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ダークグラス

らしさは個性となり、ツボになる。

『ダークグラス』

ポスター画像


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サスペリア」「フェノミナ」などで知られるイタリアホラー界の巨匠ダリオ・アルジェントが、前作「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」以来10年ぶりに手がけた監督作。事故で視力を失ったヒロインがサイコパスな殺人鬼に脅かされる、“見えない恐怖”を描く。

イタリア、ローマで娼婦ばかりを狙った猟奇的な連続殺人事件が発生する。殺人鬼の4人目のターゲットになってしまったコールガールのディアナは、ある夜、執拗に追いかけられた末に、車が衝突する大事故に遭う。一命はとりとめたものの両目の視力を失ってしまったディアナは、同じ事故に巻き込まれて両親を亡くした中国人少年のチンとの間に特別な絆が生まれ、2人は一緒に暮らすことになる。しかし、そんな彼女たちを殺人鬼が付け狙う。

主人公ディアナを、「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」でイタリアのアカデミー賞と呼ばれるダビド・ディ・ドナテッロ賞の主演女優賞を受賞したイレニア・パストレッリが演じた。アルジェント監督の娘アーシア・アルジェントも、ディアナを支える歩行訓練士役で共演。

アルジェント作品は初めて劇場で観たんですが、やはり劇場だと迫力が違いましたね。

とりわけ”音”に対するこだわりが半端無いなと。

序盤から終盤まで、とにかく効果音、バックサウンド、どれをとってもクオリティを感じますし、ヒリついた雰囲気を助長させるのにメチャメチャ効果的なんですよね。

あの分かりやすいのに、癖になるような感じというのは完全にアルジェントならでは。

ビートの鳴りとシンセサウンドの相性の良さですよ。

劇場で観ると細かいサウンドの描写も際立ちますし、本当にゾクゾクさせられる。これは劇場で観ないと伝わらないと思うからこそ、ぜひ劇場で観ていただきたいところですが。

映像的にもアルジェントらしさに溢れていて、まず冒頭の感じですよ。

なんとも言えない不穏さを感じさせるショットに始まり、この後を予兆させるような日蝕という現象。それに続いて登場する赤が映える映える。

”赤”の使い方というのもアルジェントの十八番なわけですが、不穏な風景に赤ってパキッとして映えるんですよね。

あと単純に画的にも綺麗なんですよ。写実的というか。

エドワード・ホッパーのような雰囲気があって、どこかミステリアスで甘美的な風景に見えてくる。なんでも無い町並みや自然なのに画になってしまう魅力がある。

終盤でリータの家へ行くシーンにある、看板と道路を写しただけのショットが個人的に好きなショットでしたね。何も無いのに様になるという、光の捉え方とバランスが見事。

他にも腐るほどそういったシーンが出てくるので、単に画的な部分だけでも観れてしまうんですよね。

話が本筋から逸れてしまいましたが、こうした余白を楽しむのもアルジェントならではかと。

本編に関しては最早主人公を含むやられる側がどうなるのかを楽しむだけといったいたってシンプルな構成。

これはアルジェント作品においてほとんど同じ構造だと思いますが、やる側とやられる側の緊迫したやり取りをただただ手に汗握りながら楽しむ。これに尽きると思うんですよ。

実際にやりあっている時というよりも、どちらかというとどういったことが起きるのかという部分にフォーカスを当てて観ていく。

その緊迫感というのが醍醐味だと思っていて、85分という映画の公開時間も非常に丁度良い。

私が観たのは夜の回だったんですが、この映画は夜に観ると余韻の部分も含めて楽しさ倍増でした。

終わった後の劇場を出てからも余韻が続き、普段の町並みですら不穏に見えてくる。いつ何が起きるかわからない感じ。

そう思うのは作品自体が持つ唐突性や作家性があるからだとは思うんですが、この唐突さというのも重要なファクターですよね。

何かのインタビューでアルジェント自身も映画について、「悪夢を見ているような体験を」と言っていた気がするんですが、まさにその通り。

悪夢だから覚めれば終わりですし、映画内でも実際にそう言っている。シーンの繋ぎ目を見ても唐突に感じるような作り物らしい転換が見られますが、これもこういったことを意識してのことなのかなと考えると腑に落ちてしまう。

とにかくアルジェントは唯一無二だなと改めて思ったところです。

では。