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SF×短編の極致!『Present for me』が魅せる唯一無二の物語

『Present for me 石黒正数短編集 (ヤングキングコミックス)』

以前にも↓を読んで以来、面白いプロットを表現する漫画家さんだなと思っていたのですが、恒例のDiggにて手にしたのがまた別の短編だったので。

ちなみに以前読んだのがこちら。

blcrackreverse.com

買って読み出すまで気づかなかったんですよね。

同じ作家さんだと。

ではなぜ買ったのかというと表紙が抜群に好みでして

配色、構図、バランス、この雰囲気が抜群で、パット見で惹かれたと言いますか。

そして読んでみると、全ての話に共通するのが”突飛な展開”ということ。

短編でもここまで奇想天外なことが出来るのかというのは以前読んだ短編と同様、ですがこちらのほうが物語として短いため、余計に凄いなという印象がありまして。

目の付け所というか視点の切り替えが上手いんでしょうね。

中でも良かった作品をいくつか挙げると。

まず『バーバラ』。

冒頭から笑える展開に、ありきたりながらテンポの良さで確実に笑える。

特にラスト数カットのコマ割りから構図の描き方までが映像的で非常に驚きましたね。

続いて『ヒーロー』。
展開の面白さもさることながら、プロットの面白さ、社会や人生に対する焦燥感も感じさせ、設定の冥利も相まって読後の余韻をポジティブに残してくれる。

軽い内容かと思いきや意外にも最後には希望を抱かせてくれる加減がちょうど良い。

最後が表題の『Present for me』。

作者自身も「最もセリフに熟慮し、短編の中で最も好き」だと書いてありましたが、本当にその通り。セリフに対する姿勢というのが随所に溢れ出ている。

SFとして、背景描写や設定における興味を惹きつつ、ロボットと女の子というミニマルな視点のみで話が進む。

女の子が喋らないというところも非常に良く、物語の不可思議さに独特の間合いが付与される。

そして慣習としてのクリスマスを上手く使ってのラスト一コマ。

これらが含む様々な思いが一気に押し寄せ、その後の世界を想起させるような余韻も残したラスト。

良きです。

ちなみに表紙の画というのはその後の世界の二人を描いたようです。

これを知って、いっそう想像の世界が広がるというのも良いなと思ったのは言うまでもありません。

では。