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夏を彩る青春映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の儚い美しさ

夏です。梅雨はどこに行ってしまったんでしょうか。

ということもあり、夏らしい作品が観たくなりまして。

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(1993)』

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小学校最後の夏休み、プールの掃除当番ため登校していた典道、祐介、なずな。祐介は、典道に水泳の競争で勝った方がなずなに告白するという話をもちかける。

「Love Letter」「花とアリス」の岩井俊二が当初TVドラマ用に制作した本作は、TVドラマとして初の日本映画監督協会新人賞を受賞する快挙を成し遂げ、のちに同監督作品「Undo」とともに劇場公開された。

主演は奥菜恵山崎裕太。

改めて45分で完結していたことに驚いたんですが、岩井俊二監督らしい美しい画でした。

そして何と言っても奥菜恵演じるなずなが神々しいんですよ。年齢を調べたら当時16歳。小学生には見えないものの、それでも大人びている。

特に私服に着替えた時のカットの可愛さといったら。

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”冒険×青春×恋愛”といえば浮かぶ映画やドラマは数あれど、これだけコンパクトで美しい物語はあまり無いような気がしますね。

物語的には有って無いようなものなわけで、正直内容が詰まっているかと言われればそこまで。

スタンドバイミーよろしくな小冒険。

打ち上げ花火について”横から見るとどう見え、正面から見るとどう見えるのか?”というある意味でくだらないけど実に小学生的な冒険のきっかけに端を発する。

小学生ならではのものでありつつ、それ故に冒険の革新をついてはいるんですよね。

あれくらいの年齢ってくだらないことを大真面目に、気楽に探求するじゃないですか。

でも、実はそれが行動を起こす根源の本質だったりするわけで、それに気付くのははるか先の大人になってからというのも皮肉なものですが。

そうした青春の甘酸っぱさが恋愛模様にも現れ、ノスタルジーとともに花火の儚さと重なっていく。

本作は物語以上に映像美っていうのが見どころだと思っていて、岩井監督十八番のハレーションだったり、ピントの緩さだったりが、映像的なノスタルジーと非常に相性良くリンクしてくる。

夏が来たなと思わせると同時に夏の終わりを感じさせもする儚さ、花火という一瞬の光の儚さ、恋愛という儚さ、若さという儚さ、様々な儚さを経験し、成長していくんだなと思うと、それすらも儚い感情なのかと思えてくる。

ifの世界線はそこまで機能していたとは思えませんが、これも岩井監督ならではの定番かと。

この作品で特に目を奪われるのがプールでのワンシーン。

なずなが何気なく言う「墨汁にも似た」というフレーズもそうですが、詩的な雰囲気や感情を抱くというのも岩井作品の好きなところ。

あのシーンの美しさは映像だけの美しさでは決して語れない、時間的制約の中でのあの時間、あの演者たちがあってこそのもの。

それを最大限に光でブーストし、空気感を画に纏わせる。その画的な幸福感と神秘性がどの岩井作品にもマストな気がするんですよね。

それこそが甘酸っぱさを超えた素晴らしい映像美。

こういう思い出をたくさん積み上げるために経験や人との繋がりがあるのかなと思うと日々の営みも捨てたもんじゃないですよね。

いつの時代にも”今”があるわけで、それを蔑ろにしないことが感覚的な豊かさを失わないために必要なのかもしれません。

本題の花火の見え方ですが、正直それについてはそれぞれの解釈によるところが大きいかと。

極論ですが、個人的にはそれどうでも良くて、むしろそれを疑問に思う気持ちやその疑問へ至る道程のほうが重要なことな気がします。

なんだって気付きから始まり、気付きに終わる。そもそも花火の正面はどこなのか。見る場所や状況に寄って見え方は違えど、刻まれる美しさや思い出のほうが重要でしょと思ってしまう。

そんな一瞬の儚さを花火になぞらえ、それの見え方を思索する。

夏にちょっとした冒険をしたくなります。

では。