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『デッドマン』— モノクロ映像と無彩色の美学が魅せる西部劇

『デッドマン』


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ジム・ジャームッシュ監督がジョニー・デップを主演に迎えて描いたウェスタン。

19世紀、アメリカ西部の町マシーンにやってきた会計士ウィリアム・ブレイク。そこで、街の有力者の息子と花売りの娘の喧嘩に巻き込まれ、胸に銃弾を受けたブレイクは、殺人の濡れ衣を着せられ、そのまま追われる身となる。

追っ手から逃げる山の中でネイティブアメリカンのノーボディーと出会ったブレイクは、次々と襲いかかる敵をノーボディーとともに打ち負かしていくが……。

ダウン・バイ・ロー」でやり残したモノクロ撮影をとことん追求したかったというジャームッシュ監督がふたたび撮影監督にロビー・ミュラーを起用。

モノクロ映画への探求ということを主において撮影されたようなんですが、個人的主観としては削ぎ落とされたカッコ良さが際立つ。

最近は兎にも角にも”カッコ良さ”ということに主眼を置いた映画が観たくなっているんですが本作もそれが発端となり。

映画的な背景を考えるとそれこそ土着的な何かであったり、スピリチュアル的な何か、宗教的な何かがあるのかもしれないということは容易に想像できるわけですが、今回はそんなことも特段調べず、ただ”カッコ良さ”の観点から観たいなと。

まずモノクロの濃淡が素晴らしく、少し退色したような色合いでありながら、クリーンさも残るトーン。こういう淡いモノクロで、物体のエッジが立ってる画って好きなんですよね。

それからジョニー・デップがカッコ良過ぎ。

全盛期の破壊力凄いですよね。雰囲気ありつつも確実にど真ん中のカッコ良さも備えている。

スタイリングもお見事。

全員スタイリングにバックボーンと時代背景を感じさせるものになっていたし、色が無いということを前提に置いたようなパターンや小物使いがモノクロだからこそ際立ってくる。

色が無いからこそのスタイリングへの意識が感じられ、濃淡のメリハリで見せる良きスタイリングだなと。

エスタン系の映画って観てると確実にハットが出てくるし、なぜか無性に被りたくさせるんですよね。

ジョニー・デップが被っていた、上の部分が平らなハットというのも今の気分ですし、ヘンリーネックとチェックの合わせも控えめに言ってカッコイイ。

途中途中で格好がラフになっていくんですが、その過程というのも浮世離れしていくストーリー展開と重なり、道中、さまになっていく。

最終形態のファーコートみたいなの着た時の佇まいなども、風格含め、格好としても究極な感じでキマっているんですよね。

音楽的なカッコ良さも抜群で、どうやらニール・ヤングが映画を観ながら即興で演奏したらしいんですよ。

深みがありつつも重厚で乾いたサウンド

古びた街並みと砂漠や森といった景観が調和し、親近感を覚える。ざらついた質感を伴った音像というのはこういう世界観との相性が抜群なんですよね。

とまあカッコ良さに焦点を当てて語ってきたわけですが、内容としての印象はというとあくまでも詩的で情緒的な世界への埋没。

日常から非日常へと移る主人公、ジョニーデップの心情を察するに、死と共にある旅路というのはこうも儚く、幻想的なものに映るのかということ。

現実が些か切迫したもののように見えているが、その実、感情によって左右されているところが大きいと考えると、そうしたことから切り離された浮世感というのが、儚くも美しく感じるのはそこに真の生があればこそなのかもしれないとも思えてくるわけです。

では。