静を感じるSFの良さがある。
『オブリビオン』
トム・クルーズ主演、「トロン:レガシー」のジョセフ・コジンスキー監督によるSFアクション。
スカヴと呼ばれるエイリアンの攻撃により地球が壊滅し、生き残った人類は遠い惑星へと移住を余儀なくされる。
最後まで地球に残り監視任務に就いていたジャック・ハーパーは、ある日、墜落した謎の宇宙船の中で眠っている美女を発見。彼女を保護したジャックだったが、そこへ現れたビーチと名乗る男に捕らわれてしまう。
ビーチはジャックに驚くべき真実を告げ、そのことからジャックと地球の運命が大きく動き始める。
脚本に「ディパーテッド」のウィリアム・モナハンや、新「スター・ウォーズ」も手がけるマイケル・アーントらが参加。共演にオルガ・キュリレンコ、モーガン・フリーマン。
映像作品におけるSFものって動を楽しむタイプと静を楽しむタイプがあると思っていて、その意味で本作は静が際立っているタイプ。
とはいえ、動の要素が無いわけでは全く無く、むしろ、トップガンにもあったような既視感があったり、トム・クルーズに対しての既視感があるようなカットが多分に登場するのも面白いバランスですよね。
そういえば同じ監督なのかと思いつつ、納得感のあるような緩急の付け具合と演出でした。
なんていうか、パートごとの味付けが良いんですよね。世界観の見せ方であったり、戦闘時の緊迫感であったりといった、バラバラな中にまとまりを持たせてトータルで見せる感じ。
じゃあなぜ静の良さがあるのかというと、およそのパートにおいて、人を感じさせないというか、廃墟と化した地球が舞台というのが良く分かる人間味の無さ。このあたりが凄く良く現れている気がするんですよね。画作りに。
サウンド的にもそうですが、システマチックで無機質、演出等で見せるというより、世界観の構築と空気感で演出する感じ。
仮住まいのような場所なんて最たるもので、家としての温かみや生活感は皆無。パトロールに行く際の風景もそう、自然があるにもかかわらず”ただある”といったような印象。まあ風景としてそれがあるだけという感じですね。(いい意味で)
その冷たい空気感に人間味あるジャックの存在が、より際立つところも良いですし、なんか居心地ならぬ、見心地が良いんですよね。
それと対比させるような感じで出てくる秘密基地的な地上での住居も良いんですよね。
時間が止まり、文化も止まった住居にある小物群。こういうのに惹かれるのがわかるアイテムが並び、流れる音楽も以前にあったであろう人間味を感じさせるテイストが漂う。
このギャップと単純なあの場所の最高な感じが堪らんのですよ。
本作の面白さが、そんな静の部分だけに留まらないのもポイントで、途中のアクション部はそれこそトム・クルーズ十八番の展開。
偵察機を運転させればトップガン、潜入時はミッションインポッシブル。
この辺の撮り方や見せ方も上手いんですよね。監督のセンスによるものだと思いますが、強弱の付け方であったり、カットの割り方が小気味よい。
SF作品に必要だと思っている哲学的な問いなども十分に楽しめるもので、あまり話題にならなかったのがなぜなのかと思ってしまうほど隠れた名作。
しかも公開は2013年なんですね。およそ10年前。そう考えるとこの作品内における発想や撮影って予想以上に古びて無いですね。映像的な綺麗さも含め、割と完成度は高く感じます。
作品内で出てくる美術やメカ、衣装も結構凝っていて、居住でのあのタッチパネルにあるようなガラスパネルでの卓上操作出来る感じは永遠の憧れですし、偵察機の発着陸の構造やフロントガラスに出る情報表示もそう。
そもそもあの居住している場所の構造や作りが抜群にカッコいい。あのドラゴンボールに出てくるカリン塔未来verのような家もディティール含め最高ですしね。
ヴィクトリアが着ているグレーのワンピースなんかも近未来感を感じますよね。素材感やテイスト的にも。SFとミニマルは相性が良いんですよ。シワが一切入らないような感じとかも含めて。
これは全然関係ないですが、オルガ・キュリレンコも良かったですね。というか単純に綺麗過ぎて。007慰めの報酬でボンドガールを務めていたと思うんですが、あの雰囲気が妙にあの場所と合っていたのもあって、ただただ見入ってしまいました。
そんなに期待していなかったのに、完全に期待以上の時間に浸れた作品で、124分とそこそこ長いんですが、世界観を考えると割りとよく纏まっている気がします。
やっぱり評価は人それぞれ、何かのタイミングでまた観たいところです。
では。