「クリスマスの夜にティム・バートンのゴシックな世界に酔いしれる『バットマン リターンズ』」
ボブ・ケイン原作の同名アメリカン・コミックスの映画化第2弾。クリスマス間近のゴッサムシティに、再び悪の手が迫っていた。
怪人ペンギンと、復讐に燃えるキャットウーマンが、バットマンに立ちはだかる。
前作同様、監督は「シザーハンズ」のティム・バートン、バットマンを演じるのはマイケル・キートン。共演に、ダニー・デビート、ミシェル・ファイファーなど。
やっぱりダークでゴシックな世界観はこの人強い。
久々にクリスマスということで観たんですが、世界観が完璧。
クリスマスの夜って、ハッピーなのも良いんですけど、これくらい別世界に埋没できるってのも良いんですよ。
1992年に制作され、それでもこの作品の世界観を堪能できるというのは、それだけ練られた作品であって、独自のテイストがあればこそという、こだわりの宝庫だからこそなわけです。
この時代にこういった表現ができる凄さってのは監督の異常なこだわりは当然として、作り込みがとにかく凄い。
そんな背景はほとんどがマットペイントによるものとのこと。
ちなみにマットペイントとというのは
映画製作におけるマットペイントは、実際のセットやロケ地を拡張し、背景や環境をリアルに描写する技術です。特殊効果やCGと組み合わせて使用され、物語の舞台を広げ、ファンタジー要素を表現します。
歴史的な再現や製作費の節約にも寄与し、手描きやデジタル技術を用いて様々なスタイルが生まれます。総じて、マットペイントは映画制作において欠かせない技術で、視聴者を物語に没入させる役割を果たしています。
これがこの全てがゴシックに統一され、独特なゴッサムシティの表現に寄与しているわけですね。
そういった世界観を堪能しつつ、この世界では正直全員が狂っていると思うんですよ。
特にキャットウーマンなんて、それに至る経緯や立ち位置なんかも謎すぎますし、行動原理も理解不能。
バットマンもそういう部分はあって、けれども、それが二重人格的な別側面としての人格として考えると非常に腑に落ちると言いますか。
人の明の部分にスポットを当てるだけじゃなく、暗の部分にスポットを当て、誰しもが幸せなクリスマスにそれをぶつけてくるっていうわかるようなわからないような。
これがぶっ飛んでますし、それこそが狂気、それこそが人の隠れた真意なのかもなと。
誰だってそりゃ楽しく過ごしたいですけど、環境や状況、生い立ちや社会的な立ち位置によってはそうもいかないことだってあるわけですよ。
そうした、濃密に圧縮された明と暗の対比こそがこの映画の魅力になっているのかなと。
あとは忖度の無さですよね。
正義だからって、一様に正義にもならず、悪だからって極悪な側面だけで出来ているわけじゃないっていう。
危ういバランスで保たれているからこその感情原理なんだろうなと。
バートン作品にありがちなカメラワークも寒々しい中には非常に好きなところで。まるで飛んでいるような画面を左右に振りながらのカットであったり、少しモヤが掛かったような映像も非常にファンタジックで昨日世界との相性バツグン。
ようは世界観を楽しむ映画なんですよね。個人的には。
冒頭の雪が降る町並みの感じに始まるそこからの流れも申し分ないくらい引き込まれますし、なんか建物なんかも元々のゴッサムを知らないのにゴッサムシティっぽい。
ペンギンが乗っている変なアヒルの乗り物も単純に見入ってしまいますし、バットマンのバットモービルも今とは違う前方長めのスポーツカー的な佇まいが逆に格好良く、黒光りの感じや運転席の計器の感じ、変形や、そのエフェクト音の感じなんかも非常にカッコいいんですよね。
とにかく出てくる衣装、美術、世界観の構築のお手本のような作品なので、クリスマスに是非一度は観てみてほしいところです。
では。