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『トゥモロー・ワールド』に震えた—キュアロンが描く現実すぎる未来と圧倒的没入感

トゥモロー・ワールド

ポスター画像


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英ミステリ界の女王P・D・ジェイムズのベストセラー「人類の子供たち」を「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」「天国の口、終りの楽園。」のアルフォンソ・キュアロン監督が映画化。

人類に子供が生まれなくなった西暦2027年。何の目的もなく働いていた国家官僚のセオが、ある日突然、何者かによって拉致される。セオを拉致したのはセオの元妻ジュリアンが率いる反政府組織で、世界がひっくり返るような秘密を掴んでいた……。

何故かSF作品が観たくなり、「そういえばこれってSF作品だったよな」と思い込んで鑑賞したという本作。

ある意味SF的ディストピアでありながらも確実に現実のそれ。

それでも観入ってしまうのは映像的な没入感とカメラワークの賜物か。

特に長回しによる映像の臨場感、容赦のないその先への興味というのは手持ちを多用し、ワンショットで撮るがゆえの圧倒的な現場味。

舞台となる2027年が近づくことへの差し迫ったリアリティも担保に、逆にズレを感じる部分を孕みながら、現代との共通項を垣間見る。

あそこまで決定的なディストピアは訪れないにせよ、確実にそれに近づく出生率の低下、人口減がデフォルトになり、生き方が多様化となった現代。

このままだと先行きの見通しが明るくはないという部分において、まさに訪れるかもしれない未来というのは非常に興味深く、逆に当時にそれを予見した脚本というのも感慨深い。

ちなみに原作はこちら

出てくるテクノロジーや美術、設定に関してはSF味を帯びたものも多く、かなり魅力的に感じるところも見られる。

特に車のナビゲーションやオーディオ類、小型デバイスなどの作り込みは面白く、今見るとそうなっていないわけですが、説得力のあるビジュアルと憧れを抱かせる雰囲気には感服させられる。

アナログとデジタルの懸け橋的なデバイスって好きなんですよね。

当時の未来感が良く反映されているというか。他のSF作品もそうで、そこに説得力が有るか無いか、それだけでも相当に作品全体のクオリティが変わってくるといいますか。

そういえば主人公セオの従兄?の家にいた青年が扱っていたゲームなのか知育デバイスなのかも詳細はわからないながら、これも面白いフォルムとアイデアでしたね。

そんなセオの格好に関してもブレードランナーに寄せたようなラフで粗雑、それでいて一貫したこだわりを感じさせるシャツスタイル。

ダークトーンのみで纏め、ルーズに着こなす風体が作品ともマッチしていましたし、カッコいいなと。

トゥモロー・ワールド:映画作品情報・あらすじ・評価|MOVIE WALKER PRESS 映画

ジャスパーの家も好きでしたね。キャラクター性も含めて。

年を取ったらこうなりたい。そんな風に思わせる陽気さとブラックジョークのわかるキャラクター性。細かいことは抜きに、人生を謳歌することだけに取る姿勢であったり、流されず、自分の価値観と志向を重視する芯のある行動力。

インテリアなどもオシャレに揃えてるというより、好きなものを雑多にしたらこうなった。というようなところに絶妙なセンスを感じさせますし、コミュニケーションの取り方などもファニーでユーモラスでとにかく最高な爺さん。

トゥモロー・ワールド シネマの世界<第515話> : 心の時空

選曲や効果音といった音に対するアンテナも印象的で、楽曲はキャッチーさとシリアスさのバランスが取れた選曲、効果音は非常に重みを伴った鋭利さが光るサウンドコントロール

とまあ細かく書くと色々と手が込んでいるなと思わされるわけです。

しかしながら本作の何が最大の魅力かというと、確実に”臨場感”に尽きると思うところ。

SF的であり、現代的でもある世界の容赦無さ、冒頭からその凄さを身をもって味わうことになりますからね。

キュアロンはゼログラビティしか知らないよと言うような方にこそ観て欲しい作品じゃないでしょうか。

では。