殺し屋という暴力と日常の原点的作品。
『ある用務員』
暗殺者という裏の顔を持つ高校用務員の戦いを描いたクライムアクション。
元暴力団員だった父を持つ深見は、父の兄弟分の娘・真島唯の見張りをするため、唯が通う高校で用務員として働いている。
ある日、暴力団の抗争によって真島が殺害され、唯も命を狙われてしまう。戦場と化した学校から唯を救出するべく、深見は命がけの戦いに身を投じていく。
「のだめカンタービレ」「僕だけがいない街」などさまざまな映画、ドラマ、舞台で活躍する福士誠治が映画初主演を務め、「ソワレ」の芋生悠がヒロインを演じる。監督は「ファミリー☆ウォーズ」の阪元裕吾。
ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2021」上映作品。
予算が無さそうなロケーションながら、やりたいこと全ての雰囲気を感じ取れるような作り。
阪本監督作品を逆に追っている身としては「あっ、知っている」そんな風にキャストを見て感じてしまう所ではありますが、それもキャラ立ちしている作品が多いからこそでしょう。
そんな本作は極めて分かり易いクライムアクションもの。プロットなんてあって無い様なものですが、ある意味日本版ジョンウィックといったところ。
なめてた男が実は殺し屋のエリートだなんて誰が想像したでしょう。今となってはありがちなプロットながら、それをオリジナルなものに感じさせるところは阪元監督の手腕あってこそ。
人物へのフォーカスと、ゲームに近い世界観がやっぱり癖になるんですよね。
アクション部分の爽快感やサウンド、国岡もそうですが、そういった見せ方が非常に上手い。
武器の使い方や、周辺の備品の使い方、どう倒すのか含めて、心地良い流れの中でバッタバッタと倒れていく爽快感。
狭い世界観ながらも、広がりや奥行を感じさせるシーンも適度に入っているなと思っていて、中でも学校内に攻め込むシーン。
最終戦前の本田率いる3人を後ろから捉えたバックショットがあるんですが、これは「いよいよ最終戦か」そう思わせるには十分な画力とワクワク感。あの広がりがあるけど、平面的にすら見える安っぽさ。これがなんかいいんですよね。
そこから増援される殺し屋各人の登場シーンの見せ方なんかもアメコミ的要素があってツボでしたし、序盤での伏線回収なんかも良い感じ。
全体を通してやはりチープ感は拭えないものの、監督自身が描くチープさを凌駕したアイデア勝負の作品作りDNAは随所に感じるところでした。
では。
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