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ゼンデイヤ主演『チャレンジャーズ』:テニス×恋愛が織りなす情熱のドラマ

『チャレンジャーズ』ポスター画像


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君の名前で僕を呼んで」「ボーンズ アンド オール」のルカ・グァダニーノ監督が「DUNE デューン 砂の惑星」「スパイダーマン」シリーズのゼンデイヤを主演に迎え、2人の男を同時に愛するテニス界の元スター選手と、彼女の虜になった親友同士のテニス選手の10年以上にわたる愛の物語を描いたラブストーリー。

テニス選手のタシ・ダンカンは確かな実力と華やかな容姿でトッププレイヤーとして活躍していたが、試合中の怪我により選手生命を絶たれてしまう。選手としての未来を突然失ってしまったタシは、自分に好意を寄せる親友同士の若き男子テニス選手、パトリックとアートを同時に愛することに新たな生きがいを見いだしていく。そして、その“愛”は、彼女にとって新たな“ゲーム”の始まりだった。

「ゴッズ・オウン・カントリー」のジョシュ・オコナーがパトリック、「ウエスト・サイド・ストーリー」のマイク・ファイストがアートを演じた。

終始アッパーが過ぎる。

予告からして想像通りではあったんですが、この作品は絶対に映画館で観たかったんですよね。公開されると意外にも上映館数が少なくて、これは早めに行かないとより上映数がいっそう減りそうだなと思い、早速。

そんな感じで観てきたんですが、やはり映画館で観るのがベストだなと。

それにしても海外との温度差というか、これだけ面白い作品がこういう扱いというのが疑問しか無いんですよね。

4月26日~28日の北米週末興行収入ランキングで、『チャレンジャーズ』は初登場No.1を記録。

3477館で1501万ドルというオープニング成績はグァダニーノ監督史上最高であり、ゼンデイヤにとってもオリジナル脚本の実写映画では最高記録だ。週半ばには『君の名前で僕を呼んで』の1809万ドルを抜き、グァダニーノ作品として過去最高の北米興収となる見込み

これが今の日本の現状なのかと。

話は逸れましたが、体感として似ていたのが自信のマイベスト級映画「セッション」に一番近い高揚感を感じました。

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まず音楽を担当したのがトレント・レズナーアッティカス・ロス。ドライブ感あるテクノサウンドがとにかく癖になるんですよ。

特に表題曲のこれが癖になるし、気持ちアガるしで。

今までも彼らが手掛けてきたサウンドはソリッドでノイジーなものが多かった気がするんですが、今回は特に映像とのリンクが半端ない。

ナインインチ自体のサウンドを踏襲しつつ、バンドサウンドでも聴いたことないアッパーなテクノがやたら心地良い。こんなサウンドも作れるんだなというのがまずもって驚きでしたが完成度の高さが異常でしょと思わずにいられない。

それに呼応する形でのカメラワークもエゲつなかった。

サヨムプー・ムックディプロームというかたが撮影だったようなんですが、ホント斬新なショットが多く、単純に観ていて気持ち良いなと。スポーツの爽快感を良く表現するようなテンポ感が見事でしたね。

それから脚本も良かった。

ジャスティン・クリツケスという方が手掛けており、このテーマ、この見せ方でこの脚本を落とし込むのが凄いなと。どうやらこの片、「パスト・ライブス」で監督を務めたセリーヌ・ソンのパートナーなんですね。タイミング上映画館で観れなかった作品ではあったんですが、これまた気になっていた作品だったのでより、気になるという。しかもテーマが同じような三角関係っていうのも実に興味深い。

これも何かのタイミングで観たいですね。

これだけアッパーな作品だと脚本以上に、作品のドライブ感重視で構成されそうな気もするんですが、そういったスピード感は維持しつつ、深みのある、展開の面白い脚本が書けるという手腕に驚き。本作が脚本で映画初クレジットされたというのも意外でした。

いずれにせよそれらをまとめ上げるルカ・グァダニーノ監督の手腕が恐ろしい。

今までもそうでしたが、グァダニーノ監督って”身体性”や”愛”といったものを描くのが上手いと思うんですよ。

それを今回はこんな溌溂とした形で観ることができるとは。

本作では”テニス”という枠組みと”恋愛”というものをニアリーイコールで繋いで見せるというのが実に手の込んだ面白いギミックだなと。

確かに観ていて思いましたが共通項が多いんですよね。意外と。

相手に1ポイントも与えずに奪ったゲームのことをテニスではラブゲームと呼ぶっていうのもそうですし、作中でゼンデイヤ演じるタシが言う「テニスは対戦相手との関係性のこと」というのもまさにそう。

そう考えるだけでも似てますよね。

ただ、そういった抽象的な認識で終わることなく、それらを映像として表現しているというのがポイントで、テニスの躍動感や恋愛の情熱性や官能性、そういったものが見事に描かれているんですよ。

ラリー自体も最初は機械的だったものが、次第に息詰まる、手に汗握るものになっていく、と同時に恋愛ではラリーするかのように言葉を交わしあう。それにより両者とも気持ちが高まり・・・という近似感が演出されている。

そうなるとボールっていうのがなんなのかなと思っていて、これも序盤では客観的なショットで捉えられ、徐々に主観、最後にはボール視点のPOVみたいな感じになるじゃないですか。これって考えると言葉であったり感情であったりなのかなと。ようは相手に渡し、渡されるもの。それらのやり取りにより関係性が深まっていくっていう。

球を打つ時の音もそうですよね。印象的なほどの抜けの良い打音。これもまたテニスと恋愛の”熱量”交換だと考えると自然と音が鮮明になるわけですよ。相互にとって重要なものですから。

さらにそれらの上位概念としての”人生”というものも重ね合わせることで、より重層的で複雑なプロットにも見えてくる。

人生≒テニス≒恋愛

タシにとってはテニスが初恋であって、最も情熱を注ぎ、頼りにしていたものなわけだし、アスリートとしての選手生命は限りがあり、それもまた人生と酷似している。

ラストシーンがなぜあそこまで多幸感や興奮に満ちていたのかということを考えた時にふとそういう考えが頭をよぎったんですよね。

恋愛の時間的メーターが一番変動し、■■■

アスリートのメーターも次いで変動する。■■■■

そして最後に人生という限りあるメーターが加わり■■■■■

これらの■が三辺で三角形を構成する。

これが人物たちの三角形にも言えることで、タシを中心にパトリックとアートが二辺を成し三角形を構成されているじゃないですか。

そう考えると面白い構造だよなと。

構造で言うと時間軸をシャッフルしたプロットとの相性も良いなと。

話の本筋は直線的に進むんですが、構成としては蛇行して進む感じ。それにより一筋縄ではいかない人生、テニス、恋愛、といった全てを象徴し、登場人物たちの心情表現の揺らぎさえも感じるような複雑性を加味していく。そういった細かい部分も意図したにせよ、しないにせよ、とにかく興味深い細部が多いなと思うわけです。

そういったことを踏まえなぜあのラストがあんなにアガったのか。

人生にも恋愛にもテニスにも終わりがあってその過程で様々な呪縛もある。だけど本質的に必要で重要なのはその物事への”熱意”という一点に収束するんじゃないかと考えると、その熱意を取り戻したのがラストだったのかなと。

映画のスコアが鼓動のようなビートを示したように、心拍数が最高潮の時を身を持って体感させるラスト。

結局そういう単純な部分をシンプルな形で見せ、感じさせ、共感させる。

これこそが全ての原動力の源です。以上。みたいな感じでバスっと終わらせてくれるというのも実に気持ちが良いところでした。

主要人物3人も良かったですよね。

関係性、存在感、キャラクター。映画『チャレンジャーズ』公式サイト|絶賛上映中

特にキャラクターの部分での表現の仕方がバチッとハマった配役だなと思ってみていましたし、誰に感情移入するかの変遷も面白い。

見方によって色々と視点も変わってきますからね。

プロデューサーとしてゼンデイヤが関わっているとのことですが、彼女27歳にして才能爆発し過ぎですよ。

最近だとDUNEもそうですし。タシとゼンデイヤに重なるところがあるというのも観ていて面白いところではありました。

兎にも角にもアッパーでバキバキ感のあるサウンドとテンポ感、カメラワークの面白さや映像としての興奮そのものを楽しめばいい。そんな映画になっているのも映画ならではの部分じゃないでしょうか。

では。