ロイは相棒フランクと組むやり手の詐欺師だが、潔癖性に悩み精神科医に通う日々。
そこにかつて別れた妻との間の娘アンジェラが登場、ロイは彼女に翻弄されていく。
原案は、恐竜が主人公の異色ハードボイルド小説「さらば、愛しき鈎爪」シリーズで人気のエリック・ガルシア。
名監督リドリー・スコットが、フランク・シナトラやハーブ・アルパートなど50年代の音楽に乗せて軽妙に描く親子詐欺師コメディ。
コメディタッチなのにどこか上品さ溢れるところもありで。
リドリー・スコット作品というと重厚さというかゴシック調の重さみたいなものを感じるものが多いかと思うんですが、こういった軽妙でPOPな作品も良いんですよね。
ストーリーラインとしてはドタバタな詐欺者コメディ。
なんですが、冒頭からかなりぬるっとしたカメラワークとシルキーな質感の映像、サントラの優雅さ漂うオープニングで、クレジットの入れ方含め、これからの良き物語を予感させてくれる。
まずもって映像の質感が良いんですよね。
深みがあり、滑らかさがあり。
部屋の光の入り方だとかもそうですし、プールの雰囲気も最高。
基本プールが出てくる作品は大体好きなわけで、以前書いたようなダイナーに続いてこのプールという場所も無条件に惹かれてしまう。必要ないのに確実に必要と見える雰囲気推しなところに魅力を感じてしまうわけです。
このプールの色なんかもそう。
人工的で、実物以上に綺麗な青さを感じさせる無駄さ。
本作に関しては主人公の潔癖症さを表現する一部として機能していた部分もありましたが、機能性以上にその無駄さが好きでして。
ニコラス・ケイジもハマり役でしたね。
この人ってホント演技の幅が広いなと思うんですが、本作でもポンコツからエリートまで、しっかりと本質的な人間性は担保しつつ、全てがそれっぽく見えるという素晴らしい役者っぷり。
いで立ち含め、全てがそれっぽく見えますし、説得力も申し分なし。
父親としての顔なんかもこの振り幅で良く出来るなと感心したところで、人間味ある頓馬な部分も合わせ魅力的に映るんですよね。
一言で言うと人間力がある。
そんなニコラス・ケイジ演じるロイを中心に転がっていく物語なんですが、テンポも良いですし、話自体の無駄も無く、シンプルに面白い。
キャラクター同士の掛け合いや、関係性、会話劇なども面白く、本筋は見えているんだけど、その裏側にある詐欺的掛け合いがまた軽妙で子気味良い。
重苦しい策略などでなく、ロイ自身も劇中で言っているように、あくまでも子悪党的な犯罪に終始しているところも良いんですよね。
映画自体に軽さがあり、POPに映る。
そこに娘としてのアンジェラが出てくるバランスもお見事で、子供とのやり取り、詐欺による謀略、絶妙なバランスでそれらを行き来する話の振り方もさすがと思いますよ。
そんなクライム的な楽しさとホームドラマ的な楽しさの混在、最後には想像を超えてくる仕掛けもあり、頭から尻尾まで楽しめる作品になっているんじゃないでしょうか。
そういえば終盤のニコケイの病院からの演技も中々に痺れますよね。
あれぞまさにコメディ。
重厚さだけがリドスコじゃない。
では。
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