「恐怖と気持ち悪さの境界を揺さぶる『呪怨』」
惨劇のあった一軒家に関係する人々に降りかかる怪現象の恐怖を描いた、OVホラー・シリーズの劇場版第1作。
監督・脚本は「富江 re-birth」の清水崇。撮影を「黄泉がえり」の喜久村徳章が担当している。出演は「インフィニティ∞波の上の甲虫」の奥菜恵、「黄泉がえり」の伊東美咲、映画初出演の上原美佐ら。
今観ても怖いし気味悪い、要所要所での嫌な感じが詰まり過ぎてるんですよ。
久々に観たんですが、冒頭からすでに嫌な感じがするなと思う画のトーン。そこから物理的な汚さを感じるような小物が出てきてより一層嫌な感じにブーストを感じる。
シーツであるとか布団、床やゴミなどといったものがそうで、単に汚いと言うよりも、それ以上に嫌な感じがするんですよ。
清水監督はこういう小物や美術で気味悪い、嫌悪感を誘うような演出がマジで上手いなと思いますよ。
嫌悪感における嫌味と、恐怖感による嫌味が合わさって、変な気持ち悪さに昇華されるといいますか。なんなんでしょうね、この感じは。独特な嫌さ。
あとキャラ作りも抜群ですよね。
伽椰子もそうですし、俊雄もそう。
少ないキャラクターなのにインパクトが有りすぎるし、そのわりに背景やキャラ自体の描写は少なめで、あくまでも印象にだけ残るような描き方。
バックボーンとしての情報が少ないからこそ、人は対象に怖さを抱くと思うので、その 辺も上手いなと。
観始めはそもそもどんな感じの構成だったか忘れており、途中まではオムニバス形式だということも抜け落ちていたんですが、そのリンクした構造も妙な引っ掛かりがあって、それもいい感じに気味悪く交錯していくんですよね。
SEの使い方もそうで、新作でもそうだったんですが、音の大小や周波数域、人が嫌だなと感じるツボをわかっている作りで、わかっているのに嫌なんですよ。なんか気持ち悪いというか、生々しいというか。
物語自体はオムニバスに各人の視点から徐々に紐解かれていくわけですが、その過程における演出によって、恐怖の予感に苛まれていく。
ハッキリ言って今見るとギャグに見えてしまうところや、やり過ぎでしょと思う部分も多々あると思うんですが、それを考慮してもビビってしまう。
そんな必然性があるところも不思議なもので。
出てくる幽霊に関しても過剰過ぎるメイクに過剰過ぎるビジュアル。でも怖いんです。知っていても嫌だと思ってしまうんです。
恐怖演出もそうで、SEであったり、カメラワークでなんとなく何か起きそうな感じはわかるんですよ。
それでも驚かされるというか、怖がれるというか。
カメラワークも巧みですよね。
カットの割り方が変な余白を残していたり、重なっているところからの表出だったり、この間の使い方が上手いからこそ、観ているこちらとしてはお化け屋敷を歩いているような、四隅にまで感覚を研ぎ澄まして注意を払わないといけない感じを強いられる。
思わず日常でも気になってしまうような、家の中での嫌な部分を付いてくるところも清水監督ならではで、観終わったあとは自分の家の色々が気になること間違いなしです。
とりあえずJホラーの金字塔なのは間違いないと思うので、今からでも是非観てみることをオススメします。
まだ暑いうちに是非。
では。