「【松田龍平×沖田修一】日常の観察から見えてくる機微に気付かせてくれる『0.5の男』」
主演・松田龍平、監督・沖田修一によるオリジナル脚本ドラマ!新時代の家族の姿を温かな目線で描くホームドラマがWOWOWに登場する。
自由気ままな生活を送る実家暮らしの40歳のひきこもり男が、家の建て替えをきっかけに妹家族との「2.5世帯住宅」に住むことに。2世帯にプラスされた“0.5の男”は、家族のゴタゴタに巻き込まれ、外の世界に放り出され、少しずつ新しい自分になっていく。
主人公・立花雅治役を演じる松田龍平は、“身近にこんな人がいるかもしれない”と思わせるほど演技が冴えわたる。共演は臼田あさ美、白鳥玉季、木場勝己、西野七瀬、風吹ジュン。監督と脚本を務めるのは、映画『南極料理人』(2009)、『横道世之介』(2013)、『さかなのこ』(2022)などを手掛けた沖田修一で、主演の松田龍平とのタッグは2016年公開の映画『モヒカン故郷に帰る』以来7年ぶりとなる。
80代の親世代が50代のひきこもりの子を抱える「8050問題」が顕在化する現代社会。その前夜に位置する主人公“0.5の男”は、果たしてどのような生きざまを見せるのか?笑って泣ける家族の物語が、繰り広げられる!
沖田監督のドラマとあって期待していたんですが、期待通りのゆるさとほっこり具合。テーマ設定は重くもなりがちながら、全くそれを感じさせないスッキリとした展開。
なんかこれが良いじゃなくて”これでも良い”って思わせてくれるところが沖田作品には詰まっていると思うんですよね。
現代の多様性って、言ってしまえばなんでも通ってしまうわけですし、逆に言えば雁字搦めでなにも出来なくなってしまうともいえる世の中。
その間を取ったような上手い具合の解決策みたいなものを丁度良い形で見せてくれるからなんだかホッとするんでしょう。
あと、やっぱり松田龍平は年々こういう役柄がハマってきてますよね。他の演者さんも全員良いんですが、特に松田龍平がハマり過ぎて。
個人的には「まほろ駅前多田便利軒」くらいからこういったテイストのゆるい役柄がハマってきた気がしているんですが。
本作は5話と観易い話数に収まっているというのも良いですよね。それでもしっかりと話を畳めていますし。
この作品、凄く良かったなと鑑賞後に思えた部分があって、”人間関係はちょっとのズレ”というところなんですよね。
険悪になるのも、仲良くなるのも、好きになるのも、嫌いになるのも。
結局それを突き詰めると本人の気持ち次第、振舞い次第的な部分が大きいとは思うんですが、心持ち一つで見える世界は変わってくる。
その辺の表現と広がりをコミカルに、それでいてほっこりと描いている本作というのは素晴らしいですよね。
ちょっと伊坂幸太郎的な仕掛けじみた面白さなんかもありつつ、毎話癒されました。
撮り方の面白さっていうのもあって、家の内部を撮る時に、時折横からの断面図のような形でフラットに撮るんですよ。
これがどこかアリの巣を見たりするような視点で、観察的。
人という生態そのものを俯瞰して見せられる生物的な視点があり、どこか感情の無い、観察的な視点で生活を見れるんですよね。
確かに人の生活って感情があるから関係性にも繋がっているわけで、その感情をまっさらにしたらそれはただの生態という事実になってしまう。
感情、そこがあるから面白いし血が通っているんだと思わせてくれるような気がして、なんかその見せ方も好きでしたね。
しかもそれが最後にある意味ネタバレされるわけですし。
とまあ色々あるようで何も無いような日常の観察。
肩の力を抜いて観るには最適な作品じゃないでしょうか。
では。