『グラディエーター』
「ブレードランナー」の巨匠リドリー・スコットが、古代ローマを舞台に復讐に燃える剣闘士の壮絶な闘いを描き、第73回アカデミー賞で作品賞・主演男優賞など5部門に輝いた歴史スペクタクル。
古代ローマの皇帝アウレリウスは、信頼を寄せる将軍マキシマスに次期皇帝の座を譲ろうと考えていた。それを知った野心家の王子コモドゥスは父を殺して玉座を奪い、マキシマスに死刑を宣告。マキシマスは故郷へ逃れるが、コモドゥスの手下に妻子を殺されてしまう。絶望の中、奴隷に身を落としたマキシマスはやがて剣闘士として名を上げ、闘技場で死闘を繰り返しながらコモドゥスへの復讐の機会を狙う。
主人公マキシマスをラッセル・クロウ、宿敵コモドゥスをホアキン・フェニックスがそれぞれ演じた。2024年、続編「グラディエーターII」の公開にあわせて、本作も4Kデジタルリマスター版でリバイバル公開される。
結局のところ芯のあるやつが慕われる。
公開が2000年公開と既に24年前。続編公開ということでいま一度観てみようかと思いまして。
リドリー・スコット監督って、合戦のイメージはそんなにな感じなんですが、改めて観てもやはりちょっと合戦はしっくりこないというか、迫力はあるけど、描写が分かりずらいというか。
ごちゃごちゃっとしてバッと終わるみたいな。
でも、全体的には壮観でしたよ。
特にコロッセウムでの様子は素晴らしい。「これを人間が作ったのか」とはよく言ったもので、自分も実際にローマで観た時にはそれこそ巨大過ぎる存在感と威厳に驚かされたものです。
その感覚が映画を観ていてもビシビシと伝わってくるというのもありますし、あの中で正に決闘が行われていたというリアリティライン。
迫力と共に汗臭さまでもが伝わってくるような描写と演出に、とにかく痺れる。
しかもリドスコお馴染みの容赦無い展開もありで、妻子のあれなんて惨すぎですよ。そこからのマキシマスを思うともう。
その中心として主人公マキシマスを演じるラッセル・クロウですよ。
威風堂々とした佇まいと、多くを語らずとも感じる覚悟と忠誠の心持ち。表情一つとってもその人となりが伝わってくる。
マジでカッコ良いんですよね。
展開としては不遇に次ぐ不遇、それに抗うでも無く、嘆くでも無く、ただ淡々と自分の思うところへと向かって前進あるのみという姿勢。
あくまでも自分の芯を曲げずに、絶対に悪を許さず、徹底的に抗戦するという姿勢そのものが美しくもあり、単純に心打たれるんですよね。
初期のマッドマックスにもあるような展開もよろしく、核なる覚悟を持っている人の行動や思想というものはこうも神々しいものなのかと。
搾取される側と搾取する側の構図が現代よりも明確な線引きが成され、有無を言わさず、反勢力は淘汰されるような時代背景において、こうした人物であり、このようにあるということがどんなに辛く過酷な道だったろうか。
その凛とした生き様にこそ、精神が宿るような、そんな勇壮さが滲み出るような演技で、これこそが単に戦うことにおいてのみでない、真のグラディエーターなんだろうなと思わされる。
その比較としてのコモドゥスを演じたホアキン・フェニックスも良かったですね。
こういうねちっこいような、陰湿さ極まる役をやらせたら右に出るものはいないんじゃないかっていうくらい、嫌みが伝わってくる。
バックボーンにある邪悪さをここまで内に秘めた状態で表出化させるという行為は、やろうと思って出来ることじゃないと思うわけで、そう考えると、演技に加算される潜在性はホアキン独特な才能なんだよなと改めて認識させられる。
そんな人の内包する善意と悪意のような漠たる精神性を見事に消化し、作品内のプロットにおいて見事に纏め上げてしまうという手腕ですよね。
リドリー・スコット監督作品にある精神性と神話性というものを担保にしつつ、物語としても分かり易く、響かない人はいないんじゃないかと思えるような構成やストーリーライン。
圧巻のコロッセウムシーンだけでも見ものなので大きいスクリーンで見ると音像、映像共にド迫力の世界が眼前に現れる貴重な体験が出来ることでしょう。
では。