『エンゼル・ハート』
ウィリアム・ヒョーツバーグの小説「堕ちる天使」を、名匠アラン・パーカー監督が見事に映画化したオカルト・ミステリー。
1950年代のブルックリン。私立探偵ハリーの元に、サイファという男から高額の依頼が舞い込む。
それは、大戦後に失踪した人気歌手ジョニーを探してくれという内容のものだった。彼は早速調査を開始するのだが、行く先々で不可解な殺人事件が起こり……。
謎の人物サイファをロバート・デ・ニーロが怪演。
オカルト感あり、サスペンス感有りのこういう作品の雰囲気ってホント好きなんですよね。
個人的な原体験はツイン・ピークスでしたし、最近だとトゥルー・ディテクティブなんかもそう。
世界観が異色過ぎて非日常に埋没できる感覚が堪らんのですわ。
本作はアラン・パーカー監督作品ということで、その画作り、特にバチバチに決まった構図というのが実に美しく、これも映画のトーンと相まってバチクソにハマってましたね。
1987製作の映画と思えないほど、今観てもスタイリッシュ。
サウンドの効果も大きいですよね。トレバー・ジョーンズが担当しており、壮大でドラマティックなサウンドとシンセなどを組み合わせた音作り。映画世界と一体化していて実に良い。
画が有り、音が流れるだけで既にカッコ良いという。
そこに全盛期のミッキー・ロークとデニーロが出てくればそりゃね。
その俳優二人も良いんですよ。
ミッキー・ロークは私立探偵らしい出で立ちで、ラフさの中にこだわりを感じる部分があり、立ち振舞いがカッコ良い。
スーツスタイルをラフに着崩すっていうのも日常的に着ていればこそ出せるこなれ感で、それが役柄の雰囲気なんかからもビンビンに伝わってくる。
デニーロもそうで、怪演に相応しい役作り、登場から確実にヤバいだろうなという雰囲気満載で、最後までそれが継続するっていう。
その二人の掛け合いやを見ているだけでも楽しめますし、謎解きは徐々に解明されていくものの完全に納得するような解決はせず。
でも、世界に浸れればいいんですよ。
映画って非日常の世界に浸ったり、未体験の経験をトレースしてくれたりといった効果も重要じゃないですか。
その意味で舞台は1950年代のNYだったりにも関わらず、完全に一般の人達は関わることの無い世界の話なわけでして。
そんなどろどろとした血みどろでダークなアンダーグラウンドの世界。こういう世界観を見れるのはそれだけでも最高なわけです。
あとダイナーが出てくる映画ってのも好きなんですよね。
旧来のアメリカ然とした象徴としてのダイナー、日常的に使われるそこの雰囲気だったり、内装だったり、とにかくダイナー出てくると食事も美味しそうに見えるし、用が無くても行ってほしいと思ってしまう。
そういう全体の世界観ってのも大事なファクターなわけですよ。映画としては。
話は上っ面をなぞる程度で終わりましたが、実際の謎解きとしてはどうだったのか。
そこに楽しみを見出すも良し、世界観に浸るも良し、カルト作品と呼ばれる所以というのもこういう楽しみ方の多様性にあるのかと思いますので、まずは一度鑑賞してみるといいのではないでしょうか。
では。