こんなに面白いとは。
徳川家康ら、歴史上の人物にインスパイアされた「関ヶ原の戦い」前夜、窮地に立たされた戦国一の武将<虎永>と、その家臣となった英国人航海士<按針>、二人の運命の鍵を握る謎多きキリシタン<鞠子>。
歴史の裏側の、壮大な“謀り事”。そして、待ち受ける大どんでん返し。
SHOGUNの座を懸けた、陰謀と策略が渦巻く戦国スペクタクル・ドラマシリーズ。
GWに入り、なにか普段見れてないものを一気見しようと思い立ちまして、真っ先に気になっていたのが本作「SHOGUN 将軍」。
基本的に外国人が手掛ける時代劇モノというのはあまり好みでは無く、といってもラストサムライなどほどほどに好きな作品はあるんですが。
なぜかと考えた時、表現の違いによるところが大きいんだろうなとは思うんですが、外連味が目立ち過ぎ、壮大さが際立ち過ぎるとでもいいましょうか。ダイナミズムの認識が違うのかなと。
とりわけ、”荘厳さ”の表現がしっくりこない感じがして。
それがこの作品においては絶妙なスパイスとして機能していて、むしろ心地良い。
確実に海外視点で見た時代劇なのに、日本の良さ、精神性を汲み取っているような映像表現であったり脚本、構成。
見ると、トップガンマーヴェリックの原案を手掛けたジャスティン・マークスが製作総指揮を務め、主演の真田広之もロデューサーを兼務し、主演のかたわら、撮影現場での衣装や美術、殺陣などをコーディネートしているらしいじゃないですか。
それはそれは。
オープニングビジュアルの庭園を船で行くようなゲースロ感もあり、とにかく時代考証、美徳としての文化の捉え方が良く纏まっている。
別段歴史に詳しいわけでは無いのですが、そんな私ですら観ていて違和感を感じないような圧倒的世界観。
元々時代小説などはわりと好きな方だったんですよ。ですが、映像でここまで満足感が高い作品というのはそうないんじゃないでしょうか。
そんな感じで雰囲気として観ていても既に面白い作品なんですが、内容も抜群に惹き込まれ、抜群に面白い。
まず、観ているもののミスリードを誘うような脚本構成により、誰に感情移入して良いのか、どれが正しさへと導いてくれる人間なのかということが分かりづらいんですよ。
これが物語に蛇行を与えるようドライブ感をもたらし、短絡的な道筋にならず、観ているこちらも試されているような脚本になっているんです。
普通の時代劇だったりすると、それってある意味明確じゃないですか。悪にしても善にしても。よくある、士道とはこういうものとかもそうですし。
それが全く無く、見ようによって、タイミングによって、視点によって変わってくる。だからこそ、揺さぶられるんですよ。
個人的には時代劇に求めているのって”生き様”なんですよね。良くも悪くも人間味がどうなのかという、人としての様が見たいんです。
その見せ方がとにかく上手い。
宗教であるとか、時代背景、性別や年齢、地位、そういったあらゆる観点からの絶妙な駆け引きがある中で、全体像を見せ、個別の人物としての様を見せてくれる。
そして、それらを存分に引き立ててくれているのが演者なんですよ。
バチバチにハマった役が多く、配役がまずもって素晴らしい。毎回誰かにハッとさせられる感がありますし。
あくまでも全員最高というのは前提として、個人的に一番痺れたのが「鞠子様」。
演じているのはアンナ・サワイさんという、ニュージーランド出身で海外にて活躍されている日系人の方なんですが、抜群にハマり役でカッコいい。
生き様が一番凛としており、時折見せる弱さの部分には人間味もあり、それを体現できているということが素晴らしいんですよ。
物事の考え方も良く表現されており、鞠子様がどういった人物像なのかということが良く伝わってくるんです。
いやぁ、カッコ良かった。
序盤からの成長過程というのも魅力的で、徐々に自分という人間の本質を取り戻していく過程、葛藤、”生き様”という意味での強度が強固で、自分の背筋も正さなければと思わせてくれるほど、とにかく魅力的な人物として描かれ、良く表現されていました。
いずれにせよ、海外ドラマにおける時代劇部門ではかつて無い満足感に満ちた作品だったのは間違いなく、ホント観てよかった。
なんか時折感じるんですが、悪い部分を直視した上で、日本人で良かったと思える精神性の部分って軽視しが地だと思うんですよね。
でも、そういった日本人であるが故に必要な”日本の善き部分”にフォーカスすることも自分の中で重要な視点なんだと改めて思わされた次第であります。
世界観の構築、物語性の引き、人物表現の豊かさ。
そういった”物語”というものを楽しみたい方は絶対に観たほうがいい作品な気がします。
満足感は存分にあるものの、10話とコンパクトに纏まっており、1話も大体60分程度なのでサクッと観れるかと思いますので。
是非。