ミクロゆえの高揚感。
イギリスの女流作家メアリー・ノートンの児童文学「床下の小人たち」を、スタジオジブリが映画化。監督は「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」「崖の上のポニョ」で原画、「ゲド戦記」で作画監督補を務めた米林宏昌。企画・脚本に宮崎駿。
身長10センチの小さなアリエッティ一家は、人間が住む家の床下で、さまざまな生活品をこっそり借りて暮らしていた。彼らの掟は「決して人間に見られてはいけない」ということ。しかし、アリエッティはその家に引越してきた少年・翔に自分の姿を見られてしまう。
ジブリ作品ってそんなに観る方では無くて、観ても王道作が中心だったんですよね。一通りは観てると言えば観てるんですが、言ってもその程度の感じ。
まあ宮崎駿あってこそ、というようなところもあるので一層その感が強かったところもあると思うんですが。
壮大でダイナミックな印象があるジブリ作品の中で、本作はテーマからしてミクロ。これを映像的にどう見せるのかと思っていたんですが、その辺は見せ方、描き方含め、思っている以上に良かった。
映像の綺麗さや色調のゴージャス感も然ることながら、なによりもこのワクワクさせてくれる感じが最高。
広大な世界だったりでそれを体験できるのはわかるんですが、ミクロな視点で見せることでこうまで世界を違って見せられるのかと。ミクロゆえのワクワク感なんですかね。
それ自体の発想も別段突飛な事でも無いだろうし、アントマンやトイストーリーといった世界観も同様な考え方でしょうから。
それなのにアニメーションとカラーリング、光やシズル感を際立たせることでこうまで豊かな映像に仕上がっているということに驚きました。ジブリらしさも良く出ている。
伊達に他作で作画監督補をしていただけのことはあるなと思いつつ、あのリアルとも違う、それなのにファンタジックな心躍る世界観だけで満足度高し。
アニメーションって映像の気持ち良さが何よりだと思っている中で、個人的なその辺のポイントはクリア。
あと、ファンタジックな世界観にちょっとしたホラー要素というか、歪な要素が混じっている作品も好きで、その意味でも本作はそれが入っている。
人間というものの描き方であったり、その他の生物の描き方。小人視点で見た時の主観性を存分に生かした作画なんかも抜群で、漫画なんかにありがちな他生物怖すぎ問題を見事に画として動かして見せてる感じ。
単に怖いだけでなくというところが伝わってくるのはジブリゆえの良心だと思っていて、それなのに終始交わらない(深層的な内面において)ところがより好感が持てるきがする。
実際に生きている上でもその感はあるわけで、別の種族が真にわかり得ることなんてないんだろうなという皮肉な現実も内包しつつ、悪意があるわけでは無いというバランスが見事。
94分と観やすい長さなのもちょうど良いですし、テンポ感も中々。
物語の深さはもう少々欲しいと思いつつも、これはこれで潔いかと。テーマ性であるとかカタルシス的なコンセプトは弱いかなとも感じるところではあるものの、それを上回る映像的カタルシスは十分。
個人的には宮崎駿監督作品でなくても十分楽しめるものだなと思いつつ、ジブリデイズが始まるかもしれません。
では。