『機動戦士ガンダム FAR EAST JAPAN』
宇宙世紀0079年、一年戦争後期。オデッサの戦いが間近に迫る中、ジオン軍のベテランパイロット、ランディー・メネンデス准尉に同僚のリンゼイと共に名家の子息であるゴードン・レノックス少尉の指揮下へ入るよう軍命が下った。ランディーたちはコムサイに搭乗してオデッサへの降下を試みるが地球連邦軍の戦闘ポット「ボール」一個中隊の強襲を受け、降下目標の遥か東方、極東の地「ニホン」に落着してしまう。落着直後、所属不明の旧ザクの強襲を受ける。旧ザクが連邦軍に鹵獲されたものであると認識したランディーたちは「ギムレット小隊」を結成。
旧ザクを使う連邦軍のMS部隊は脱走兵部隊であり、旧世紀に存在した米軍基地跡に残されたとされる核兵器を手に入れて、鹵獲品の手続きを行わずジオン軍所属の識別のままの旧ザクで核兵器を非合法に使用し、その汚名をジオンに被せる事が目的であると知ったギムレット小隊はこれを阻止すべく行動を開始する。
激しい戦いの末、ゴードンは脱走兵部隊に先んじて基地に潜入するが、核兵器はとっくに搬出された後だったと知る。生き残ったゴードンとリンゼイは脱走兵部隊を追ってきた連邦軍憲兵隊に拘束され、そのまま終戦を迎えた。宇宙港のある街で、宇宙に強制送還されるジオン兵捕虜たちの中にゴードンとリンゼイの姿もあった。
ジークアクスがアニメでも公開され、またしてもガンダム熱が高まったこともあっての今回、そういえば漫画ではガンダムを読んだことは無かったよなと思い、恒例のディグにおいてなぜか目を引いたのがこちらでした。
舞台は日本、画のタッチが好印象で、上下巻で完結というのも読み易い。
1年戦争の渦中に起きていた事柄を取り扱っているのですが、こうしたエピソードって意外に面白いんですよね。
並行している世界でこんなことありました的な話って説得力があるというか、世界が同時並行的にあることで話に深さと広がりを感じるというか。
作者の方は存じていなかったのですが、画のタッチが繊細で力強さもあり、時折ドキッとさせられるコマもあったり。
作画全体に漂う禍々しさというか、重さのようなものが伝わってくるというか。
芯のあるそれらが線を通して伝わってくる、独特のリズムが心地良く、内容自体の辛辣さ、ソリッドさとも良くリンクしている。
話のまとめ方もシンプルで分かり易く、”ギムレット小隊”というキャッチーな掴みも中々良いんですよね。
2巻という短い中、一定の深みとバックにある1年戦争という下敷きの調和感。
相変わらず、ジオン、連邦、どちらが良い悪いでなく、どちらのどの視点から見るのか。それにより見方も感じ方も変わるという部分もファジーに描かれているし、戦争というものがそのような視点の集積によるズレだと考えられるというのも良く伝わってくる。
本著ではあくまでもジオン目線でのそれなわけですが、敵として出てくる連邦側にも一考の余地はあるというか。
それぞれの思い、それぞれの考えあってこその人物描写が生きている。
あと出てくるモビルスーツや、設定なども悪くないですよね。
特にナイトストーカーであったりスナイパー的なる要素が色濃かったのも個人的には好きなポイントで、職人寄りの人物やギミックがキーになるのもディティールが気になる身としては面白いところかと。
”RGM-79陸戦型ジム・ナイトストーカー”なんてネーミングが既にカッコ良いですし、その性能、あくまでも夜に特化したモビルスーツの試作機というのもそそられる。
リンゼイの寄せ集めカスタムも良かったですね。
寄せ集めなくせに、カスタムに意志を感じるというか。理に適ったカスタムを施し、戦闘スタイルにしても技術に裏付けられた言い分に説得力があり、その表現としての作画もカッコいい。
映像で無く、漫画ゆえの音に関する表現も漫画としてガンダムを読んだことが無い私としてはある種新鮮で、音による気付き、表現、戦争のような現実でもある戦いだからこその細やかな表現、これが擬音によって居場所、起きている事、個別の特定などといった影響と呼応する面白さに感じるところではありましたね。
ガンダム漫画の世界も奥が深い。
気になるシリーズなどもあったりはするのでその辺から攻めてみるのもありかもしれません。
では。