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『ミゼリコルディア』が不穏すぎる|謎が謎を呼ぶ“なんか変”な村の正体

『ミゼリコルディア』

ポスター画像


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「湖の見知らぬ男」などで知られるフランスの映画作家アラン・ギロディが、奇妙な住民ばかりの村で起きた奇想天外な事件の顛末を描き、フランスでスマッシュヒットを記録したサスペンスドラマ。

石造りの家が立ち並ぶ村。かつて師事していたパン職人の葬儀に参列するため帰郷したジェレミーは、故人の妻マルティーヌの勧めで家に泊めてもらうことに。思いのほか滞在が長引くなか、村で謎の失踪事件が発生。マルティーヌの息子ヴァンサン、音信不通となっていた親友ワルター、奇妙な神父フィリップ、村の秘密を知る警察官ら、それぞれの思惑と欲望が交錯していく。

グッバイ・ゴダール!」のフェリックス・キシルが主人公ジェレミー、「大統領の料理人」のカトリーヌ・フロがマルティーヌを演じた。2024年・第77回カンヌ国際映画祭プレミア部門に出品。同年のルイ・デリュック賞を受賞し、カイエ・デュ・シネマ誌のベストテン第1位に選ばれた。

久々にフランス映画を観たのですが、やはりというかなんというか。

変わらずのフランス味を再確認しつつ、フランス映画は絶対に眠気の無い時に観た方が良いことも再認識。

まずはこれにつきます。

本作を観た理由がそもそもポスターにある、”ダーク コメディ サスペンス”という御触書から。

すでにこの時点で「どういうことよ」と突っ込まずにはいられないわけですが、ストーリーを読んでも全く持ってピンとこない。

奇妙な住民ばかりの村で起きた・・・って。

だからこそです。

こうした意味の分からなさ、謎が謎を呼ぶ謎。最高じゃないですか。

そんなこんなで冒頭から長回しのドライブシーンが既にフランスであり、サウンドのテクスチャーが際立つ。

本編通して感じたのが環境音や背景音の大きさがやたらと目立つということ。

咳払い、エンジン音、ドアの開閉音といった日常における音のバランスがおかしく、変に際立つというか、目立つというか。

これが物語の単調さに起伏を与え、ピリッとしたスパイスになっているというのは非常に興味深い。

だからこそなのか、全体を通してスリリングな様相を感じられるというのも面白い塩梅でしたね。

当たり前に潜む恐怖というか、なんか変なんだけど、どこがそうなのかがわからないというか。

映像全体に纏うスリリングさや奇妙さ、禍々しさのある作品ってそれらがわかっているものよりも魅力を感じてしまう何かがあるんですよね。

そんなストーリなんですが、ここまでの謎、キャラクター、を共存させながら、なぜにしてこんなにも盛り上がりに欠けるのかというような展開。

これこそ、ある意味でフランス映画の真骨頂ですよ。

アメリカ的な外連味やダイナミックさなどといったものは皆無で、淡々とした日常の淡々とした描写。

何かが起こりそうという予感だけが煽られる演出と映像だけが緊張を高め、それなのに結果として・・・。

こういったじらしが好きかどうかでフランス映画的なるものの好き嫌いが別れるところだとは思いますが、この緩衝材となっているのが本作ではコメディ要素なんですよ。

最初はどこが?と疑問符がつくような感覚だったのですが、細部に目を向けると普通に転がっているその残滓。

徐々に見慣れてくることで笑いのエッジが見えるようになり、最終的にはあるものが一本見えてますからね。ある棒が。

ダークでありシュール。

結果としてヴァンサンがジェレミーに対し嘆いていた「あいつの目的は何なんだ」という問いに対する答えは迷宮の彼方。

変人、奇人ごった煮のカオスな日常ドラマをゆるりと味わうのも良いのではないでしょうか。

では。