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文学の深淵へ:三島由紀夫短編の詩的表現力とシュールな世界観『花ざかりの森・憂国』

三島の短編は初めて読んだんですが、これはこれで色々な試みが見られて面白かったですね。

『花ざかりの森・憂国

好き嫌いも当然出てきますし、書かれた年代なんかによって、左右されるところもあるなと思いつつ、響く作品は響いてくる。

短編の良いところって、そうした変化であったり、試み、様々な角度からのフックアップがあるところが面白いんですよね。

長編にしろ短編にしろ、三島作品を読むとその表現の幅というものの凄さは感じるわけですが、短編となるとさらにそのテーマ、文体も多岐にわたってくる。

コメディ、詩的、純愛、シュールレアリスム、手記、ホラー、日常系、ファンタジー、読書後思うところでもこんなにばらばらで、バラエティに富んだ作品の数々。

なぜこんなにも色々な話が書けるんですかね。しかも一定の三島節を残した状態で。

個人的に響いた作品がいくつか有りまして、それが

「詩を書く少年」「橋づくし」「女方」「百万円煎餅」「憂国」「月」

一つずつ軽く気になった点を書いていくと

まず「詩を書く少年」。

どことなく文学的なテーマ性を持ちながら、詩と現実を対比させ抽象と具体をロジカルに組み立てていく面白さ、物理学にも似た言語感覚を感じ、事実は小説より奇なりといった不可思議さを帯びた発想の余白が妙に心地良い。

それから「橋づくし」。

潜在的な怖さの観念を徐々に認識させられると同時に、どこか冒険のようなロードムービー的面白さがある。

会話を積み重ね、内的な声に耳を傾けた時、段々とその背景にある何かに触れるような感じが興味深かったですね。

女方」。

文脈の滑らかさと色気立つ雰囲気、とにかく雰囲気の艶やかな感じが伝わってくるのが堪らない。

「百万円煎餅」。

ただのデパート内遊園地という場所にもかかわらず、そこでのやり取りをファンタジックに描写し、日本的な美を持って語る表現が中々に秀逸。

憂国」。

圧倒的描写の生々しさ、臨場感が半端じゃない。

読み物から伝わるここまでの”気”というのはそれこそ表現におけるある種の到達点であると思うし、それを短編というこの短い話の中で成しているということに驚きしかない。

三島自身も「時間が無いが読むとすれば」という問いに対し本作を挙げているというのも納得のエッセンスが凝縮されていると思う。

そして最後に「月」。

近現代のクライム小説に見られるようなどこか西洋的でオフビートな作品。軽妙さと滑稽さが介在するところがなんともツボ。読んだ時に「これって三島だよな」と思ってしまうほどドラッグやカルチャーといったバックボーンを見る感もあり、人物紹介なんかはまさにクライムムービー的な部分を孕んでいる気がする。

とまあ、三島の幅の広さを感じさせ、バラエティに富んだ面白さを堪能するには打ってつけな作品になっているんじゃないでしょうか。

では。

10追憶は「現在」の
31すべてをみてしまっても
42海への怖れは
69距離とは世にも
82少しも柔弱さのない
93罪はただ愛の中
128この世のあらゆる感情
135恋愛とか人生とかの
185四人の下駄の音が
198満佐子は他人の
268自分が本当にこれらを
305この世で驚くべきことは