とにかく料理が美味しそうで、イタリアの空気感もやっぱり好き。
『シェフとギャルソン、リストランテの夜』
イタリア人の移民兄弟が開いたリストランテ(レストラン)を流行らせるために奮闘する様を描いた人情喜劇。
共同監督・共同製作は「死の接吻」などの個性派俳優スタンリー・トゥッチで、脚本も従兄弟で本作がデビューとなるジョゼフ・トロピアーノと共同で執筆。
「ミセス・パーカー/ジャズ・エイジの華」の俳優キャンベル・スコットが共同監督・共同製作としてクレジットされ、出演もしている。製作は「ブロードウェイと銃弾」のジョナサン・フィリー。撮影は「アディクション」ほかアベル・フェラーラ作品で知られるケン・ケルシュ。出演は「アダムス・ファミリー2」などのトニー・シャループ、「スリーパーズ」のミニー・ドライヴァー、「裸のランチ」のイアン・ホルム、「フューネラル」のイザベラ・ロッセリーニほか。
以前から料理が美味しそうな映画ってついつい観ちゃうんですが、この作品もジャケで何となく。いつものように、中古ショップでディグっていた時に、ジャケットを観て何となく購入した感じ。
こういうフィーリングに頼った見方も相変わらず好きなんですよね。特にサブスクなどにあまり出回っていない作品なんかはこういう感じでしか出会えないし観れない。それが意外な出会いだったりもするわけで。
ということで本題ですが、シンプルに良い料理映画です。
映像技術や美術などの造形も、今と比較にならないだろう90年代に撮られた作品。なのに不思議なもので、空気感やノイズから美味しそうな感じがひしひしと伝わってくるんですよ。
これって今の技術で撮ったらさらに良くなるのかな、なんて思ったりもしたんですが、やっぱりあの当時の空気感があってこそな気がするから、映画にとっては技術だけじゃない側面も大きいんだろうなと。
本作の面白いのが、アメリカで作られた映画なのにヨーロッパの空気を感じるところ。
まず冒頭のカットなんてまさにな感じですが、ニュアンス重視というか、ふわっと始まって、何の説明も無くスッと流れていく感じ。そこから主要人物の描写が始めるわけなんですが、その語り口も多くを語らず、自然な仕草だったり、関係性だったりを見せることで各人の立ち位置がわかってくるような雰囲気。
特に料理を通してのそれは良かったですね。中盤に出てくる喧嘩後のシークエンスなんかもそうで、料理に対する姿勢を通じて、それぞれの思いが真摯に伝わってくるところなんかも、ダイナミックな動き無しに、じわっと効いてくる。
こういった余白の部分が多い映画なんですが、それが料理と相性良くて。
その料理自体も個人的に好きなイタリア料理。伝統料理としてのイタリア料理を貫くところも乙ですし、当時の風当たりや、今と異なる文化的障壁みたいなものを考えると、非常にナイーブな部分だったんだろうなと思えてきます。
そんなイタリア料理、それがメチャクチャ魅力的に映っているんですよ。美味しそうに撮っているというよりもただ美味しそうに映っていると言った方が正しいかもしれない。自然に食べたくなるような本能を刺激するような。
そんな浸りたい夜に観たい、寒い季節が似合うような作品でした。
では。