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料理映画の真骨頂!『ディナーラッシュ』で感じるキッチンの熱気とミステリーのハーモニー

ディナーラッシュ

ポスター画像


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ニューヨークの人気レストランを舞台に繰り広げられる一夜の出来事を描いたスリリングな群像ドラマ。監督は、数々のミュージックビデオやCMを手掛けてきたボブ・ジラルディ。自身がオーナーのニューヨークに実在するレストラン“ジジーノ”でロケし、キッチンの雰囲気を臨場感たっぷりに再現する。

これまたなぜか暑い夜には熱い料理映画が観たくなる。

調理場にあるあの独特の熱気と活気ってなんなんでしょうね。

別に激しいアクションがあるとか、展開があるわけでもないのになぜかアツくなれるし、カッコいい。

自分が学生時代に調理場で働いていたのもこういった映画や漫画の影響だったことを今でも思い出すわけです。

ちなみに影響を受けた漫画は”バンビーノ”。これもまた読み返そうかな。

そんな本作なんですが、今観てもやっぱりカッコいいんですよね。

映画って当時見た感想から変わる作品も多い中、変わらず好きな映画っていうのもあるわけで、その意味でこれは変わらずカッコいいと思える映画でした。

90~00年代ってミニシアター系の作品が流行ったこともありますが、こういったセンスと見せ方で、ようは雰囲気重視で作られた作品が多かったですよね。

これが一周回って逆に良いなと。まあ全ての作品にそう思うわけではないんですけど。とりあえず本作はそれが最高に良く作用している。

まず冒頭から良いんですよね。

ちょっと悪くてアングラな匂い漂う食事シーン。

料理を真上から撮るショットというのもイタリアの食事を撮るとまた変わってくる。白い食器が映える、トマトベースの食事にナイフとフォーク。小綺麗に食べるわけでもなく、少々雑に食べる感じがたまらない。

そこからも完全にマフィア映画のそれな撮り方から、描き方。流れも予想通りなんですが、これはなんの映画でしたっけ。確か料理のはずでは。

そこからの唐突に見える場面転換から調理場に移り、混沌とした風呂敷を広げながら徐々に伏線を回収していく。

この展開と回収の仕方が料理の手際の良さとリンクして、観ているこちらとしてはコース料理を食べているような心地良さすら感じてしまう。

撮られている場所もほとんどがレストラン内なんですが、舞台となる”ジジーノ”が最高なんですよね。

これ実際に監督であるボブ・ジラルディがオーナーを務めるレストランらしいんですが、今もあるようで、是非行ってみたい。Gigino Trattoria (ニューヨーク シティ) の口コミ260件 - トリップアドバイザー

www.gigino-trattoria.com

そこで繰り広げられるのは人間模様を中心とした活劇であり、群像劇。

とにかく終始調理場、ホールの熱量が半端ないんですよ。画面越しに伝わってきますから。

時代的な背景もあるかとは思うんですが、統制されていない感じや、雑多な感じ、調理場やホールの粗雑な部分って今の管理されたやり方や場所の概念からは感じない、古き良き部分を感じてしまうんですよね。それこそが人の営みの原点であるような。

サービスであったり、繋がり、気遣い、こだわり、関係性、創造性、あらゆる営みのベースが”人”そのものにあって、それを支えるのは根幹である”食”であるという。

なんかこれくら人間味があっても良いのかなって思うんですよ。テクノロジーが発達してちょっと小綺麗になりすぎたなって。場所もサービスも。

物語の本筋としては特に何もないんですよ。

冒頭に起きる出来事の回収という意味ではあるんですが、それ以上に会話であったり、それぞれの生き様、みたいなものが観れるといったある意味での日常系。

それが抜群に面白いっていうんだから脚本も大したものです。

観れてしまう別要素として、画的なゴージャス感もある気がしますね。

別に綺羅びやかで派手なゴージャス感という感じではなく、あくまでも中身。人間と活気、料理を通したレストランの雰囲気そのものがそうであって、血肉が通っている血色の良い画作りなんですよね。

照明の雰囲気やトーンなんかも凄く艶やかで店自体の良さも際立つ印象。

途中トラブルで電気が付かなくなる演出時のホールの雰囲気であったり、調理場の雰囲気もそうですが、全てが一体となって生き生きしているレストランの様子が伝わってくるんですよ。

それが画的なゴージャス感の正体かと。

カメラもテンポ良く切り替わるんですが、このテンポも実に活気が伝わってくる。

調理場の抜き方も料理を料理を作る工程を寄り引き使い分け、音とともにダイレクトに観ているこちら側に入ってくる。

個人的に調理場の全体を横から抜いたショットと正面から俯瞰で横にスライドするショットってたまらんのですよ。調理場の調理場然とした雰囲気が一番伝わってくるショットというか。

そんな映像的な気持ち良さがある中、会話劇の面白さと魅力も同時にあるんですよ。

長過ぎない一つ一つの会話から、ぶつ切りにならずに繋がれていく感じも心地良く、これも料理のような連動性を感じさせる。

これが長過ぎたり、複雑過ぎたりするとまた印象は変わってくる気もするんですが、丁度いいんですよね。会話の長さも内容も。

料理と一緒で手を加えすぎても、加えなすぎても駄目なわけで、ようはバランスなんですよ。

そんなバランスが見事に取れた料理映画。

最後にはちょっとした物語上のどんでん返しもありつつ、これもまた当時のミニシアター系の良さを堪能できる構成になっているんじゃないでしょうか。

時代が変わっても変わらない良さもある。そんな当たり前のことにすら気付かせてくれる良さがある作品でした。まさに終盤の会話にある「復習とうまい料理はあとを引く」というのは言いえて妙なセリフかと。

では。