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過去作とは異なる面白さとエモーションを刺激するサウンドの極致!『PLASTIC』

「PLASTIC」

ポスター画像


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大和(カリフォルニア)」「TOURISM」などで国内外から注目を集める宮崎大祐監督が、幻のアーティスト「エクスネ・ケディ」による1974年ライブ音源アルバム「StrollingPlanet’74」をモチーフに撮りあげた青春映画。

2018年、名古屋。1970年代に世界を席巻するも瞬く間に解散したアーティスト「エクスネ」の音楽を愛するイブキは、同じくエクスネのファンでミュージシャンとして東京進出を夢見るジュンと出会い、恋に落ちる。2人の出会いから、その4年後に東京で開催されるエクスネ再結成ライブまでの日々を描く。

「あいが、そいで、こい」の小川あんがイブキ、俳優のほかミュージシャンとしても活動する藤江琢磨がジュンを演じ、小泉今日子鈴木慶一とよた真帆尾野真千子らが脇を固める。「エクスネ・ケディ」こと井手健介が本作のために結成した「PLASTIC KEDY BAND」が音楽を担当。

まずね、音楽が最高なんですよ。

エクスネ・ケディというバンドをモチーフに作られた映画ということもあるんですが、正直前情報入れなかったこともあり、バンドや音楽については何も分からずに鑑賞。

実際存在するのか、架空のバンドなのか。それなのに一聴してハンパないと思ってしまうほどの圧倒的存在感と音圧。

どうして青春と音楽はこうも相性がいいのか。

それをストレートに感じさせてくれる抜群の青春映画。

作中で流れてくるこの楽曲にまずやられるわけです。

宮崎監督って、どの作品もヒリヒリしたような質感だったり、手触りのあるような映像が魅力的だなと思っていたんですが、本作は段違いでその生々しさを感じさせてくれる。

それは映像的にももちろんだし、サウンド的にも、ストーリー的にも。

そのサウンドなんですが、どうやらミュージシャンたちからの絶賛の声も多いようで。

数多くのミュージシャンがその才能を賞賛してやまない、井手健介率いる井手健介と母船が、ファースト・アルバム『井手健介と母船』(2015年)発表以来、約5年ぶりとなる待望久しいセカンド・アルバムをリリース! しかし、届けられたそれは、誰もが予想だにしなかった官能的でセンセーショナルなコンセプト・アルバムとして結実していた。

クラシック・ギターをベースに、幽玄極まるサイケデリックサウンドを展開していたファースト・アルバムから一転。本作『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists(エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』は、サウンド・プロデューサーにゆらゆら帝国OGRE YOU ASSHOLE等を手がけ、23年ぶりのソロアルバム「formula」を発表したばかりの石原洋、レコーディング・エンジニアに中村宗一郎(PEACE MUSIC)を迎え、デカダンスの香りを纏うグラマラスで摩訶不思議なロック・アルバムとして登場した……!

“Exne Kedy And The Poltergeists(エクスネ・ケディ・アンド・ザ・ポルターガイスツ)”なる架空の人物をコンセプトに、井手健介と母船が今、衝撃的変貌を遂げる。

謎の「エクスネ・ケディ」とはいったい何者なのか!? そして、本作録音参加者さえも一聴してにわかに信じ難かったという「まさか!」の連続!

個人的には坂本慎太郎が好きな人は確実に好きだろうなと思うような変態サウンド。カオティックでサイケ、なのに歌詞だったり声だったりと、綺麗な要素が混在しているから不思議と心をつかまれる。

そんな楽曲をモチーフに作られた作品なんですが、また、その設定とトリッキーな脚本が見事で、サウンドのカオスな世界観とマッチしているんですよ。

まず設定が高校時代から始まり・・・というありがちなのが良い。そこから連れて行かれる到達点を考えると、この設定で始まるということが非常に効いてくる。

冒頭のプラネタリウム的なところで始まる感じや、インタビュー映像による補足なども虚構と現実の狭間がモキュメンタリーちっくでワクワクさせられ、気持ちよくライドさせてくれる。

見る見られるという、ある種のメタ構造的な部分も、帰着する到達点を考えると、気付く気付かれるという面白さがあるし、SF味のある部分とも相性が抜群。

脚本も同様で、「ちょっと思い出しただけ」にあったような文脈と構成をいじったような面白味もある気がする。

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前半パートにあるようなハッピーでワクワクする展開と、打って変わっての後半パートという対比もそう。

正直見ていて苦しいんですが、自分の年齢のせいもあるのか、人生ってこういうものだよなという納得感というか、やむ終えなさみたいな感情も湧いてきて、それが終盤へ向けていい感じで転がっていくんですよね。

配役も素晴らしく、主演の藤江琢磨と小川あん、マジで良かったです。

藤江さんはちょっとアンニュイな感じで、ジェンダーを感じさせないような顔立ち。作中でボウイなどのニューウェーブ感ある格好も決まっていましたし、あの似合わない金髪もあの役柄ならでは。

特に良かったのが歩き方ですね。

気だるいような、ダラッとした後ろ姿、気持ちが入らないような無気力味ある佇まいも、ああいう音楽をやっているなら納得感しか無い雰囲気で、あれは中々出せないですよ。自然とは。

小川さんも天真爛漫な学生時代から、その要素も少し残しつつ、成長していく過程。女の人にありがちな、見る見る垢抜けていく様子を見事に表現していましたし、そのバランス感覚が素晴らしかった。

脇を固めていた俳優さんも相性が良く、イブキの同級生二人はメチャクチャ良い関係性だなと思わされるほど、学生時代に理想的なフォーメーションのグループだったり。

驚いたのが冒頭で、小泉今日子鈴木慶一とよた真帆尾野真千子といったかなり気の利いた配役に驚かされた。

とにかく配役全員の普通過ぎないカルチャー感が最高で、そういうものが好きで良かったし、これからもそういったものを好きなままでいたいなと思わせてくれるような雰囲気。

意味深に始まるメッセージとラストに訪れる回答じみた展開に、人生の機微を垣間見た気がしますね。

良いじゃないですか。未来に思いを馳せ、宇宙に思いを馳せ、未来を志向するからこそ色々なものにぶつかり、それでもやっぱり進むしか無い。

どんなに幸せなことも、どんなに辛いことも、全てはずっと継続しないはず。

好きなものが風化しなければ良くて、それは当初とは違う形かもしれないけど、ただ心の奥底にある信念めいた何かがあればそれはそれで救いになる。

とりあずエクスネこと井手健介と母船のアルバムは購入したいと思います。それくらい良かった。いや、音楽系の映画の中で、ベスト級に良かったんじゃないでしょうか。それくらい完成度が高い。

では。