「音楽と闇の邂逅:映画『ミンナノウタ』が紡ぐ衝撃的な恐怖の旋律」
ダンス&ボーカルグループ「GENERATIONS from EXILE TRIBE」のメンバー7人が本人役で主演を務め、「呪怨」「犬鳴村」の清水崇監督がメガホンをとったホラー。
人気ラジオ番組のパーソナリティを務める「GENERATIONS」の小森隼は、ラジオ局の倉庫で「ミンナノウタ」と書かれた古いカセットテープを発見する。その後、小森は収録中に不気味なノイズと少女の声を聞き、行方不明となってしまう。事態の解決を急ぐマネージャーの凛は、元刑事の探偵・権田に捜査を依頼。メンバーたちに話を聞くと、彼らもリハーサル中に少女の霊を見たという。やがて霊の正体は「さな」という女子中学生であることが判明するが、彼女が奏でる呪いのメロディによって恐怖の連鎖が引き起こされていく。
「GENERATIONS」のメンバー全員が本人役を演じ、彼らの活動の裏側や日常風景も織り交ぜながら描き出す。マネージャー・凛役で早見あかり、探偵・権田役でマキタスポーツが共演。
完全にアイドル映画だと思っていたんですが、予想以上に評判が良かったので、観に行ってきました。
序盤の数十分は実際にアイドル映画的なそれですし、内容的にも少々退屈するようなゆったり展開。
ですが、ある場面を皮切りにとんでもない恐怖映画に変わっていくから正直度肝を抜かれましたね。
まずもって自分はGENERATIONSのメンバーを知らなかったわけですが(個別には何人か知っている程度)、同じ状況をマキタスポーツ演じる探偵が体現してくれている。ここに共感と共鳴が生まれるわけですが、この構図自体が中々良いんですよ。
アイドルと探偵、ホラー、学校、カセットテープ。
相性が良いものがふんだんに盛り込まれ、その関わり方や使い方も実に上手い。
特にカセットテープの使い方が見事で、自分なんかのようなアナログ、デジタル過渡期にあった世代としては懐かしさもある。VHSビデオの砂荒らしや映像の乱れに怖さを感じたように、カセットにもアナログ独特のざらついた表情があり、だからこそ怖さを感じるんですよ。
逆再生のくだりもそうで、改めて聞くと逆再生って、変な音が入っていなくても、それだけで怖いというか、気味が悪いというか、とにかく不快な感じがするという。
このミンナノウタというタイトルの意味もそうですし、それをテープに吹き込むという発想やオチまで含めると、テープだからこその怖さが一層際立っていますよね。
この映画、清水崇監督の十八番を詰め込んだ映画ということも言えると思うんですが、まず、あのシーンですよ、ある場面を皮切りにといった例のシーン。
このシーンはマジでビビりました。
セリフというか、お母さんが言う「さな~、いい加減自分の部屋くらい掃除しなさい!すいません、お恥ずかしいところをお見せして」のくだりも頭から離れないですし。下手したら口ずさみがちなミンナノウタ以上にトラウマになりそうなほど。
鑑賞中に学生も多く、ちょっとしゃべりながらふざけていた学生が数名いたんですよ。その学生もこのシーンからちゃんと黙って観ていたことを考えても、相当ビビるシーンではあるなと。
これは観てもらって体験してもらうのが一番だと思うんですが、スクリーンで見た方が迫力、音響、閉塞感、これらが網羅されているわけで、だからこそ絶対に劇場で観てほしい。
あのタイムループと嫌な感じの混在加減、まさかの展開が今思い出してもぞっとしますね。
そこからも怒涛の演出やにおわせに畳みかけられるわけですが、やっぱり清水監督はこういう映画の方が向いるような気がしてしまいます。
家というモチーフもそうなんですが、なんか嫌な感じの演出が多いですし、タイムコントロールや音の使い方もハマっているんですよ。
時系列がバラバラになっているからこそ出来る怒涛の追い込みだとか、伏線の張り方、回収の仕方までの流れがJホラーらしい作り込みを感じさせ、怖さが継続したままドライブしていく。
音響の部分で言うと、逆にアイドルグループをキャストしていたことが良く働いていてたと思っていて、そのリリース曲とミンナノウタの対比であったり、無音との対比といったような感じで、緩急があり抜群に怖さを助長してくる。
現実と音楽プレイヤーでの音のカットバックも凄く煽ってくるんですよ。気持ちを。
あと、純粋に高谷さなが怖い。
最初はそこまででも無かったんですが、知れば知るほど、映れば映るほど、恐怖が増幅してくる。序盤こそ不遇な幼少期によるものなんだろうなとか思っていたものの、その考えもどんどんひっくり返され、さなそのものの怖さにも浸食されていく。
終盤での高谷家におけるさなの諸々でピークを迎えるわけですが、この場面も中々面白い作りだなと。
まあ要するにどこを切り取っても不気味かつ不穏な感じがあって、伏線に対する気遣いもかなり手が込んでいるなという印象なわけです。
どことなく引っ掛かりを感じる箇所に関しては絶対に何かある。そう思って間違いないくらい、良く練られていると思いますよ。
アイドルmeetsホラー。この相性の良さを改めて感じつつ、ちょっと呪怨でも観返してみようかなと思っています。
では。