「サーフィンの魅力と人間模様が見事に融合『ライフ・オン・ザ・ ロングボード 2nd Wave』が贈る激夏映画」
定年後にサーフィンに目覚めて種子島に移住した中年男性の第2の人生を、大杉漣主演で描いた「ライフ・オン・ザ・ロングボード」の続編。
一流サーファーとしての実力がありながら、生来の性格が災いして湘南の住居も追われてしまった梅原光太郎は、かつて自分を愛弟子のようにかわいがってくれたサーファー・工藤銀二を頼って種子島にやってくる。
しかし、銀二はすでに亡くなっており、娘の美夏が銀二のサーフショップを切り盛りしていた。
無一文の光太郎は美夏に邪険に追い払われてしまうが、光太郎の眼前には鉄浜海岸の美しい海が広がっていた。
光太郎役を「エキストランド」の吉沢悠、美夏役を「黒い暴動」の馬場ふみかが演じるほか、香里奈、泉谷しげる、大方斐紗子、竹中直人らが脇を固める。前作から引き続き、喜多一郎監督がメガホンを取る。
ホントはこちらの2ndシーズンがプライムのおすすめで出てきていたんですが、どうせならということで前回のものから鑑賞していたんですよね。
率直に言って前作より格段に良い。
当然ながら個人差があるとは思いますが、全てのクオリティにおいてこっちの完成度が高い、と思ってしまいました。
まず映像のクオリティが段違いですよね。空撮にしろ、サーフシーンにしろ、風景の切り取りにしろ、美しい種子島の情景が忠実に切り取られている。
これに関しては技術的な進歩が大きいと思いますが、これだけでもこういう映画は映えるんですよね。
さらにストーリー構造的にもチャプター的に色々な段階を描きつつ、嫌みにならない感じで、収束していく納得感がある。
特に老人たちとの交流を通してのサーフィンに対する姿勢、果ては人生に至る理解みたいなものは胸に迫るものがありましたね。
サーフィンってやる前はただのスポーツだと思っていたし、なんならチャラチャラしたイメージしかなかったんですよ。それがやってみると全く異なり、自然との対峙、生きている実感、メンタルへの影響、人との関り、ローカルへのリスペクト、日常への心持ち。
そういった生きる上でのベースとなる要素が揃っているなと。
生活で起きる事象が些細なことに思えるというのもありますし、もう少し大きい枠組みで捉えられることが出来るようになり、心が豊かになる感じですかね。
その辺が良く描かれているなと。
何といってもこの映画で一番驚かされたのが俳優の吉沢悠さんですよ。
学生時代にはドラマや雑誌などでもよく見かけたし、カッコいいなと思っていたのにいつの間にかフェードアウト。
最近また出だしたなとは思ったんですが、一時休業していたんですね。
本作は2019年公開の作品なんですが、この時でも30代後半。
どうせサーフィンシーンはギリギリのところでカットを割ってスタント任せなのかなと思っていたんですよ。
そしたら自らやってるって。
驚きですよ。まずサーフィンできるの知らなかったですし、しかもメチャクチャ上手い。
20年もやってたらしいです。それは上手いわけです。
これにより、サーフシーンの良さが格段に違うし、映画全体の説得力がぐんと上がる。正直痺れましたね。
演技に関しても序盤のホントにダメな感じというか、サーフィン以外への関心が薄い様子が良く出ていましたし、表情なんかからも伝わってくるダメ男感。
この辺も見事でしたね。
そこからもありがちな急変でなく、徐々に変化していく様が描かれていたのも好感できるし、何より自然さを感じるんですよね。
前作同様脇を固める役者も素晴らしく、香里奈なんかも良い味出してましたね。
とにかく前作以上にサーフィンを通しての人間模様が描かれており、それらをリアルに体現する説得力ある映像と技術、そこに人生への問いが散りばめられた作品となっており、かなり楽しめました。
ちなみにタイトルの意味に途中から気付いた時、さらにやられた気がしましたね。
それでは。