいですよね。
ダーティーでソリッドなサウンド。ジャズを巧みに利用してのアンダーグラウンドな雰囲気の創出が海外の雰囲気を感じる画作りのそれと見事に調和している。
街並みは確実に日本ながら、要所要所に海外を感じさせるような画の魅力があり、双方相まっての世界観というのは独特であり唯一無二。
そしてセル画によるアニメーション。
奥行と深みが加わり、ぎこちなく感じる部分もありつつ、この世界観には相性の良い禍々しさが表出する。
なんかセル画だと深みが出るせいなのか作品自体に重厚感が出るんですよね。
加えて、アクション要素も迫力があり、ガンアクションが好きな身としてはそれもまたそそられるところ。
”レッドクラブ”と呼ばれる謎の仕様の銃を使い、とにかくぶっ放すというのも潔く、個心地良い。
メチャクチャに強いというよりも人間味もあり、メチャクチャになるというところもB級感があって逆に好きになれる部分なのかと。
ストーリー的には、やはりというかアダルト要素やゴア描写といった過激な部分も残っているわけで、そういうのが嫌いな方にはあれですが、実のところ、わりと皮肉めいたテーマがあるわけですよ。
現代にも存在する表の顔と裏の顔、権力の乱用、性差別、あらゆる諸悪を集約したような人間的なる闇を容赦なく突きつけてくる。
アダルト出のものだからこそ出来る、大胆な演出や展開、そうした魅力も多分に表れているのが本作な気がしますね。
では。