史上最大の駄作としてカルト的人気を集めた映画制作自体を映画にしてしまうという発想がまず興味深い。
「カルト映画制作秘話に迫るドキュメンタリー?と思ってしまうほどの完成度『ディザスター・アーティスト』」
そんな感じで観始めたんですが、きっかけは好きな漫画家、魚豊さんのこの記事から。
どんな映画なのかと思って観始めたんですが、これがまた面白いんですよ。たっだのドキュメンタリー作品に終始していない存在感。
まず映画内映画としての「ザ・ルーム」という作品が気になり過ぎる。史上最大のカルト作品ってどういう作品なのかと。
ジェームズフランコ監督作品ということもあって、より興味深かったんですけど、とにかく全てがメチャクチャな作品だなと。
もちろん、この映画自体がではなく、作中扱われている「ザ・ルーム」という映画そのものがなんですけどね。
映画ってあくまでも相対的な芸術物であって、観る人にその具体的な感想は委ねられてるじゃないですか。
でも、監督や脚本家には当然意図があるわけで、そうじゃないと普通は映画として成立しないと思うんですよ。
仮にその作品に物語的なプロットが見出せなかったり、観て感じることしかできない映画であったとしてもですよ。
なんですが、「ザ・ルーム」の制作にはその意図を全く感じないんですよ。
そんな映画あります?
制作過程を見ても、監督の振る舞いを見ても、監督の考えを読み取ろうとしてもなお、何も見えてこない。
ある意味凄いですよね。それを一つの作品にしちゃうってことが。
とまあこれだけだと本作自体もとんでもないドキュメンタリー作品になってしまうと思うんですが、それだけで終わらなせず面白く仕上がっているのは「ザ・ルーム」の監督であり、本作の主人公、トミーのぶっ飛んだ人柄もあるのかなと。
やっぱり普通な人が多いからこそ、風変わりな人は面白く感じられるし、興味が湧いてくるものじゃないですか。
そりゃ好き嫌いもありますよ。
でも、普通より変わっている方が絶対に面白いじゃないですか。日常でも。
そんな人柄をただただパッキングしたような作品が本作。
とはいえそれだけでも面白くなるわけでも無く、個人的には青春映画的な面白さもあると思うんですよね。
なんていうか初期衝動に任せて突っ走る感じといいますか、駆け抜けるカタルシスとぶっ飛び過ぎて笑えるコメディ要素もあるというか。
いちいち行動が斬新なのと、そういった諸々の切り取り方に無駄が無い。
だからこそテンポ良く見られて、飽きないんですよ。
そして、鑑賞後に爽やかさな後味が残るという。
特に最後のプレミアム試写の場面でのシークエンスなんて、なんかちょっと感動すらしちゃいましたもん。
関わる人の熱量、なんだかんだでトミー自身も映画であったり、役者であったり、友であったりといったものを必要としていた。
だからこそ最終的にはああいう結末を迎えるんだと。
その後カルト化したという「ザ・ルーム」を考えても、見えない映画の魅力があったからこそ、そうなれたんだろうなと。
トミーとグレッグ、その他含めた人間関係と映画というものの本質的な面白さ、そんな違った角度からの気付きに満ちた作品でした。
機会があれば「ザ・ルーム」自体も観てみたいところです。まあこれは映画館で観たいというのが心情ですが。
では。