狂気的な描写がリアル過ぎる。
『黒い家』
貴志祐介さんは小説を読み出した時から好きな作家さんで、本を読んでいるだけなのにゾワゾワするというか、ホラー映画を観ている時のような、ある種独特な恐怖への潜在的興味みたいなものを刺激される作家さんだったんですよね。いわゆる怖いもの見たさとでも言いますか、そんな感覚に近かったのかもしれません。なので本を読まなかった自分でもハマったわけです。
伊坂幸太郎さん同様、小説を読み出すきっかけになった作家さんだったこともあって、最近はそんなに読むことも減りましたが、何となく読みたくなりまして。
そんな本作黒い家ですが、映画化もされましたし、小説自体も貴志祐介さんの代表作と言っても良いような怪作。
映画は観たいと思いつつまだ観れていないのですが、評判は中々なようで。
とはいえ、こういう表現の生々しさとかディーティールを想像したいような作品って、小説の方が惹かれるケースが多いんですよね。
タイトルの黒い家からして不吉というか、絶対何かあるでしょと思わされるようなネーミング、まぁ当然何かある訳ですが、その何かが予想以上にエグかった。
それ以上にエグかったのはそれらの描写な訳ですが、文字情報でここまで生々しく状況表現ができるのかという驚き、それと共にその空気感までも脳内に表出させる文章力は流石です。
ストーリー自体は今ではありがちな保険金殺人なんですが、その描き方や説明の仕方も実に自然に入ってくる。
難しそうなワードや表現が出てきがちな設定にも関わらず、小出しかつ、反復して出てくることで、スッと入ってくる。この辺は他の貴志作品でもそうなんですが、専門的な知識が邪魔をしないストーリーテリングがあってこそじゃないでしょうか。
登場人物にしてもそこまで個性的な人物が出てくる訳じゃないのに、よく整理されており理解しやすいことも物語を把握するうえでわかりやすい。
まぁ数人はメチャクチャ個性的というか、マジで狂気的なぶっ飛び人間も登場する訳ですが、そのキャラ以外も意外に印象に残っているところがポイントな気がします。そのバランス感覚も貴志作品の特徴な気がします。
それにしてもあそこまでリアリティを持った表現はどうやったらできるのか、作品内の残虐な行為同様ゾッとさせられるところです。
まぁ貴志作品は全てにそういった部分はあるわけですが。そんな人の根底にあるような興味をそそり、見なければ、知らなければ良かったと思う安易な好奇心を、小説の世界ならではの世界観で表現されているところこそ、魅力的に惹かれる部分なのかもしれません。
いずれにせよ、自分の勘が働くようなヤバい場所、人、事には近付かないのが賢明なようです。
では。